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 さて、イベントまで残す所三日となった。

 今日、俺とサクラ、アケビは拠点に集まって円になるように地面に座っている。ルーネ達は少し離れた場所で組体操をしている。どうやら、今度のイベントに向けて練習中らしい。組体操があるかどうかはまだ分からないが、まぁ運動会だから十中八九あるのだろう。


 一番上にソラ達カーバンクルが、次にルーネとリーフィ、ノージ、ドルーにカゲミ、ゴゴゴとグラゥとグリンという順番でピラミッドを作っている。因みに、ビーアとフレニアはピラミッドの周りを飛んでより美しい形となるように指示を出している。

 楽しそうに特訓をしている皆を余所に、俺達プレイヤーはある意味で重要な事柄を決めようと相談をしている。


 それは、パーティーネームだ。

 一緒のパーティーを組んで一月以上経過した。しかし、未だにパーティーネームを決めていなかったのだ。そろそろパーティーネームを決めてもいい頃合だろう。

 と言う訳で、話し合って決める事にした次第だ。


「それぞれの名前の頭文字を合わせたのはどう?」


 アケビが手を上げて進言する。


「えっと、アケビさんのアとオウカさんのオ、それに僕のサを使うという事ですか?」

「そう」

「成程……でも、これらの文字だと語呂が悪くなりませんか?」


 サクラがやや渋い顔をする。

 確かに、アとオとサではなかなかしっくり来るものにはならないな。オアサ、オサア、サオア、サアオ。何か変な感じがする。かと言ってアサオだと何処かの誰かの名前っぽくもなる。


「一番語呂がいいのはアオサですけど、まんま海藻の名前ですよ」

「……確かに。何か磯臭そう」


 俺達のプレイヤーネーム繋がりで植物系の名前はありそうだけど、流石に海藻はないな。そもそも俺達のパーティーに海要素は皆無だ。どちらかと言えば森とか洞窟とか空とかそこら辺が該当する。


「じゃあ、それぞれの名前の真ん中部分を」

「それもしっくり来るのありませんよね?」

「……そうだね」


 ケにウにクか。うん、ないな。


「そもそも、名前の一文字を取るなら僕達だけじゃなくファフィー達の名前もきちんと含ませなきゃいけませんよ」

「あ、そうだった」


 流石に全員分の名前の一文字を取るのはいささか苦労するだろうから、アケビの案は却下された。

 では、一体どのようなネーミングがいいのだろうか?

 ここで、他のパーティーネームを参考にしてみよう。

 まず、召喚戦隊サモレンジャー。こちらは文字通り特撮の戦隊ものじみた外見に、召喚獣と共に戦っていくスタイルから名付けられたのだろう。


 次に、機甲鎧魔法騎士団(アーマードマジカルナイツ)。こちらも文字通りメンバーが全員武器に変化する全身鎧に身を包んでおり、魔法による攻撃を行う。

 あと、実際に会った事はないがもふもふ愛好会というのもあったな。一回目のイベントの時ランキングに乗っていた。多分、もふっとした生き物が大好きすぎる集団なのだろう。

 さて、一通り他のパーティーネームを思い浮かべてみたが、何処も自分達のプレイングスタイルや趣味なんかをそのまま反映させているな。

 なら、この法則に則って名付けるとしよう。

 俺は挙手をして、今し方思い浮かんだものを口にする。


「STO動物園というのは?」

「却下」

「却下です」


 俺の案は二人にばっさりと切り捨てられてしまう。そこまで悪くはないと思うんだが? 実際、パートナーも召喚獣も色んな種類がいる訳だし。

 あ、だが人型の召喚獣がいるな。流石に人型がいるなら動物園はなしだな。盲点だった。

 となると、他に相応しいのは……。


「なかよしSTO保育園というのは」

「却下」

「それもなしです」


 これも駄目だった。結構いい線言っていたと思うんだが? 実際、幼児のような外観の奴もいるし、外観関係なく愛らしいし、それに仲良く遊んだり料理したりするんだがな。

 うぅむ、これも駄目とするなら後は………………駄目だ思い浮かばん。

 存外難しいな。ルーネ達の名前を考えた時よりも頭を捻る必要があるな。

 ああでもないこうでもないと話し合っていると、サクラが目を少し大きく開いてあっと手を叩く。


「今思い出したんですけど、オウカさんにアケビさん、あと僕の名前に共通点があるですよ」

「共通点?」

「はい。僕の名前はサクラ。で、オウカさんは恐らく桜の花という意味ですよね? そして、アケビさん」

「皆、植物の名前だね」

「はい。でも、それ以外にも春に花を咲かせると言うのも共通しているんです」

木通(あけび)の花も春なのか?」

「はい。確か四月から五月に掛けて花を咲かせるそうです」


 それは知らなかったな。


「なので、……それにちなんで春花(しゅんか)というのはどうでしょう、か?」


 遠慮がちにサクラがそう呟く。

 春花、か。悪くないな。


「私はいいと思う。オウカくんは?」

「俺もそれでいいと思うぞ」


 パーティーネームは春花に決定……だと思われたが、アケビが突如手を上げる。


「あ、それに付け加える形で岫燈(しゅうとう)ってのはどうだろう?」

「岫燈?」

「うん。(くき)は洞穴って意味で燈は言わずもがな。ほら、この拠点って洞窟だし、あと丁度天井から射す光から連想して燈。それらを春花に合わせて春花岫燈(しゅんかしゅうとう)


 成程。そう言う意味か。その二つの漢字でこの拠点を表すのか。いや、それだけじゃないな。春花、それに岫燈でパートナーや召喚獣達もある程度連想出来る。植物や昆虫は春や花で、山岳地帯に住んでいそうなものは岫。炎や光の属性を持つものは燈。

 うん、いいのではなかろうか。それに春花岫燈は春夏秋冬に掛けているようで語呂も良い。


「僕はそっちの方がいいと思います。オウカさんはどうでしょう?」

「語呂もいいし、俺もそれでいい」


 サクラも異論はなく気に入ったみたいだ。なので、パーティーネームはこの瞬間を持って決定した。

 そして、ちょっと疑問に思った事があったのでアケビに質問を投げかける。


「と言うか、燈はともかく岫なんて言葉よく知ってるな」

「古典や現国の時間に電子辞書で遊んでる時に見付けた」


 アケビが胸を張って答える。いや、それは胸を張って答えるものではないからな? ちゃんと授業は受けろよ。

 まぁ、それはもう置いておくとしよう。

 と言う訳で、俺達のパーティーネームは春花岫燈に決定した。早速メニューを開いてパーティーネームを入力する。



『パーティーネームを【春花岫燈】にしました。』



 よし、これでOK。三日後のイベントでもこの春花がきちんとパーティーネームとして反映されるだろう。


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