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華の降る夜  作者:
2/4

第1話~出会いのきっかけ~

 大学で授業を終えた私は、バイトをするため近くのコンビニへと向かう。

制服に着替えた私はさらに4時間近く、接客の仕事をする。

 店長にもう上がっていい、と言われベテランである私の先輩らに挨拶をして

先に帰らせてもらった。

立ち仕事なので足が既にふらふらになりながらカバンから鍵を取出し、

鍵穴に差した瞬間。


カタン__。


 部屋の中で物音がしたような気がした。

私の部屋はマンションの6階。窓から侵入することはほぼ不可能といえるだろう。

__もしかして、空き巣……?

 私の鼓動はバクバクと暴れだす。鍵を回すことができずにそこに突っ立っているだけだった。

まだ中にいたらどうしよう。私このまま殺されるかもしれない。

いやでも、隙間風か何かでものが倒れた音かもしれない。

 未だ鳴り止まない心音を押さえつけるように、手を当てすぅっと息を吸う。

そのまま勢いよく鍵を回し、扉を開けた。

靴もそろえずに玄関から一気にリビングへと歩を進める。

「誰かいるんですか!?」

声を張り上げるが、反応はない。

やっぱりものが倒れただけだったのか、それとも潜んでいるのか。

 足音をさせないようにゆっくりゆっくりとあたりを見回す。

すると小さなテーブルの下に蹲って震えているような、毛玉が。

ほこりなどかと思って近くに寄ってみると、尾が二つ。耳がぴょこんと。

「……ぇ。」

 声にならないような声を上げる。その声に反応したようにピクッと動く躰。

恐る恐る顔を上げる、その子の目には涙が浮かんでいた。

「ご、……ごめんなさい。僕行くところがないんです。」

「はぁ……。」

 そんなこと言われても、と眉を下げるとまた俯いてしまった。

そんな時、静かな部屋に鳴り響いた小さな音。


__ぐぅ…


 私ではないのでどうやらこの子らしかった。

「もしかして、お腹すいてる……?」

「そんなことないです……。」

 遠慮しているのか、それとも私のことが怖いのか。

顔を上げずに話す。しかしまた、ぐぅと。

私は何だか可笑しく思えてしまって、微笑むとコンビニで買ってきた

今日の夕飯だったはずのものを取り出した。

「今はこんなものしかないけれど、食べる……?」

 差し出すと、目だけだが出してくれた。

食べていいの?とでも言うように私の目を見つめる。

 恐る恐るお稲荷さんを口に運ぶと、もぐもぐと咀嚼して飲み込んだ。

「……おいしいっ。」

 キラキラ輝くその瞳は、残っているお稲荷さんに夢中で。

 だんだんと、その光景が日課になっていって。

最初はただの不法侵入した変な妖怪。

そんなイメージだったけど、それが日に日に変わっていって。

未では、大事な家族になりつつある。

家に帰るのが楽しみになる。

 それもこれも、全て連のおかげで。

「おいしい?」

「うんっ!」

こんな 非 日常もいいかな。


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