表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/193

141

 十三時まで少しだけ時間があるが拠点に行けば既にサクラとアケビがいた。俺達は直ぐに拠点から出てシンセの街へと繰り出す。ツバキとは博物館前での待ち合わせになっている。

 休みの為、少し人の多いシンセの街を進み、博物館へと辿り着く。既にツバキがおり、チェインクエストに挑む四人が揃った。直ぐには始めず、軽く事前の打ち合わせをする。

 ……さて、【怪盗からの再挑戦状】を始めるとするか。

 博物館の扉に触れ、ウィンドウを出して『はい』を選択。別の扉から怪盗が出て来て少し会話。

「さぁ、そう言う訳で準備はいいかい?」

 怪盗は宝珠を抱え、ドリットが何故か翼をはばたかせて一匹だけで空を上って行く。

「スタートだ」


『00:10:00』


 その合図と共に怪盗は駆け出し、制限時間が表示される。

「舞い降りろ! ウィング!」

「来て、グリフォン」

 それとほぼ同時にツバキとアケビがグリフォンを召喚してドリットへと向かわせる。召喚時間の事もあり、時間差で召喚した方がよさそうな気もするが、音波で行動不能にされる可能性もあるので、多対一で攻めた方がいいそうだ。

「頼むぞ、スビティー」

「行って、フレニア」

「びーっ!」

「れにーっ!」

 俺とサクラは常時空を飛んでいるスビティーとフレニアをグリフォン二匹の援護へと向かわせる。四匹はドリットを攪乱し、音波を怪盗へと届けないようにする。

 以前の俺の見立て通り、怪盗はドリットの放つ音波に込められた情報を得て、プレイヤーの位置を把握しているそうだ。なので、ドリットを妨害すれば接触する寸前に逃げられる、なんて事態には陥り難くなる。

 魔法や遠距離武器で妨害しようとしても、魔法は躱され、武器は音波で問答無用で落とされてしまうらしい。実際、前回は俺の放ったフライパンは音波によって当てる事は出来なかったし。

 なので、妨害には空を自由に動けるパートナーか召喚獣が適任となる。それでも、旋回力が無ければ音波の直撃を受けて一時的に行動不能になってしまうらしいが。

 因みに、この音波は攻撃判定はないらしく、直撃を受けてもダメージは0。扱いとしてはフォレストワイバーンの【ワイバーンブレス】と同じ。こちらの音波は当たった相手を100%の確率で十五秒間行動不能にする【ショックハンマー】顔負けの性能を誇っている。

 どちらにしろ、当たらないに越した事がない技なのでなるべく空中での回避率の高いものが相手取った方がいい。

 故に、アケビはキマイラではなくグリフォンを召喚している。攻撃面ではキマイラに一歩劣るが、空中での機動力では上回っている。

 実際に、今二匹のグリフォンがドリットを翻弄して音波を怪盗に届けないようにしている。その傍らでスビティーとフレニアも頑張っている。

 では、俺達の方も頑張って怪盗を捕まえるとしよう。

 前回のクエストのように、簡単に終わる方法は存在しないそうだ。なので、このクエストに関しては普通に追っ掛ける他ない。ただし、絡め手は有効らしい。

 怪盗は相変わらず速いが、あの時よりもレベルを上げて敏捷の値も大きくなったので追えなくはない。

 このまま怪盗の後ろだけを追い掛けるのは愚策なので、事前の話し合いで俺達は四方向に分かれる事にしている。

 一番速いアケビはそのまま怪盗を追い駆け、俺とサクラは右へ、ツバキは左へと向かう。マップを見ながら怪盗の位置を把握し、ボイスチャットでタイミングを計ってアケビが俺達の方へと誘導する手筈だ。

 マップは自分の位置は分かるが仲間の位置が分からないのが欠点だよな。クルルの森のイベントの時のような仕様にして欲しいんだが、駄目か? もしくは、マップに表示出来るアイテムでも出して欲しいものだ。

 あと、パーティー用のボイスチャットを使う為に、一時的にツバキにもパーティー加入して貰っている。なので、リークは俺達の拠点でお留守番が出来るようになった。パルミーも置いてきたので、ドッペルゲンガーとメリアスと一緒に仲よく遊んでる……と、いいな。

 因みに、怪盗に攻撃をして足止めをしようとすると倍返しに遭うらしい。攻撃魔法も補助魔法もスキルアーツも、そしてアイテムも関係なく使ってきたプレイヤーへと。そのカウンターで生命力が0になる事はないけど、怪盗は速度を緩めずにやってのけるので足止めにすらならないそうだ。

 俺とサクラは大通りを一緒に駆けているが、路地裏へと繋がる道に差し掛かって俺はそちらの方へと、サクラは大通りをそのまま直進する。

「っと」

 俺は路地裏の壁を三角蹴りして昇り、屋根へと上る。そしてそのまま屋根の上を駆け出す。

 俺の視界の端ではドリッドが音波を放って四匹を行動不能に使用としているが、四匹は何とか避けて未だに翻弄している。

 マップを開いて怪盗の進む道を確認し、まずは怪盗を上から追い駆ける。音波による位置情報を向こうは知らないからバレる心配もない。

『今、怪盗の真ん前の通路脇に来た』

 と、ツバキからボイスチャットが届く。

『分かった。このまま直進して追い立てるから。出来るなら捕まえて』

『了解』

 運がよければ、アケビとツバキの挟み撃ちで決着がつくが、果たしてどうなるか?

「おっと」

 マップを見ながら屋根の上を走っていると、俺の方にも音波が飛んできた。どうやらドリットは空中で動き回る四匹は置いておき、屋根を走るだけの俺を標的にしたみたいだ。音波を連打して来るので、左右に移動したり、緩急をつけてやり過ごすが正直キツイ。屋根はまっ平らな所だけではなく、当然斜めになっている所もあって下手すると落下する。

 更に、屋根から屋根へと移動する時はどうしても跳んで移動しなければならないので、そこを狙われると防ぎようがない。と言うか、実際やられて危うく当たる所だった。

 一度地面に降りて音波攻撃から身を隠す。

『『逃げられた』』

 それと同時に、アケビとツバキからのボイスチャットが届く。どうやら駄目だったようで、マップを見れば怪盗は未だに移動しているのが見て取れる。

『私はこのまま追う』

『俺は少しアケビと一緒に行動して、回り込める小道に差し掛かったらそっちに行く』


『00:06:43』


 時間は七分を切り、心に少し焦りが生じてくる。別に何回でもトライは可能だが、出来る事なら早期に終わらせたいものだ。

 俺は再び路地裏へと入り込み、三角跳びをして屋根へと飛び乗る。

「サクラは今何処にいる?」

『えっと……中央広場へと続く東の大通りの脇の小道にいます』

 サクラの現在位置を訊き、怪盗の位置を確認する。

 怪盗は現在西の大通りを中央広場へと向けて進行しており、このまま行けば東の大通りへと入る可能性がある。

『悪い、ウィングの召喚時間終わった』

『同じく。来て、キマイラ』

 ここでグリフォン二匹の召喚時間が終了。アケビは即座にキマイラを召喚してドリットの方へと向かわせる。キマイラが来るまでドリットをスビティーとフレニアの二匹が頑張って妨害する。

「れにー……」

 が、フレニアは音波を受けてしまい地面へとゆっくり落ちて行く。

「び、びー……」

 スビティーも頑張って避けていたが、連続音波を回避し切れずに直撃して行動不能になってしまう。

 キマイラが到達するよりも早く、ドリッドは怪盗の近くへと移動して俺達の位置情報を伝える音波を出す。

 よって、サクラの位置も。当然俺の位置も向こうに丸分かりとなり怪盗は東ではなく北の大通りへと向かってしまう。

 キマイラは一匹でドリット相手に攻撃を仕掛け、これ以上音波で位置情報を伝えるのを妨害する。そして、ドリットが放つ妨害音波を【シャドウショット】で相殺する。

 これでリアルタイムで俺達の位置が分かるような事にはならなくなった。

 …………と言うか、あの音波って魔法で相殺出来るのか。


『00:4:35』


 未だに怪盗は捕まらず、残り五分を切ってしまった。

『北東の小道の三叉路に入りました。その内一つで待ち構えます』

 サクラも東から移動して北へと向かったようだ。マップで三叉路を確認する。北東にある三叉路は一つだけで、確か幅は人が三人横に並んでギリギリ通れるくらい狭かった筈。そこに追い込めば三人で挟み撃ちに出来る。

『サクラちゃん、どの三叉路の先にいる?』

『南寄りの所です』

『分かった。私はこのまま怪盗を北寄りの方からそこに追い込む』

『じゃあ、俺は東寄りの所に先行ってるぜ』

 現在怪盗を追っている二人は一旦別れ、アケビは怪盗を誘導。ツバキは先回りで立ちはだかる算段だ。

 俺もその三叉路へと向けて屋根を伝う。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ