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another 02

 プレイヤーがポイントを稼ぐ為にセイリー族の集落やクルルの森を駆け巡る。

 その舞台裏、プレイヤーからは未だに視認される事のない光の当たらぬ陰でうごめくものがある。

「さぁ、存分に動け」

 十昌石を象った模型を目の前にほくそ笑み、自らの願いが叶う方向へと進んでいる事に悦びを感じている。

 あの頃から永い年月が経った。漸く、悲願が成就される時が来た。

「もう直ぐだよ」

 模型から目を逸らし、傍らに置かれている十色の輝きを内包する珠を手に取り、語りかける。

「君の願いが、私の願いが叶う」

 珠をいとおしそうにながめるその頬に、一筋の水が流れ落ちる。

「どうして君はいなくなってしまったのだろうか?」

 目の端から流れる透明な雫を拭う事もせずに淡々と言葉を紡ぐ。

「どうして君がいなくなってしまわなければいけなかっただろうか?」

 淡々と。

「どうして君が犠牲にならなければならなかったのだろうか?」

 淡々と。

「どうして私が犠牲にならなかったのだろうか?」

 淡々と。

「どうして私だけが残ってしまったのだろうか?」

 淡々と。

「どうして私はこんな想いをしなくてはいけないのだろうか?」

 淡々と、紡ぐ。

「でも、それももう今となってはどうでもいい」

 珠を元の位置に戻し、仰ぐ。

「もう直ぐ、なんだから」

 模型と珠に一度視線を向ける。

「君と私の望む形で、願いが叶う」

 それを最後に、その者の姿は闇に溶けるような掻き消える。

 後に残された珠の輝きは、何処か寂しそうで、何処か悔やんでいるように明滅する。

 その輝きには、誰も気が付かない。


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