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 会場には、国で顔のきく貴族様や起業で成功してかなり有名な平民達が集められている。

 王族の長女が結婚するとなれば、こうなるのだろう。

 しかしこの結婚式はあくまでも仮契約みたいなもので、本当の契約を交わす結婚式は成人してかららしい。

 そして、この式の事は口外してはならないらしい。

 俺はセフィリアさんの隣に座って、挨拶に来られるお偉いさん達に挨拶をする。

 きっと、俺の住んでた日本でもこんなことしてたんだろうなーと思うと、案外日本も身分と言うものがあるのかもしれない。

 たまーに、可愛い女の子が挨拶をしに来てくれて、俺が鼻の下を伸ばしていると、机に隠れて弁慶を高いヒールの靴でセフィリアさんが蹴ってきた。

 思わず、痛っ!て声をあげちゃうから、目の前にいた女の子はビックリしたが、笑ってくれて、逆に好印象になった。

 結果オーライ。


 そして、逆にイケメンが来ると、セフィリアさんが嬉しそうに話をする。

 いや、会って数時間だし、嫉妬なんかしてないんだからねっ!

 俺は、見ないようにと視線をそらした。


 その先で、メイドのメイさんが居た。

 姿勢正しく、出入り口で見張り役をしていた。

 隣ではまだ、美少女とイケメンが会話をしていたので、少し居たたまれないと言うか、いずらいというか……ってか、基本リア充嫌いなんだよな、俺。

 だから、メイドのメイさんの元へ向かった。


「どうしたんですか?コミュ障様」

「おい」

「コミュ障過ぎて、挨拶に来られる方々に挨拶が出来なくなって泣きついて来たんですか?」

「いや、確かにコミュニケーションは得意としてないけど、障害認定されるほどじゃないよ。

 まあ、挨拶来られるのは結構疲れるな……」

「でしょうね、私もあそこに座って挨拶するよりかは、ここでボーッとしてる方が楽です」

「えっ?!ボーッとしてたの?仕事しようよ~」


 すると、メイドのメイさんがジュルっと音をたてて呟いた。

 

「あの肉……美味しそう……ハッ?!」


 どうやら、腹が減っていたらしく声が漏れちゃったらしい。


「食べてきたら?見張りなら俺がやっておくよ」

「いや、旦那様は席に戻られた方が──」

「いいんだよ、俺だってここでボーッとしたいんだよ」

「しかし……」

「んだよ、俺を弄るときの威勢はどうした?……なら、俺は王族なんだろ?王族からの命令だと思って、俺と見張り変わって飯を食ってこい。腹が減っては戦は出来ぬって言葉を知らないのか?」

「それは、面白い言葉ですね……はい、ではお言葉に甘えて」


 そうして、メイさんは並んであるお肉やお肉を食べに行った。

 お肉しか食ってないじゃん……。


 俺もそう言えば、何にも食ってないな。

 こんな状況では、物が喉を通らない。

 出入り口でボーッとしていると、とある女の子が声をかけてきた。


「あの……芦沢様ですよね?」


 目の前には黒髪ロングがお似合いのお嬢様、年は俺と同じくらいだろう。

 ってか、可愛いなぁ。

 お貴族様とかってやっぱり皆可愛いのかな?


「はい、いかにも私が芦沢であります」


 被っても無い、帽子を取る振りをして紳士の如く振る舞った。

 どうやら、それはウケが良かったらしい。


「面白い方なんですね」

「いえ、とんでもない」

「私、ブルンボン家のメアリと言います。よろしくおねがいします」

「あ、はい。こちらこそよろしくです」

「芦沢様はどちらのご出身で?」

「名も無き遠い辺境の地からやってまいりました」

「なら、以前までは平民でいらっしゃったのですか?」

「そうですね、村人Cくらいをやってましたよ」

「なら、突然の出来事で驚かれたでしょうに」

「本当ですよ、急に魔方陣に囲まれて……とうとう神からお迎えが来たのかと思っちゃいました」


 そんな感じで、可愛い女の子と会話をしていると、あらやだ向こうからもっと可愛い女の子がちょー睨んでるんだけど。

 ……セフィリアさんじゃん。

 いや、そっちはイケメンと話してるじゃん。


「(戻ってこないと、コロスゾ)」


 ゾクッとしたので、俺は彼女に用事が出来たと、挨拶をして席に戻った。


「随分と楽しそうに話してたじゃない、顔のわりには女性と話せるのね」

「……え、何?セフィリアさんまで俺のことコミュ障扱い?!」

「あら、違うの?優しい顔をして女の子を引き寄せ夜になったら、暴れるのでしょ?汚らわしい」

「いや、偏見酷すぎでしょ?!そんな訳無いでしょ、俺ってば紳士過ぎて、まだ貞操守ってるし」

「それはただ単に貴方がチキンなだけでしょ」

「うっさいわ……」


 この世界の女の子って基本口が悪いの?

 やっていける自信が無いんだけど……。


 この世界では結婚式と言うものはパーティーをするだけで、神父さんが「チカイマスカ?」的な感じのものは無いらしい。

 召喚の儀式そのものが、俺らで言う誓いの儀式みたいなものだという。

 メイドのメイさんから聞きました。


 パーティーも無事終了して、俺は服を着替えた部屋に戻った。

 そこには、先にメイドのメイさんがスタンバイしており、俺の服を準備していた。

 

「お疲れさまです、旦那様」

「いや、ほんとね。疲れるよ」

「でも、本番はこれからでは?」

「え?何のお話?」

「あらやだ、女性に何て事を言わすのですか、子作りですよ、子作り。初夜に決まってるでしょ」

「いや、言っちゃってるじゃん、俺今、言わせてないよね?セクハラとかで訴えるのやめてよ」

「冗談です。セフィリアさんもまだ学生ですからね、旦那様も明日から学校の方へ行かれるのですよ?」

「え?聞いてないんだけど……」

「そりゃあ、これからこのパルティア家に入るわけですから、しっかり学問を修めなければなりませんよ。それともここで毎日ダラーッと過ごせるとでも思っていたのですか?これだから、最近の若者は……」

「え~何で俺そこまで言われなきゃ駄目なの?……ってか、メイさんも最近の若者だよね?

 見た感じ、俺と同じくらいに見えるんだけど」

「そんなに老けて見えます?」

「それ、間接的に俺が老けてるって言ってるようなものだからね」

「旦那様は5歳なのなに、見た感じ18くらいではないですか」

「いや、見た目通りだから、5歳じゃないから」

「えっ?!頭的に五歳かと……」

「素で驚かれた!?」


 そんなやり取りをしながら、俺は服を着替えた。

 メイさんもたまにボタンを外したりするのを手伝ってくれたりした。

 この人何気にいい人なんだよな。


「では、旦那様。今からパルティア様のご両親に明日の転入の手続きに行きますよ」



 ※ ※ ※




  何と言うか、流石っすわとしか言いようがない。

 僕が明日から通う学校の理事長をしているのはパルティア家のトップ、セフィリアさんのお母様らしい。

 え?お母様なの?お父様じゃなくて?

 

「うちの旦那も、平民出身でお金の管理なんて出来たものじゃないから。出来たら男としてしっかりりしてほしいものだわ」

「め、面目ない」


 お、お父様、完全に尻に敷かれてやがる。

 俺はこんなんにはならないぞ!

 宮殿のとある部屋に招かれた俺は、セフィリアさんのお父様とお母様とセフィリアとの四人で話をしていた。

 メイさんはお茶を出して、ドアの前で立っている。


「優さんにはこんな風にはならないようしっかり明日から頑張って欲しいわ」

「は、はい!頑張ります」


 こ、怖いよ。綺麗すぎて怖いよ。

 なに、威圧感半端ない。

 逆にお父様、凄く優しそうだよ。

 セフィリアさん顔は完全に母親似ですね。

 

「心配なく、お母様。私がこの方を立派な王様に仕付けますわ」


 や、やだ!!仕付けられる。

 俺は、自由気ままに行きたいのに。

 毎日、アニメ見てパンツ見てエッチなテレビを見て……。

 そんなことを考えてると、セフィリアさんがギッと睨んできた。

 こ、コワッ!!

 ってか、何なの?

 セフィリアさん、俺が変なこと考えてると、心読んでるかの用な振る舞いをしてくるんだけど。

 バレてる?バレてる?心読まれてる?……な訳無いよね?


「それは安心だわ。優さんもセフィリアの事をお願いね」

「は、はい。命に変えてもお守りいたします!」

「あら、頼もしい。ほら、貴方からも何かおっしゃい」


 と、お父様はお母様にペシペシと頭を叩かれる。


「う、うちの娘をよろしく頼むよ。まあ、うちの嫁は顔は運良く母親に似たけど、性格は残念ながら、母親に似ちゃったけど……あれ?僕の遺伝子入ってるのかな?ハハッ」

「何が残念ですって?」

「うがっ!!」


 お父様、首を完全に決められている。

 ちょ、落ちちゃう落ちちゃう、大きな胸で更に呼吸出来なくなってるから!


「まあ、優さんもこんなんにはならないようにね、明日から学校頑張ってね。

 あ、住むところだけど、学生の間はセフィリアとの二人暮らしね。

 城下町に既に家を手配しているから、明日の放課後から行ってちょうだい。念のためメイもつかせておくわ」

「は、はい」


 そう返事をして、隣を見るとセフィリアさんはどうやらその事を知らなかったらしく、口を開けて驚いている。

 そして目の前では夫婦喧嘩……じゃなくて、お母様による一方的なリンチ。


「あの~セフィリアさん?」

「ふぇ?!何かしら」

「驚いてます?」

「ま、まさか!こんなの予想の範囲内よ!貴方ごときと二人暮らしするくらいで、ドキドキ何てしないわ。そう、貴方なんて犬くらいとしか思ってないし」

「い、犬?!……いや、どう考えても、セフィリアさんの方が狂犬──」

「はぁ?」

「ふぁっ?!いえ……何でもないでしゅ」


 こ、こえー。

 チビりそうになったよ。

 そして、メイドのメイさん、笑い我慢してるよ。

 セフィリアさんってまさか男の免疫無いのかな?

 そして、リンチを続けながらお母様が思い出したように、


「あ、ちなみに優さんがセフィリアの旦那ってことはバレないようにね。

 儀式した事が世間にバレちゃうからね」

「えっ?でも、さっきあんなに盛大なパーティーを……」

「あれは、本当に信用してる家しか呼んでないから大丈夫よ。それにあそこにいた3分の1はパルティア家の関係者だし」


 スゲェナ。

 規模のデカさに感心する一方、お父様が可哀想だと思う気持ちの方が強くて、だけど口出しは出来ないので、俺はこうだけにはならまいと決心した。


「それにしても優さん……君って……」


 セフィリアさんの母親が俺の顔をまじまじと見つめる。

 何この気持ち。

 ちょードキドキするんだけど。


「ど、どうしました?」


 すると、セフィリアさんの母親はフフッと笑っては、何でもないわと言っては、俺の頭を撫でてきた。


 俺はきっと赤面していただろう。


「君は、これから起こることにとりあえず全力で立ち向かいなさい。そうすれば何とかなるから」


 セフィリアさんの母親の言葉の意味はよくわからなかったが、その言葉には何か意を突いているようなそんな気がした。


 ※ ※ ※



 話し合いは終わり、大きなお風呂に連れていかれ、そのあとに大きな寝室に連れてこられた。


「旦那様、あとはお寝んねするだけですよ」


 お寝んねとか何年ぶりに聞いたんだろ。

 それと、バカにされてる感半端ない。


「ってかさ、服どうにかならない?この服高そうだし、ゴワゴワして寝にくいって言うか」


 いや、ほんと。こんなもの着ててちゃ寝るどころか、横にすらなれないよ。


「あら、ワガママですか?」

「いや、ワガママって言うか……」

「ワガママでしょ」

「はい」

「土下座したら考えなくも無いですよ」

「はあ?」


 何で、服ごときで土下座をせにゃならんのだとは思ったが、俺も学ぶ人間、彼女と出会って彼女がどんな人間なのか何となくわかっている。

 ここは、逆に素直に即座に土下座を選択した。


ペコリ。


「この通りです。服をもっと安っぽいものと交換しては貰えないでしょうか?」


 どうだ?こんなに直ぐに土下座するとは思うまい。

 さぞ動揺しているに違いない──

 と、思い伏せていた顔をあげてメイさんの顔を見ると、顔を真っ赤にして笑いを我慢している様に見える。

 性格悪っ!!


「何か、この光景を見ていると私、心の底に眠ってたなにかが目覚めそうになりそうです」

「駄目ーーー!それは確実に目覚めたら駄目なものだよ。ムチとか持っちゃうやつだよ」

「まあ、見苦しい土下座を見せられた訳ですし、服を準備しましょう」


 そして、メイドのメイさんは部屋から出ていった。

 そして入れ違いにセフィリアさんが部屋に入ってきた。


「な、何してるの?」


 まだ土下座をしたままだった。


「ちょっと、野暮用でな」


 そして立ち上がろうとすると、セフィリアさんは待ってと声をあげた。

 俺は指示通り、待ってしまった。

 何か犬みたい。

 

「そのまま頭を床につけてくれないかしら?」

「へ?何で?」

「いや、いいから」

「いや、やだよ。それって要するに土下座しろってことじゃん」

「いいから」

「えー、でも──」

「はやく!」


 怖っ。


 そして結局、本日二度目の土下座。

 そして、顔をあげると何と言うか、メイさんと同じ顔をして、同じ台詞を吐いていた。


「何だろ……心の底に眠っている何かが目覚めそうだわ」


 駄目だよ。

 何かじゃやくて、Sだから。


「もう、いいすか?」

「え?あ、もういいわよ」


 すると、メイさんが新しい服を持ってきて帰ってきた。

 手に持っていたのは、これまた高そうな服。


「これが最も安い服です」

「あ、もういいよ。パンイチで寝ますわ」

「パンイチとは?」


 メイさんとセフィリアさんは顔を見合せ、疑問を持った顔をする。

 仕方ない、的確に手短に説明をしてやろう。


「パンツ一丁で寝ることだよ」


 すると、二人はまるでこの世の終わりかのような驚いた顔を見せた。

 そこまで驚かなくても……普通じゃない?


「あり得ないわ……。そんなのただの変態じゃない!……って、貴方、変態だったわね。忘れてたわ」

「何言っちゃってるんですが、セフィリアさん。俺は変態とはかけ離れた存在、紳士ですよ。前住んでいたところでは、名前をよく紳士と間違われたものです」

「そんな間違いあるわけないでしょ。全く、これだから童貞は平気で嘘をつくんだから」

「童貞……ププッ」


 おい、メイさん何笑っちゃってんの?


「そもそも、童貞は関係ないだろ」

「あら、本当に童貞だったの?ダサいわね。まあ結婚したわけだし、死ぬまでにはいつか卒業出来るわ。だけど私以外で、童貞卒業したら殺すわよ」


 童貞卒業したら殺すとか、怖すぎ。

 これから、どんな状況にあっても理性が耐え抜く自信があるよ、今の発言で。



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