さ、これでフレンド一人目ゲットっと
「痛え…。とりあえず〈カミサマ〉ゲットしたけど、次は何を?」
思いきり蹴り飛ばされた脛をさすりながら訊く九龍を、まだ少しだけ不機嫌な様子のミシェルが睨み付けるなか、手にしている端末からボイスが発せられる。
「これにて精練は完了です。今回は私どもが特別に用意させていただきました〈カミサマ〉が姿を現しましたが、この他にも〈カミサマ〉と合成させることでその力を封じ込める〈魂封石〉や、〈カミサマ〉に装備させることで強化を行う〈魔具〉が、残滓としてあなた様の世界に散らばっております。それらに関しては、お手数ですが〈ヘルプ〉にてご確認ください。お次は戦闘の御説明へと移りたく思いますが、準備はよろしいですね?」
狐面のキャラクターが案内をすると、端末の画面がまたしても切り替わり、電脳空間とでも言うべき光景が液晶内に広がっていた。
「よし。そこまで行ったら適当にポチポチしといて。ぶっちゃけ戦闘チュートリアルなんて何処も一緒だからね~」
自身の携帯端末の画面を周囲にかざしながらミシェルはひどくテキトーなことを言う。九龍のほうも、内心「まあそんなもんか」と思いつつ駆け足気味に説明を聞き流す。
約三分程して、九龍はあらかたの説明が終了したのを見届けると、狐面のキャラクターは画面の先の彼に丁寧なお辞儀をする。
「これで基本的な御説明は終了です。お疲れ様でした。それではまた、ごきげんよう」
そう言い残し、狐面のキャラクターは画面から消滅する。
「これでチュートリアルは終わりか。で、次どうする?」
「あ、ようやく終わった?じゃさっさとボクと契約してフレンドになってくれる?」
「なにその後でひどいしっぺ返し食らいそうな言い方。まあそれよりも、どうすりゃいい?」
「まあ待ちたまえ。今からボクのユーザーIDを送るから」
そう言い、ミシェルは自分の端末をいじり出す。するとすぐに九龍の端末のゲーム画面にメッセージが表示される。
「ほい、送ったよ。後はフレンド登録しますかっていうのが出るからOKしといて」
「えっと、ポチッとな。これでいいのか、な」
「うん。こっちにもメッセージ来た。さ、これでようやく晴れてフレンド一人ゲットっと」
端末を手にした左手とは逆の手で小さくガッツポーズを取るミシェル。それを完全に無視し九龍は踵を返す。
「さて帰るか。帰りにスーパー寄っとこう。晩飯何にしようかな…なんか今日は魚食いたい気分だな」
「──って待てえええええい!?」
既に晩御飯の献立を考え始めた九龍の前に、ミシェルが大急ぎで先回りする。立ちはだかる少女の様を見た彼は、ひどく冷めた口調で言う。
「なんだミシェル。生ハムメロンとピーマンを侮辱する奴に晩飯を作ってはやらんぞ」
「はぁ!?あんなクソマズを貶して何が悪い!? いやそれよりも、もう帰ると言うのかキミは!?」
「? 当たり前だろ。もう四時だぞ。いつになく真剣な顔つきをして一体どうした?」
行く手を阻むミシェルの真意を掴みかね、首をひねる九龍。その様子を見た彼女は大きく溜め息をつき、手にした端末を彼の目の前に突き出す。
「はあっ、いいかい?このゲームはね、お家で寝っ転がってやるもんじゃないの。さっきチュートリアルでボクらの世界に残滓が散らばってるって言ってただろう?つまり、お外に出てを端末をかざして残滓を探すの。だから、この学校にもどこかに残滓が落ちているに違いないのさ!」
「…ええ、つまりあれですか。今から学校中くまなく探して残滓集めしろと?」
意図を悟り、九龍は思いきり肩を落とす。彼は「面倒だからやりたくない」という意思を全身から醸し出す。
「えー、そんな顔しないでよ。ちょっとくらいいいじゃない。さ、残滓探しに行こうか!」
ものぐさな様子の九龍の手を引き、ミシェルは端末片手にその場を跡にするのだった。




