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「石の花」  バジョーフ原作  ダイジェスト版    stone flower    (第1章)  鉱物の女王と村の娘

作者: 舜風人

パーベル・ペトロービッチ・バジョーフは

1879年にウラル地方の都市スィセルチに生まれた。

教師・兵士などを経てやがて故郷の民話に興味を持ち熱心に収集して

40篇ほどの「孔雀石の小箱」という短編民話集として刊行したのである。


濃厚な地方色に彩られたこの短編民話集は好評で、中でも「石の花」は傑作です。


石の花のテーマとは?

芸術世界と俗世間とのかい離・相克

美の本質の恐ろしさ、非人間性。

人間の娘(生のぬくもりのある情愛の世界)と鉱山の女王(無機質な石の至高の美世界)との相克

など深奥な物語が民話調で語られるすごさでしょうか。


鉱山の女王とは、、恐ろしい真美の無機質な体現者であり

石の花とは美の求道者が求めてやまない「真美」そのもののシンボルでしょう。

そしてそのような、美そのものとは、人間的な肉親愛だとかを拒絶するような

はるか遠くの、鉱物的な無機質な非人間的な

透明なる死の次元に至る結晶体的な始原界ということなのでしょう。





のちにプロコフィエフはバレー「石の花」を作曲しています。

さらに1946年にはソ連最初のカラー映画として「石の花」が製作されています。

この映画、私の大好きな作品の一つです。


彼の作品の邦訳は以下の通りです。


「バジョーフ・民話の本」(島原落穂訳、童心社) 4分冊で全23編を収録


『石の花』1979年

『小さな鏡』1983年

『火の踊り子』1983年

『銀のひづめ』1984年





それでは、、、


前置きはこのくらいにして、、、








「石の花」  わたしのダイジェスト版あらすじガイドで、、どうぞ。


目次


第1章  石の花


第2章  山の職人









第1章   石の花




「そうじゃな、

わしらの村といえば、石細工で名をはせた村じゃよ。

中でも孔雀石細工では最高の出来ばえだったのじゃよ。

近くの山で、そりゃあ良質の孔雀石の原石が取れたし、

腕のいい、石細工職人もたくさんいたしな。」


そう、老人は語りだした。


「中でも、プロコーピッチ親方は孔雀石細工の名工で、その出来は素晴らしいの一語だった。

親方の作る孔雀石のブローチや飾り壷・飾り小箱、宝石箱はそりゃあ見事だった、領主様も大喜びさあ。」




ある時領主様がこの地区の代官にこう命じたそうだ。

「親方もだいぶ年取り、後継者が必要だな、だれか若者を見つけて技術を習得させるんだ。よいかな」


代官は早速、適当そうな、少年を見繕っては親方のもとに送り込んだが、

職人気質の親方の気に入るような少年がいるはずもなく、、みんなお払い箱だった。

「どいつも腕は不器用、ダメなやつらだね」親方はそういうのだった。


代官様は次々に少年を見つけては送り込んだがみんなじきにお払い箱になるだけだった。

少年たちの親たちだってほんとは石細工職人にはさせたくなかったのさ。

というのは孔雀石の採掘作業は、危険で、彫り師の仕事は体にもよくなかったからさ。

そんなことが続いていたころ、領主様のお屋敷の下働きでダニールシコという孤児がいた。


年は12歳くらいで、、いつもボーっとしていて、絵とか飾り物をぼんやりと眺めているような子だった。仕事を言いつけても失敗ばかり、、。


牛の番をさせても、牛はほったらかしで、じっとカブトムシを一日中見つめているような子だった。

牛飼いの親分が叱っても

「あのね。この草の葉っぱのギザギザがまるで縁飾りみたいでとってもきれいなんだ」と、

いうばかり、


そんなダニールシコにも一つだけ上手なことがあったのさ、それは角笛を上手に吹くことだった。

その調べはまるで小川のせせらぎのよう。小鳥の唄声のよう。森の葉っぱのささやきのよう

誰だって聞きほれてしまったのさ。


ただ、、、夢中になって、、牛のことはすっかり忘れて、、牛が何頭かいなくなってしまったのさ、

さあ、それでダニールシコは代官様にむち打ちのお仕置きを受けたのさ、


むち打ち役人も、「こんなやせっぽちの少年にむち打ちすりゃあ一度で絶命だろう。」と思われるほど弱弱しかった。


でも、驚いたことにはダニールシコはまったく声も出さず、一発目

も二発目も耐えたのさ、三発目でとうとう気を失ったのさ、


見ていた代官様もびっくりだ。

「なんて我慢強い奴だろう、そうだ。こいつを、どこにやったらいいか、わかったぞ」


ダニールシコは傷だらけの体を、薬草や民間療法に詳しいことで有名なおばあさんの所で面倒見てもらったのさ。

寝てるダニールシコにおばあさんはいろいろ話してくれた。

おばあさんの家には薬草が干していっぱい吊してあった。

「ねえ、おばあさんこの草はなんていうの?」

「このあたりの草花ならみんな知ってるよ。でもまだ見たことない花もあるんだよ。

それは聖ヨハネ祭の夜咲くシダの花さ。これは魔法の花で宝物のありかを知らせてくれるんだ。

それから「石の花」というのもあるそうだよ、孔雀石の山に生えてるんだ。蛇祭りの日に満開になるそうだ。でもこの花を見ると、、不幸になるそうだよ」


ダニールシコがやっと歩けるようなになると代官様はプロコーピッチ親方の所へつれていったのさ、


親方はダニールシコを見ると「よくもまあ、こんな生きてるのがやっとのようなやつをつれてきたなすぐさま引き取ってくれ。もし、死にでもしたら俺の責任になるからな」というと、

代官様は「かまわ無いよ。こいつはみなしごだからな。死んだって誰もこまらない。」と言い捨てて行ってしまった。


二人がそんな話をしている間、ダニールシコは作業場でじっと孔雀石のかけらを手に取って眺めていた。

代官が帰ると、親方は「誰がそれを触っていいといった?」と怒鳴りつけた。


するとダニールシコは「親方。この石はこっちから切り落とさないほうがいいよ。だってこの石の模様がダメになっちまうから」

「じゃあどうすればいいというんだい?」

「この模様を出すようにしてこっちから切るんだよ。」


親方は内心びっくりした。だってその方が確かに良かったのだから。


「コイツはなかなか目が効くわい」

親方はそれからダニールシコの身の上を聞き、さあさあ、もう寝るんだといって藁床をあてがったのでした。

親方は横になったが眠れなかった。

あの孔雀石の切り方が気になって仕方がなかったから。


むっくり起き上がって親方は仕事台に向かった。

孔雀石を手にして、とつおいつ、見比べた、確かにダニールシコの言った通り模様をきれいに残すにはこっちから切った方がよかったのだ、

「こいつは、たまげた、あの少年は目利きだぞ」

それから親方はダニールシコを大事に扱い体がすっかり治るまでは軽い雑用しかさせなかった。


そしてすっかり元気になったダニールシコが池でさかな釣りをしてるのを代官が見つけた。

「おい。小僧、昼間から何、遊んでるんだ」


「親方の所で石細工を習ってます。」


代官はダニールシコを連れて親方の所へ、、。


「おい親方。こいつはどれだけ技を覚えたのかね?見せてくれ」


親方は内心びくびくだった。なんせ、まだ何も教えてはいなかったのだから、、。


ところがどうだ、ダニールシコは代官様の前で

前掛けを掛けて、石の割方、削り方。磨き方、張り合わせ法。艶出し,銅の部品のはめ方。

木の取っ手の付け方、すべて完全にして見せたのさ。


代官様はもう何も言えなかった。


代官が帰ると親方は


「お前、いったい、いつこれを覚えたんだい?わしはまだなにもお前に教えてなかったというのに」


「親方がやってるのを見てればわかりますよ。」


親方は思わず涙をこぼしてダニールシコを抱きしめた。


次の日早速代官様が来てダニールシコに仕事を言いつけた。

まずは、、ブローチづくり、それから、宝石箱、キャンドル立て。

次第に仕事は細かい細工物の、葉っぱや唐草模様、花模様になっていった。


実際、、孔雀石細工は手間暇かかる神経を集中する大変な仕事だよ、


そうして次第にダニールシコは腕をあげてゆき、

注文の、孔雀石の蛇模様の腕輪仕上げた時、代官様も、一人前の職人と認めてくれたのだった。


そうしていつしか時は立ち、ダニールシコは立派な若者に成長していた。


技の素晴らしさを、その旨を領主様に代官はご報告した。


するとダニールシコに足つきの花瓶を一つ作らせて送るようにと返事があった。

ただし親方が手助けできないように見張りしてダニールシコ本人だけで作るようにと。


早速代官はダニールシコを呼び出して一室を与えて花瓶を作らせた、

最初ダニールシコはプロコーピッチ親方から『あまり早く作ると以後の仕事が厳しくなるからゆっくり作るように」と言われていたのだが

そのうち、とうとう我慢できずに全力で作ると決められた日の3分の一でできてしまった。

代官はもう一つ作るように命じ、さらにもう一つ、、、三個もできてしまったのだった。

その3個の花瓶を領主様へ送るとたいそう満足されて

ダニールシコに年貢の額を決めて年貢おさめ農奴として認定して、

親方の元に戻し二人で仕事するようにと命じた。


その命令書と共に、足つき花瓶の下絵が送られてきた。

それは相当精巧な技術を要する花瓶で5年かかっても良いから作るようにとの仰せだった。

細かい模様、唐草模様、花の細かい彫り物、からんだリボン。

複雑な意匠の花瓶、、、、

ダニールシコは早速この仕事に取り掛かった。


それは、非常に込み入った細工で、のみの加減ですぐダメになってしまう精密なものだった。

ダニールシコは仕事に打ち込み、次第に仕上げていったのだが

そのうち、、この仕事は非常に込み入った細工ではあるけれど

美しさというものがないのだ、、と気づいた、

親方や代官様にそのことを言うと、

「お前気でも狂ったのか?この下絵は有名な画家が描いたものだぞ。じゃが、、どうしても

自分好みのものを作りたいなら、、もうひとつ、別に自分用に作ってもかまわ無いぞ」


と、、、お許しが出たのだった。

ダニールシコは、それから、自分好みの飾り花瓶にはどういう模様が似合うんだろうと、

物思いにふける日々が続くのだった。

そんな悩む日々を送るダニールシコを見かねた親方はどっか気晴らしにでも、、といってくれるのだった。

それから毎日森へ出かけては草花を眺めてはかんがえるのだった。

「どうしたら、、孔雀石の良さを完全に生かせるのだろうか?」と、


そんなダニールシコを見た親方は

「わしらは言われたとおりに作ってればそれでいいんだ、余計なことを考えるな」

というのでした。


しかしダニールシコは

「僕は本当に美しいものを作りたいんだ。誰のためでもない。ただ本当に美しいものを作りたいんだ」



親方は日々やつれてゆくこの若者を見て、「そうだ結婚でもすれば落ち着くだろう」

と思い「どうだ。あのカーチャというむすめは?」

と話を進めるのだった。


そうして領主様からの依頼品の花瓶は順調にしあがりつつあったが

ダニールシコはちっともうれしそうではなかった。


というのは自分が本当に作りたい本当に美しい花瓶はまだ全然できていなかったからだった。


カーチャもそして職人仲間も領主様からの依頼品の花瓶の出来栄えをほめちぎったが、。


一人ダニールシコだけは、、、


「この作品のどこに本当の美しさがありますか?この花模様はまるで死んでるじゃないですか?

確かに精巧に彫ってあります、でも、それだけです。石を生かしてない、石を殺してるだけですよ。

この石を生かしたい、本当の美を作りたいんです」


ダニールシコは興奮してまくしたてるのでした。


すると、、石細工職人仲間の長老といわれるおじいさんが、つと、まえに出て来てこういった。


「かわいい息子よ。お前が言ってる道は危険な道なんじゃよ。その道を行くと今に

山の職人たちの所に、、、山の女王のもとに、やられるのだぞ。

いいかな、山には、山の女王がいて、女王様の依頼品はこの職人たちが作って差し上げるのさ。

わしはたった一度だけ見たことがある、その作品はわしらが作るようなそんな、ちゃちな物じゃない。

全く別次元の美しい作品なんじゃよ。わしらの彫る作品はただ石の彫り物にすぎないが

あの職人たちの作る作品はまるで生きてるんじゃよ。今にも動き出しそうな。

というのも彼らは「石の花」を見たから、本当の美がわかったからなんじゃよ、

だが、かわいい息子よ、石の花は見てはいけない、もし見たらこの世のすべてが、まるで、つまらなくなってしまうからなのじゃよ。」



「僕は、、でも、、みてみたいなあ」ダニールシコは言う。


カーチャは

「まさか?あなたは、、この世のすべてが嫌になってしまうのよ」といって、わっと泣き出すのだった。


それからというものダニールシコは「石の花」のことが頭から離れなかった。


そして、、採掘場や坑道に出かけてゆき、石探しをするのだった。

ある日、、石を探して歩いていると、だれもいないのに「蛇山を探してみなさい」という声が聞こえたように思った。

あたりを見まわすと、霧の向こうに気高い女性の姿が見えたような気がした

翌日、蛇山に出かけてゆくと、、山の、裏側の誰も行ったことがないようなところで、鉱層がむき出しになってるところがあって、そこに素晴らしい孔雀石の一枚岩が露頭してるのだった。

一抱えもあるほどの大きな孔雀石が転がっていた。

それを持ち帰り熱心に足つき花瓶を彫り始めた。

仕事はずんずん進み素晴らしい出来だった。

石の模様は思い通りにでき、細い、、薄い彫りも、素晴らしかった。

そこに、チョウセンアサガオの模様を彫ってみた。


親方さえまるで「生きてるようだ」といった。


しかし、、しばらくするとダニールシコの手が、ぴたりと、止まってしまった。


何か違う。

生きてる感じがしない。

違う。何か違う。

本当の美しさがまるで、、ない。


苦しみ悩み、眠れなくなった。


職人仲間は「ダニールシコはわけのわからないことを口走り、気でも狂ったのか?」と噂した。

カーチャも心配で泣き出した。


「わかったよ。カーチャ、そうだ早く結婚しよう。これ以上、石の本当の美をつかむなんて言う夢のようなことは忘れるよ。」


結婚式の蛇祭りの日が近づいていた。

でも、、、

そのまえにダニールシコはどうしても、もう一度、蛇山に行って、確かめたかった。

翌日、ひとりで、蛇山へ向かった、。山にはちらちらと雪が舞っていた。

山の影で休んでいると、どうしても、「石の花」が見てみたという気持ちが抑えられなくなるのだった。


と、

突然目の前に銅山の女王が立っていた。

孔雀石の衣装で全身をまとい一目で女王だとわかった。


「ダニールシコ。あなたの花瓶はまだできないの?」

「できないんだ。どうしても」

「いい石をあげるわ」

「いいや僕はどうしても石の花が見たいんだ」

「見せるのはかんたんよ、でも、きっとあなたは見たことを後悔するでしょうよ

あなたには愛するカーチャがいるわ、」

「でも、どうしても見たいんだ。」

「わかったわ、それでは、、私の庭園に行きましょう」


ゴーッと山が開き目の前には地下に続く道が広がっていた。

そこには石でできた花や草が生い茂りまるで生きてるよう。

石でできた黄金色の蛇が草むらを踊っていた。

やがて広い草地につくとそこには、

くじゃく石でできた大きな花が咲いていた。

枝には鈴が付いていて、葉も花も星のように光り、、

黄金のミツバチが戯れていた。

それは、素晴らしいものだった。

それが、、そう、、、伝説の「石の花」だったのです。


「いかが?」

「こんな花はいったいどんな石で作るんだろう?」

「あなたが自分で何かを見つけたらそのときには作れる石をあげましょう

でも、、今はここまで、、、お帰りなさい。、、」


そういうと、ゴーッと音がして気が付くとダニールシコはもとの岩山の前で立っていた。


ダニールシコは家に帰った、そしてカーチャの家に行くと、家では今しも結婚の祝宴が準備されて

いたが黙りこくり、うなだれるダニールシコには、なにを言っても通らないのだった。

ダニールシコはカーチャと別れて、、黙って自分の家に帰り

仕事場にあった領主様の依頼品の足つき花瓶を見つめた。

それはもう完成していて明日にでも渡せる状態だった。

ダニールシコは先ほどの山の女王のことを考えて、ねられなかった。

やがて、、

起き上がって、、突然、金槌をつかむと自分用に作りかけていたチョウセンアサガオの足つき花瓶を

気が狂ったように、粉々に打ち壊した。


そして領主様の足つき花瓶などは見向きもせずに

まるで何かに取り付かれたように

一目散に

家を飛び出してどこかへと、行ってしまったのでした。


それから


何日たっても


何か月たっても、、、、



ダニールシコは二度と戻ってこなかった。


それから、、だれもダニールシコの姿を見た人はいなかった。


人々はきっと森の奥深く入り込み、


ダニールシコは死んでしまったのだと噂しあうのだった。




第1章   終わり






第2章  「山の職人」   に続く。












































































































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