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 イベント開始直前になると、俺達は拠点からシンセの町の広場へと強制的に転送された。

 広場はプレイヤーで埋め尽くされていた。ここにいるのが今回のイベントの参加者達なのだろう。


「オウカ君ではな」

『午後三時になりました。これより運営主催大規模イベントを開始いたします』


 何かリースの声が聞こえてきたが、それは運営からのアナウンスによって塗り潰された。

 そしてアナウンスと共に輝いた光によって視界が白一色に染め上げられる。

 光が晴れれば、俺達はクルル平原の森近くの場所にいた。

 そこにはでかでかと『白組練習場所』という幟がながっており、競技用のトラックや大玉転がしの球、玉入れ一式、パン食い競走用のパンを吊るす為の器具等々、運動会の定番と呼べる競技に必要な物が一通り揃っている。

 

「で、服装は今回これに統一されるのか」


 俺は自分の服をまじまじと確認する。

 所謂ジャージと呼ばれる伸縮性に優れた、よく体育の授業で着替えるそれへと強制的に衣装チェンジをさせられている。

 色は組を意識してか真っ白で、腕と足に黒いラインが二本縫い付けられている。胸元には『白組』と筆で書き殴ったようなフォントで黒く印字されている。

 あと、靴も現実世界にありそうな運動靴となっている。こちらも御丁寧に靴紐まで白に統一されている。


 そして、パートナーや召喚獣にも装備が施されている。

 まず、人型の召喚獣はプレイヤーと同じようなジャージが着せられている。因みに人型は人形系や獣人系も含まれているらしく、ゴーレムやエント、ミノタウルスなんかはぴっちりジャージ姿になっている。

 で、人型ではないパートナーや召喚獣はそれぞれにフィットしたジャージのような服が着せられている。腕や足が無くても、ジャージを着ているような感じの装備だ。四足歩行の奴等は所謂ペット用の服をそのまま着せてますって感じになってしまっているが。


 俺の恰好は長袖長ズボンとなっているが、中には半袖だったり半ズボンだったりするプレイヤーもいる。恐らく、メニュー開いて装備を変更すれば他のプレイヤーのような姿になる事も出来ると思う。

 それを確認すべくメニューを開くと、やはり今回のイベント限定の装備として【長袖ジャージ一式(白)】【半袖ジャージ一式(白)】【運動靴(白)】がアイテム欄に追加されている。


『【長袖ジャージ一式(白)】:このイベントでのみ強制装備。装備すると【半袖ジャージ一式(白)】と【運動靴(白)】以外は装備出来ず、自動でインナー(白)も装備されます。【半袖ジャージ一式(白)】と上下分けて装備が可能です。イベント終了後は消滅します。』


『【半袖ジャージ一式(白)】:このイベントでのみ強制装備。装備すると【長袖ジャージ一式(白)】と【運動靴(白)】以外は装備出来ず、自動でインナー(白)も装備されます。【長袖ジャージ一式(白)】と上下分けて装備が可能です。イベント終了後は消滅します。』


『【運動靴(白)】:このイベントでのみ強制装備。装備すると【長袖ジャージ一式(白)】と【半袖ジャージ一式(白)】以外は装備出来ず、イベント終了後は消滅します。』


 ジャージは一式となっているが、上下で自由に組み合わせる事が出来る仕様になっている。あと、説明文によると中に着るインナーはジャージを着ると自動で装備されるようだ。

 そして、装備だけど初期服と同じようにステータス強化や副次効果を全く持っていない。装備による強化に頼らず、自分達の力のみでやっていけという事なんだろう。事実、他の武器や防具の装備が出来なくなっている。


 そして、装備の恩恵を受けられないステータスだが、前回同様レベル1にまで落とされて軒並み低くなっている。

 前回と違うのは、前回よりも敏捷や器用、体力の数値を上げていたので、それらがやや突出し他がかなり低くなってしまっている。

 まぁ、今回は戦闘を行わないので生命力が低くても問題はないだろう。あと、この精神力では魔法は一発も撃てない。攻め手が減ったが、まぁ討伐がメインのイベントでもないので大丈夫だろう。


 幸いなのはスキルは使用不可にならず、またそれらのレベルも一時的に初級にまで下がっていない事か。ただ、前回と異なり武器は使用不可なので、攻撃系統のスキルは【中級蹴術】しか使えない。魔法スキルに至っては、完全に腐ってしまっている。

 逆に武器に頼らない常時発動系のスキルを持っているプレイヤーは多少有利な位置にいるあろう。生憎と俺は【入手】と【AMチェンジ】しかないからな。今回これらは役に立たないな。


「さて」


 俺はそれとなく辺りを見回す。俺の近くにはパーティーメンバーが全員揃っている。今思えば不特定多数の参加者がいて、それらと一緒になって行うイベントなのでサクラは大丈夫だろうか?

 それとなくサクラを見れば、一応は大丈夫そう……にしているがあれは無理に頑張って抑え込んでいる感じだな。ここ最近は本当に人に慣れようと努力はしているが、あのままじゃ心労で倒れるんじゃないか?

 俺とアケビは無理はしないようにとは言ってはいるんだが……。まぁ、心のケアはサクラや俺達のパートナーに召喚獣達が買って出てくれているから幾分かは負担が減っている事だろう。


 それにしてもやはり人は多いな。人もそうだけど、パートナーモンスターも集合し、召喚獣もあちらこちらにいるから結構狭く感じる。前回のイベントと違って縮小化を受けていないので、召喚獣も通常サイズだからと言うのもあるだろう。エントなんて頭何個分も突出しているので分かりやすい。


「……」


 辺りを見渡していた俺は、ある一角にいる人物を見て、自然と眉間に皺が寄って行くのを自覚する。

 幸い、まだ向こうは気が付いていないが、同じ組なのでその内接触する事に……。


「やぁ! オウカ君!」


 と、思っていたら頭上から影が差し、トルドラゴに乗ったリースが俺に声を掛けて来た。

 リースの大声によって、あの野郎……変態コート女が俺達の存在に気が付いてしまった。


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