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俺はアパートの玄関の扉の前で木刀を片手にあぐらを組み目を閉じていた。
真夜中の外はかなり冷えるが、しかし今はそんなことを言っている場合ではなかった。
「おい、貴様ここで何をしている?」
こんな真夜中に黒いスーツに身を包んだガタイの大きな二人の男が姿を現し俺に話をかけてきた。
「何って、ここ俺んちだから見張りだよ」
「ほう、自分の家を見張るためにわざわざ玄関の前に出るのか?」
「まあ、俺はここの主人の番犬なんでね」
自分で言っておきながら嫌になってくるぜ。
俺ってば、本当に犬として目覚めちゃうんじゃないの?
すると二人がヒソヒソと話を始めた。
おそらく、魔法か何かでメアリさんの跡を追っていたんだろう。
俺の予想は的中ということである。
メアリさんが横になった時、肩からチラッと魔方陣のようなものが見えたときは、もしやと思ったが。
「中に入れてもらおうか」
「断る」
「君の今着ている服を見てみると、パルティア学園の奴だとお見受けするが……魔法が使えない 学力クラス(落ちこぼれ集団)じゃないか」
「うるせえな、魔法が使えないから落ちこぼれとは随分単純な考え方をしてるんだな」
「ほざけ、悪いが我々は能力者だ。死にたくなければそこをどけろ」
「断るつってんだろ」
男はフッと笑うと、手からひのこを出してこちらに投げてきた。
マジかよ?!
俺は反射的に木刀でひのこを打ち返した。
野球してて良かったぜ……。
「バカな……無能力者が俺の魔法を……って、なんだそれは?!」
男は唖然とした顔で、俺の持っている木刀を見ていた。