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華の降る夜  作者:
3/4

第2話~慣れと新しい出会い~

今日も疲れたな、と独り言を吐く。

ぐぐぐ……。

大きく背伸びをして、マンションのエレベータに乗り込んだ。

結構新しめにできたこのマンションは、若い人が多くまだ仕事のようで

あまり人を見なかった。

6階のボタンを押して奥の壁に凭れ掛かった。

動くエレベータの数字を眺めて早く着かないかと、目を細める。


__チン……


開くドアの隙間を縫うように、急いで降りる。

今日も、今もあの子が待っている。

私の家で大人しく留守番をしている。

そう思うと一刻でも、一秒でも早くかえって抱きしめたかった。

ガチャ、扉の鍵が開き私は靴をも揃えず急いでリビングに上がった。

あの時、出会った時と同じだ。

「……連、いる?」

はあ、はあと息切れしながら呼ぶと、布団の中から耳だけが出てきた。

「遅いよぉ……僕お腹すいちゃったもん。」

拗ねて布団に丸まっている連の頭を撫でる。

ごめんごめんと謝って、腕に下げていた袋から取り出した。

「今日何の日か分かってるの、華。」

「覚えてるよ。だからはい、これ。」

差し出したのはいつものお稲荷さんではなく、ちょっと豪華に巻物。

バッと布団から顔を出して、必死に買ってきたものにかぶりついた。

口にご飯粒を付けながら、次へ次へと平らげていく。

「あっ……。華は食べないの?」

「ん?私はね、まだいいや。もう少し連の食べてるところを見たい。」

ふーんと、掌についた米粒を一粒一粒舐めとっていく。

おいしい?と聞けば、即答でうんと答えるほど。

本当に連はお寿司が大好きなんだね。

ふふ、としゃがみながらそんな連の様子を見ていた。

「ハッピーバースデー、そしてここにきてくれてありがとう。」

そう、今日は連が来てからちょうど1年。

そして連の誕生日(と決めた日)だ。

連は、妖怪。子供といえど生まれたのは相当前になる、と話してくれた。

だから私の家に来たこの日を誕生日にしようと二人で決めたのだ。

どうやら、誕生日の存在自体を知らなかったようで首を傾げた連だったが

説明すると心底うれしそうに、おおおと唸っていた。

「ありがとう、華。僕ね、この家に来られて本当に良かったと思ってるんだ。」

ふにゃっと笑うその顔になぜか胸が締め付けられて。

ああ、これが親心とかいううやつなのかなと心の中で勝手に思ってしまう。


ピンポーン


不意にドアベルが鳴った。私は急いで玄関に出て、扉を開けた。

「あ……。どうも、隣に越してきた鳥海と申します……。」

ドアの前には、なにやら重そうな箱を抱えて私に丁寧にお辞儀をする

同い年くらいの男の人が立っていた。


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