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 パルミーを地面に降ろし、首筋を擦りながら立ち上がる。半透明になってたスビティーも実体となって俺の方に降りてくる。

「……ふぅ」

 遂に、フォレストワイアームを倒せた。これで雪原に進む事が出来る。

 ……のだが、未だに不可視の壁が消える気配はない。あれ? 倒したから消える筈なんだが……バグったか?

 と言うか、フォレストワイアームは光に消えたけど、その光は未だに地面に留まってて空に昇る気配がない。どうしたんだ? 本当にバグか? この間のアップデートによる新たな不具合って奴?

「うおっ?」

 とか思ってたら、光が分散して俺達の方へと向かってくる。咄嗟に叩き落とそうとフライパンを振るうが、フライパンを透過してそのまま俺にぶち当たる。

 ぶち当たるも、生命力は全く減らなかった。


『フォレストワイアームを倒した事により、新たなエリアへと進出可能になりました。

 また、その健闘を称えパートナーモンスターの卵1つ、もしくは召喚具1つを贈呈いたします。               』


 その代わりに、こんな事が書かれたウィンドウが表示される。

 そう言えば、ボスを倒せば新しいパートナーの卵か、召喚具が手に入るんだったな。サクラ達にもウィンドウが展開されてる。俺と同じようなメッセージが書かれてるだろうな。


『・パートナーモンスターの卵

 ・召喚具【鷲獅子の羽飾り】

 ・召喚具【風精霊の指輪】

 ・召喚具【樹人の若葉】

 ・召喚具【トネリコのお守り】』


 次にこんなウィンドウが。この五つの中から選ぶようだ。タッチする事によって、はいかいいえの選択になるのと同時に、詳細が書かれている。


『パートナーモンスターの卵:パートナーモンスターの卵。何が生まれるかは生まれてからのお楽しみ。

 これにしますか?

 はい

 いいえ                        』


『召喚具【鷲獅子の羽飾り】:召喚獣――グリフォンを喚ぶ事の出来る召喚具。背中の翼をはばたかせて飛翔し、鋭利な牙や爪で攻撃するのを得意とする。

 これにしますか?

 はい

 いいえ                        』


『召喚具【風精霊の指輪】:召喚獣――シルフを喚ぶ事の出来る召喚具。風を操る魔法で攻撃・補助ともにこなす。

 これにしますか?

 はい

 いいえ                        』


『召喚具【樹人の若葉】:召喚獣――エントを喚ぶ事の出来る召喚具。動きはやや遅いが一撃の威力は大きく、魔法もある程度使いこなす。

 これにしますか?

 はい

 いいえ                        』


『召喚具【トネリコのお守り】:召喚獣――メリアスを喚ぶ事の出来る召喚具。攻撃には参加しないが、状態異常の回復を得意とする。

 これにしますか?

 はい

 いいえ                        』


 パートナーはやはり生まれてくるのは分からないようになっている、か。その代わり、召喚獣は説明文である程度どのような性質になっているか把握出来るようになっている。

 グリフォンは空を飛んでの物理攻撃を得意とする。シルフは風属性の魔法でアタッカーとサポーターの両方を担える。エントは物理、魔法の両方を扱える万能型。メリアスは完全なサポートタイプで、状態異常を回復出来る。

 さて、どれにするか? と一人で決めるよりもパーティー内で話し合って決めた方がいい気がする。言っては何だが、例えば全員が同じ召喚具を入手するよりも、別々のを手に入れた方が戦略の幅が広がる……気がするし。

 と言う訳で、俺はサクラとアケビを呼んでどうするか話し合う事にする。ゴダイ達はゴダイ達で何か話し合ってるし。

 手招きをすると、サクラもアケビも、そしてフレニアも俺の方に駆け寄ってくる。フレニアは飛んでるから駆け寄って来るって表現は違うけど。

「オウカさん」

「何時魔法スキル習得したの?」

 ただ、二人は俺が訊く前に質問をしてくる。

「みー」

「びー」

「れにー」

 パルミー、スビティー、フレニアの三匹も知りたい知りたいと訴えてくるような目でこっちを見てくる。

 ……まぁ、言うの忘れてたしな。仕方ない。

「今日森に来る直前だよ。余ってるSL使って【初級木魔法】と【初級無魔法】取ったんだ」

 改めて、俺はサクラ達に説明する。

「なんでその二つ?」

「【初級木魔法】はフォレストワイアームと戦う時に【カバーツリー】が重要ってウィキに書いてあったし、パルミーだけに頼るよりも誰かもう一人使えた方が被害は少なくなるだろ?」

「……成程」

 首を傾げたアケビの質問のうち一つに答えると、サクラが小さく手を挙げながら訊いてくる。

「じゃあ、【初級無魔法】の方はどうしてですか? あ、いえ。オウカさんが魔法を覚えていた御蔭で、こうしてあの竜を倒す事が出来たんですけど……」

「無魔法はスキルアップで覚える補助が有用だから、だな。今朝の一件で身を持って分かったんだよ。まだ初級だけど、使い続ければスキルアップして覚えてくし。あと、あれに関しては完全に運がよかっただけだ。まさか効くとは思わなかった」

「と言うと?」

「俺はあくまで魔法は完全に補助だけを目的として習得したからな。精神力は増やしたけど魔力に全くSPを振ってない。だから、魔法での攻撃は全く意味ないんだよ」

 因みに、ブレス攻撃を防げた【カバーツリー】も攻撃魔法同様に耐久度はプレイヤーの魔力依存らしい。なので、普通の攻撃に対しての防御目的で使っても紙を破くように簡単に壊れて使い物にならなくなってしまう……らしい。

 今回は【ワイアームブレス】にダメージ判定自体が無かったから防げたものだ。ブレスはあくまで状態異常を付加する攻撃で、ダメージを与える技ではない。

 なので、現状の俺では普通に使えるのが【ウェーブグラビティ】のみで、【スピアツリー】【カバーツリー】【シュートスター】の三つの魔法が全く意味のないものになってる。まぁ、【カバーツリー】は状態異常技を防げるから全くではないけどさ。

 言っては何だが、完全に宝の持ち腐れ状態だよな、このままだと。習得した時は精神力も0だったから魔法使えなかった。その時に比べれば今はまだマシ、と言える状態だけどさ。

 地道に魔法を使ってスキル経験値を溜めてスキルアップすれば、使える魔法の種類も増えるからな。魔力が無くても有効な魔法もいくつかある筈だし、今後も魔力にSP振らなくても大丈夫だろう。……多分。

「……魔力、0何ですか」

「あぁ。それでもブレス攻撃を妨害出来たのは本当に運がよかったよ」

「少しくらいはSPを振った方が……」

 サクラが遠慮そうに進言してくる。

「確かに。せめて0じゃなくて1だけでもSP振った方がいいよ? そうすれば攻撃魔法でも一応ダメージ与えられるし。威嚇程度だけど」

 アケビも軽く息を吐きながら言ってくる。

 ……確かに、0よりも1の方がいいか。焼け石に水っぽいけど、0よりはマシだな。1だけ魔力にSP振るだけなら、そこまで大変な事でもないし。

「……分かった。1だけ増やす」

 俺がそう言うと、サクラとアケビはほぼ同時に軽く息を吐く。じゃあ、レベルも上がった事だし早速魔力にSPを…………。

「じゃなかった」

 メニューを開こうとして、直ぐに手を止める。

 今はそれよりもパートナーの卵か召喚具、どれを手に入れるかを話し合う方が優先だろうが。

「なぁ、これどうする?」

「これとは?」

「パートナーの卵か召喚具の一つを選べっての」

 俺は改めて、表示され続けているウィンドウを指差して二人に訊く。

「私はグリフォンの召喚具を選んだ」

「僕はパートナーの卵を選びました」

 ただ、もう既に二人はどうするのか決めていた。……そう言えば、もうサクラとアケビの目の前にウィンドウは無かったな。あと、アケビに関しては羽飾りが頭に装備されてる。

 マジか。もう決めてたのか……。

「因みに、選んだ理由は?」

 それとなく訊くと、二人は答える。

「個人的にフォルムが好きだから。あと、キマイラにも同年代? ……じゃなくて、同じような感じの友達がいた方がいいかなと思って。ほら、キマイラとグリフォンって複数の動物が合わさってるし、それに大きくて二匹で飛べるから、皆で空の散歩とか出来そうとも思った」

「拠点には皆いますけど、僕もフレニアに新しい友達をと思って選びました。僕のパートナーは今の所フレニアだけというのもありますけど。あとですね、こうして外に出る時も少しでも多い方が賑やかで楽しいかな、と思ったので」

 アケビとサクラは個人的な理由だった。けど決してそれだけではなくパートナー、召喚獣、仲間の事を想いながら選んでいた。

 ……そうだよな。こういうのは自分で好きなの選んでこそだよな。俺が考えてたのって、ちょっとばかし個の意思を無視してた気がする。場合によっては俺の考えもありだけど、今回は間違いだな。

 ゲームは楽しむもの。それを一番優先すべきだよな。

「それで、オウカさんはどれにしたんですか?」

「サクラ。まだウィンドウ表示してるからオウカは選んでない」

 サクラが興味深々と言った感じに尋ねて、それに対してアケビが俺のウィンドウを指差して突っ込む。

「あぁ。俺はまだどれにしようか決めてないんだ」

 軽く肩を竦め、俺はウィンドウに向き直る。

 …………さて、改めて俺はどれを選ぶとするか。

 パートナーは今の所パルミーとスビティーがいる。召喚獣はドッペルゲンガーだけ。【サモナー】は状況に応じて召喚獣を喚び出して戦闘出来るのが特徴だ。

 としたら、幅を広げる為にも召喚獣を選んだ方がいいか。召喚獣なら、絶賛孤独な状態のドッペルゲンガーとも打ち解けやすいだろうし。……多分、だけど。

「……よし」

 暫し考えた末、俺は選んで決定する。



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