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 一人出遅れてしまったが、俺も直ぐ様駆け出す。

 透明の壁が辺りを遮断し、フォレストワイアームが動き出す。

 翼をはばたかせ、空を飛び、大きく息を吸い込み始める。【ワイアームブレス】の予備動作だ。

「光よ、我が言葉により形を成し、彼の敵を目指せ。【フラッシュレイ】」

「ギャァァアアアアアアアアアアッ⁉」

 アケビが【初級光魔法】の【フラッシュレイ】をフォレストワイアームの口内へと放つ。ブレスを放つ前に着弾し、フォレストワイアームはもがきながら墜落する。

「よっしゃあ! 行くぜ!」

「おう!」

「うん!」

 地面で身動き一つしないフォレストワイアームへとゴダイ、アサギリ、ツツジノが群がり、それぞれの武器で攻撃していく。

 フォレストワイアームの生命力が半分を切るまでは基本的にゴダイ達と召喚獣に攻撃をして貰う事にしてる。魔法で攻撃してもいいが、地面に落ちている時は物理攻撃だけにして、空中にいる時に魔法で攻撃をした方がヘイト稼ぎにもなるし、精神力の節約にもなる。

 そして、生命力が半分以下になるとしてくる【アトラクトタイフーン】の中で、更に【ワイアームブレス】をしてくると武器だけでは対処不能になる。魔法は【アトラクトタイフーン】の影響を受けないらしいので、その際に口内か背部に魔法をぶっ放して貰う。

 俺、サクラ、アケビはゴダイ達の体力管理もし、三割を切ったら料理アイテムで回復させる。

「来い、ミノタウルス!」

「来い、ガルム!」

 アサギリとツツジノの甲冑の胸部分、その内側から光が漏れる。そして光の柱と共に召喚獣が現れる。

 ミノタウルスはカンナギの牛頭鬼と似ているがより筋骨隆々としていて腰布一枚。脚は完全に牛のそれであり、手にはアサギリのものよりも巨大な両刃斧が握り締められている。

 ツツジノが召喚したガルムは大きさこそ普通の犬と変わりないが、逆立った毛の色どす黒い赤で乾いた血を連想させ、鋭い牙、ぎらついた黄色い目は狂気的な印象を与える。

 喚び出された二匹もフォレストワイアームへと攻撃を加える。ミノタウルスはその巨大な斧を振るい、ガルムは鋭利な牙を突き立てて。

「ギャァァアアアアアアアアアア‼」

「光よ、我が言葉により形を成し、視界を眩ませ。【フラッシュハインドランス】」

 フォレストワイアームが体を震わしてまた飛び上がろうとしたので、アケビが【フラッシュハインドランス】の目潰しで妨害し、その間にまだまだ攻撃を喰らわせていく。出来るだけ今のうちに通常の攻撃で削っておかないとな。

 スキルアーツを使ってもいいけど、そうするとこちらの体力が大きく削られるから、なるべく終盤に一気に生命力を削るのに使って行きたい。

「くらえやぁ!」

「せぃ!」

「たぁ!」

 …………まぁ、あくまで俺はだけど。俺個人の意見は胸に仕舞って、物理攻撃に関してはガンガン行こうぜ! と言う作戦で満場一致済みだ。

 実際、その方が総ダメージ量が多いし。早期決着、短期決戦も夢ではない。

 ゴダイ達はフォレストワイアームが硬直するとスキルアーツを連発。スキルアーツによってガンガン生命力が削られて行っているとは思う。そしてゴダイ達の体力もガンガン削れていっている。

「ブルルルルァァアアアアアアアアアアアアア!」

「グルルルルァァアアアアアアアアアアアアア!」

 で、ミノタウルスとガルムも雄叫びを上げながらスキルアーツを発動させている。俺達だけの時よりも生命力の削りスピードが何倍にもなっている。

 その分、料理アイテムの消費量が半端ないけど。

「みーっ!」

 ゴダイ達が戦っている傍らで、パルミーが【吸命の種】を植え付け、地味にドレインをしてダメージを稼ぐ。【吸命の種】を植え付けた部分は薄らと黄色く光る。

 しかし、ものの五秒程で【吸命の種】の効果は切れ、光が無くなる。流石にボス相手だと長時間のドレインは不可能か。ディレイタイムもあるので、連発も出来ない。

「ギャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」

 フォレストワイアームが身震いをしてゴダイ達を弾き飛ばすと、そのまま翼をはばたかせて上空へと逃げる。その際にアサギリとツツジノは召喚獣を戻す。

「来て、キマイラ」

「れにーっ!」

「くらえっ」

「水よ、我が言葉により形を成し、彼の敵を撃ち抜けっ!【ウォーターシュート】!」

「光よ、我が言葉により形を成し、彼の敵を目指せ。【フラッシュレイ】」

 フォレストワイアームが飛んでからはキマイラとフレニア、俺のスキルアーツとサクラ、アケビの魔法でちまちま攻撃、そしてなるべくゴダイ達に攻撃が行かないように搖動をする。

 スビティーが参戦出来ないので空を飛べる戦闘要員は減るが、攪乱するには充分だ。それに、空中にいるフレニアとキマイラだけじゃなく、今回は俺やサクラ、アケビもフォレストワイアームの気を引いている。

 地上での配置としては俺、サクラ、アケビがゴダイ達からなるべく離れるように位置取り、動き回りながら攻撃を仕掛けてヘイトを稼ぐ。半透明状態のスビティーは俺の傍らに、パルミーはサクラと一緒にいる。

 時折してくる【中級木魔法】の攻撃【ダンシングプラント】に関してはヘイトを稼いでも範囲攻撃故にゴダイ達の方にも攻撃が行ってしまうが、そこはゴダイのパートナーのカギネズミに役立って貰う。

「ちゅーっ!」

「こっちだ!」

「「おぅ!」」

 カギネズミは尻尾の鍵部分が探知機になっている。本来はその鍵で罠の発見をするが今回はそれを応用して地面から突き出る木の根を回避するのに役立てている。

 魔法によって設置される木の根の位置が感知可能……だとかなんとか。

「ちゅーっ⁉」

「「「ぎゃーっ⁉」」」

 …………まぁ、罠ではないのでカギネズミの感知も百発百中ではないそうだが。ゴダイ達は丁度【ダンシングプラント】の中で唯一他から離れて出てきた木の根によって打ち上げられた。

 それによって被害は最小限に食い止められているから、いいんじゃないかな?

 体当たりとか薙ぎ払いはゴダイ達には来ないし、風の刃も概ねこちら側にばっかり降り注いでくる。

 フォレストワイアームが【ワイアームブレス】をしてこようとすればキマイラに背部に強烈な攻撃をして貰うか、サクラ、アケビの魔法を口内に向けてぶっ放して地面に墜落させる。

 そこからアケビはキマイラを戻してゴダイ達が召喚獣呼び出して一気に攻撃。パルミーも【吸命の種】でドレイン。俺達は体力を回復させる。

「ギャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」

 それを五回程繰り返すと、ついに【アトラクトタイフーン】をし始める。

 全員が面白いくらいに吸い寄せられる。ゴダイ達の防具に風属性の耐性は無いそうなので、俺達よりも総重量的に重いが関係なしにフォレストワイアームの下へとごろごろと地面を転がっていく。

 そして、フォレストワイアームは薙ぎ払いをして俺達を吹っ飛ばしていく。避ける事が出来ず、いいようにダメージを受けてしまう。

 ただ、【ワイアームブレス】をしてこなかっただけでもマシか。

【アトラクトタイフーン】の効果時間も終わり、一同は一斉に起き上がって態勢を整える。

「ギャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」

 が、直ぐ様【アトラクトタイフーン】を仕掛けてくる。そして更に空気を吸う動作を……ヤバい、【ワイアームブレス】だ。

 先程の薙ぎ払いでサクラとアケビがフォレストワイアームの左右に吹っ飛ばされているので、そこから口内や背部を狙うのは難しい。

 そして、【ワイアームブレス】の射程範囲外である真下や後ろには誰もいないのでこのままだと全員が直撃を受けてしまう。

「みーっ!」

 パルミーが咄嗟に【初級木魔法】の補助【カバーツリー】でサクラを守る。

 もし、【ワイアームブレス】を受けてしまいそうな時は、【アトラクトタイフーン】下でも対処可能な遠距離攻撃が出来るサクラ、アケビを優先して守る事になっている。そうしないと、次の【ワイアームブレス】を中断させる事が出来ないどころか、地上に墜落させる事が困難になるからだ。

 遠距離攻撃魔法を使えるサクラをパルミーが守った。

 ――――となると。

「木よ、我が言葉により形を成し、寄り合わされ。【カバーツリー】」

 俺が守るのはアケビだ。

「「「「「えっ?」」」」」

 俺が魔法の詠唱をした事で、全員から「何で?」と言わんばかりの視線を受ける。

 …………悪い、説明するの忘れてたんだよ。

 取り敢えず、俺とパルミーの【カバーツリー】でサクラとアケビを守る事には成功。他全員は【ワイアームブレス】の直撃を貰う。

 附随効果の毒と麻痺に対して耐性・小を持っているので軽減出来たが、混乱に関しては耐性なんて持っていない。

 …………あぁ、きもちわるい。



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