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 アップデートがあった日から数日経った。

 俺達は【スキル融合】をしてスキルの最適化を行ってからクルルの横穴へと向かった。

 俺と一緒だった為にノリュリュ村へと入る事が出来、そこでモリュグ族の村長兼親方から漸くサクラとアケビが通行証を貰い受け、拠点から直接ノリュリュ村へと来れるようになった。

 その後、雪原エリアで地形ダメージを受けないように耐氷の性能を持つ防具を作る為にカコル鉱石を掘りに採掘場へと向かった。


 採掘場は複数個所あるが、掘れる鉱石の種類に変わりはなく、また場所によってある鉱石が出やすくなっていると言う訳でもない。

 単にプレイヤー同士での採掘争いを無くす為に複数個所設けられたのだろうな。

 で、採掘場で色々と鉱石を掘り当てていると、どうしてだか分からないがいきなり地響きがして、見えない壁に囲まれてボスとの戦闘となってしまった。


 一定時間採掘場に籠っているとボスと遭遇すると攻略ウィキに記載されていた事をすっかり忘れていた。

 けれど、前回姉貴と一緒に来た時はボスと会う事はなかったんだが、その時はボスとの遭遇条件を満たしていなかったから出てこなかったのだ。

 出現条件は、レベルが30以上である事。パーティーを組んでいる場合はパーティーメンバー全員が30を超えている必要があり、またパーティーを組んでいなくても採掘場にいるプレイヤーのレベルが30以上でなければ出現しないらしい。

 あの時はまだ俺のレベルは30に届いていなかったので、ボスが出現しなかったのだ。また、このレベルに関してはパートナーモンスターのレベルは関係ないそうだ。


 今日はボスと戦う予定ではなかったのだが、仕方がないと俺達は気持ちを切り替えてボスへと挑んで行った。

 そして、かれこれ二十分くらい戦闘をしていて、いい具合にダメージを与えられている。


『キシャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼』


 岩の鎧をまとった蚯蚓という表現がしっくりと来るクルルの横穴のボス――グランドワイアームは雄叫びを放ちながら口から溶解液を噴出してくる。

 俺達は左右に散らばり、溶解液を回避する。


「くらえっ」


 俺は【戦場の料理人】で得られた新たなスキルアーツ【スマッシュパン】を繰り出す。

 フライパンを両手で持ち、グランドワイアームの脳天目掛けてフライパンを振り下ろす。その一連の動作が【スマッシュパン】だ。

 これは以前まで使えていた【ショックハンマー】と同じような技で、一定確率で相手を行動不能にする事が出来る。

 ただし、こちらの方は【ショックハンマー】よりも消費体力が多く、そして行動不能になる時間も短い。その代わり、クリティカル率が上がっており一撃の威力がデカくなりやすくなっている。


『キシャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼』

「ちっ」


 俺はグランドワイアームの頭からフライパンを即座に放して離脱する。今回は行動不能には出来なかったが、どうやらクリティカルヒットにはなったようだ。ぶんぶんと大きく頭を振って痛みに耐えるような動きをしている。

 グランドワイアームはフォレストワイアーム並みの巨体なので、首を振っただけでも重い一撃となる。

 しかし、フォレストワイアームと違って鈍重な動きであり、比較的攻撃は避けやすい。

 実際、俺達はグランドワイアームの攻撃をほとんど貰っていない。


 喰らった攻撃と言えば土魔法の【ロックバレット】に【ロックジャベリン】、そして【アースウェーブ】だけだ。

 グランドワイアームが使ってきた【ロックバレット】は以前偽怪盗が使っていたのと同じで、岩の礫が矢のように降り注ぐ攻撃だ。【ロックジャベリン】は地面から岩の槍が出現して貫いてくる。

 そして、【アースウェーブ】は地面が波打ち、その波に触れると上に弾き飛ばされてしまう。【アースウェーブ】自体に攻撃判定はないが、打ち上げられてしまうのでその分行動が出来なくなり、更に地面に激突した際にダメージを負ってしまう。

 まぁ、有効範囲が狭いから急いでグランドワイアームから距離を取れば喰らう事はないので、フォレストワイアームの【アトラクトタイフーン】や【ワイアームブレス】よりも理不尽攻撃じゃない。


「水よ、我が言葉により形を成し、彼の敵を押し流せっ!【ウェーブスプラッシュ】!」


 頭を振っているグランドワイアーム目掛けて、サクラが【ウェーブスプラッシュ】をお見舞いする。

 グランドワイアームは軽く壁際まで押し流され、ずぶ濡れになる。


「光よ、我が言葉により形を成し、彼の敵を目指せ。【フラッシュレイ】」

「みーっ!」


 そこへ追い打ちとばかりにアケビが【フラッシュレイ】を放ち、ルーネが【スピアツリー】を発動していく。

 光線と鋭い木の根が巨体を貫き、グランドワイアームはビクンと大きく振るえる。

 そろそろ、奴の生命力は尽きる頃だろうか?


「……るぅ」


 死に体のグランドワイアームにサクラの新しいパートナー――モールンのドルーが攻撃を加えていく。

 攻撃方法はまさかの爪を射出しての遠距離攻撃だ。爪は飛ばしても十数秒待てば生えて来るので、弾切れの心配はない。

 それに、ドルーの爪は遠距離攻撃だけでなく近距離攻撃も行う事が出来る。近距離で攻撃する際はガリッとひっかく。

 魔法に頼らない遠近両用な攻撃手段を持ち合わせているが、その分敏捷が無い。移動は常にのそのそとしており、サクラが抱えて歩いた方がよっぽど速い。


 土の中なら機敏になるのではないかと考えもしたのだが、どうやらドルーは土の中に潜れないらしい。お前って、土竜を模したパートナーモンスターだよな? と言うツッコミは心の中だけで済ませた。もしかしたら、成長すれば土の中を移動出来るようになるかもしれないしな。

 あまりにも鈍足なので、戦闘の際はサクラがドルーをおぶっている。そこまで重くないそうで、苦ではないそうだ。サクラはそもそも俺やアケビのような機動力を生かした戦い方をせず、後方で魔法による攻撃や支援を行っているから今の所特に問題はない。


 で、ドルーの飛ばした爪の何本かは岩の鎧に弾かれるが、その多くは奴の口内に入り込み、内側を傷付ける事に成功する。

 ついでに、俺もステーキナイフをグランドワイアームの口内にぶち込む。【戦場の料理人】のスキルの御蔭でステーキナイフを投擲する際に【投擲術】と同じダメージ補正が発生するようになり、ちくちくと遠距離からの嫌がらせが可能となった。


『キシャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼』


 グランドワイアームは痛みでのた打ち回り、地響きが発生する。まぁ、この地響きにはスタン効果もダメージ判定も無いので特に気にはならない。

 さて、そろそろ【捌きの一太刀】を放ってみよう。


「くらえっ」


 俺はグランドワイアームへと一気に近付き、【捌きの一太刀】を発動する。

 一文字に切り付け、体力が底を尽いて俺はその場に突っ伏す。


『キシャ……ァ、ァ……』


 グランドワイアームは弱々しい鳴き声を上げると、その身体を光に変えていった。



『グランドワイアームを倒した。

 経験値を1100手に入れた。

 土岩蛇竜の尾×1を手に入れた。

 土岩蛇竜の鱗×1を手に入れた。

 土岩蛇竜の牙×1を手に入れた。

 レベルが上がった。       』



 よし、倒した。

 そして、フォレストワイアームの時と同じように光は留まっており、それが分散して俺達の旨の中へと飛び込んでくる。



『グランドワイアームを倒したその健闘を称え、召喚具1つもしくは特殊なアイテム一つを贈呈いたします。』



「ん?」


 ボスを倒したので今回も特典が得られるようだが、パートナーの卵はないらしい。代わりに、特殊なアイテムが貰えるみたいだ。

 一体、どんなのだ?


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