初め
初めて切ない? 恋愛を投稿しますが、どうかよろしくお願いします。
最初から分かっていた。
私には、時間がないことを。
――あなたの寿命は、あと一年も持たないかもしれません。
そう言われたのは、雪がさらさらと溶けてゆく、ある冬の終わり頃。スノードロップが咲き誇る頃。私は急に倒れたらしく、救急車で運ばれてからしばらくしたある日、医者にそう告げられた。倒れた原因も不明らしく、当時小学五年生だった私には、とてつもなく重たい真実――のはずだった。
けれどあの頃の自分は、そんな事実をすんなりと受け容れられる人間だった。
「はい、給食の時間ですよー。給食当番、早く準備して下さいー」
騒がしい教室の中、先生の呼びかけが聞こえる。そんな中でクラスメイトそれぞれが友達と話したり、給食の準備をしたりとそれぞれの時間を過ごしている。……そう、私もだ。
山内里美。小学六年生。セミロングの髪を後ろで少しだけ結び、あとは垂れ流したような髪形に、少し大きめの目。いつも教室で本を片手に過ごしている。まあ、世間で言う「暗い性格」に入るのだろう。
でも私は、それでいいと思っている。
医者に告げられてから、もう十ヶ月ほど経っている。私は当たり前のように学校生活を過ごしてきた。今日も、いつもと変わらない時間を過ごすのだろう。
給食を食べ終わり、私は図書室へと足を運ぶ。私の中で、唯一の好きな場所。
図書室にはそこそこ人がいた。何となく興味が湧いて手に取った本を片手に椅子に座る。ふと窓を見てみると、三階からは子どもたちがわいわいと遊んでいる風景が見えた。
……そんな様子をチラリと見つつ、本のページに触れた。
読んでくださりありがとうございます。次回、10日21時、22時に投稿予定です。