幕間 其の三
体育館の中はひんやりとした冷たい空気に包まれていた。窓という窓には暗幕のカーテンがかけられ、外からの中の様子がうかがえないようにされていた。
体育館の中央には教員とおぼしき数人の大人と百名ほどの生徒達が、目隠しと猿ぐつわをされ、両手足を縛られた状態で座らされていた。
縛られていた生徒のうちの一人が必死にもがき、くぐもった悲鳴をあげる。
「うるせえぞ!」
テロリストの怒鳴り声があがった。
「静かにしねえか!」
体育館の中には十数人のテロリスト達がいた。いや、正しく言うのならばメチャワル星人の魂に取り憑かれてしまったあわれな人間達だった。彼らはみな黒いつなぎを着ており、頭には黒い布をぐるぐるに巻き付け、その人相を隠していた。巻き付けた布の隙間から見える二つの目玉は血走っており、手にしている機関銃を今にも発砲しそうな雰囲気だった。
「テロリスト達に告げる」
体育館の外から拡声器越しの声が届いた。
「今すぐ人質を解放しなさい」
体育館の二階廊下にあたるギャラリーにいたテロリストの一人が、カーテンの隙間から外に向かって機関銃をぶっ放した。続けざまに別のテロリストが手榴弾を投げつける。爆ぜる音が響くと、人質にされている生徒達がざわつき始めた。
「何度も言わすな!」
人質の側にいたテロリストが天井に向かって機関銃を撃った。
「静かにしねえと蜂の巣にするぞ!」
「落ち着けよお前ら」
体育館の舞台に立つテロリストのリーダーらしき人物が言った。体格のいいその男は他のテロリストと違って膝まである黒いトレンチコートを着ており、それについているフードを目深にかぶっている。その顔にはオペラグラスを思わせるような大きな眼鏡を掛けていた。
「すみませんボス。ベファルトのヤツらがなかなか出てこなくてついイラついて」
「それもしかたがないな」
ボスと呼ばれたトレンチコートの男は言った。
「こうまでしているのにヤツらはだんまりを決め込んでいる。だが気をつけろよ、ヤツらはずる賢いベファルトの連中だ。なにかしら策を練っているに違いねえ。気を引き締めろよ」
テロリスト達が声をそろえて、はいと返事をする。
一方その頃、体育館の外では周囲を取り囲む警官隊のもとに在留アメリカ軍の部隊が到着した。対テロリスト用に武装した彼らは、警官隊と入れ替わるようにして周囲に散っていき、警官隊は学校の外へと後退してしまう。
いまやこの高校の敷地内は治外法権だ。何が起こってもおかしくない危機的状況にある。




