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「連動?」

 連動とは何だ?

「こちらメニューになります」

 と思っているとウェイトレスがやってきてメニューを渡してきたので、まずは注文をする事にする。懐に余裕があるから、初めて訪れた時のように手伝いをして代金を支払うと言う事態には陥らない。

 俺は洋梨のタルトとコーヒーを頼む。因みに先に席についていたサモレッドもといタケシの前には半分ほど減ったガトーショコラとコーヒーが置かれている。

「かしこまりました。少々お待ち下さい」

 メニューを返すと、ウェイトレスは一礼して店の中へと戻っていく。

 俺はフォークに手を伸ばしたタケシに顔を向けて改めて疑問を口にする。

「連動…………?」

「あれ? もしかして知らなかのかい?」

 タケシはガトーショコラを切り分けようとした手を止め、俺にそう尋ねてくる。

 俺は無言で頷く。ウィキや公式ホームページを見るようにはなったが、常にではないし、主にモンスターの情報や公式ニュースを見るくらいしかしてない。だから、連動が何なのかさっぱり分からないでいる。

「連動と言うのは、簡単に言えば拠点と拠点を繋ぐって事だよ」

 フォークを俺に向けながらタケシが簡単な説明をする。

「拠点を繋ぐ?」

「とは言っても、拠点間の移動は出来ないけどな」

 軽く肩を竦めるとタケシはフォークでガトーショコラを切り分け、それを口に運び、咀嚼する。

「その繋ぐってのは……何て言えばいいんだ? 一続きの場所にするって言えばいいのか?」

 咀嚼しながら腕を組んで云々唸る。

「お待たせしました。こちら洋梨のタルトとコーヒーになります」

 と、唸るタケシを余所にウェイトレスが俺が頼んだタルトとコーヒーを持って来てくれて目の前に置かれる。

「ありがとう」

 俺が礼をすると、にっこり微笑んでウェイトレスは去って行った。タケシに一言断りを入れてから洋梨のタルトを口にする。洋梨の本来の甘さと塗られているジャムの甘さが合わさって予想してたものよりも甘い。これはリトシーが好きかも知れないな。……ミビニーはどうだろうか? と言うか、あいつの好きな食べ物が何なのかまだ分かってないからそこら辺も知って行かないとな。

「……こう説明すればいいか?」

 食べ進めていると、タケシがどうやら上手く自分の中で纏める事が出来たようで、

「STOの拠点は一つ一つ別々の場所に作られていて、他の場所から全く干渉されない、いわば孤島みたいなものなんだ。それは知ってるよな?」

「あぁ」

「完全に別離された場所だけど、連動を行う事によって少しばかりの干渉が起こる。つまり、孤島と孤島の間に橋を架けるってイメージかな。とは言ってもさっき言ったようにプレイヤーは拠点間の移動は出来ない。この干渉ってのはいわば互いの拠点の特徴の一部を相手の拠点にも反映させるって事なんだよ」

「拠点の一部を反映させる?」

「あぁ。例えば、拠点AとBがあったとする。拠点Aには川はあるが森が無い。拠点Bはその逆で森はあるが川が無い。この二つが連動するとAには木の芽が出て、Bには水が流れ始める……って訳だ」

 そんな事が出来たのか。つまり、俺達の拠点に植物が生えてきたり溶岩が噴き出たりするようになるって事か。……自分で言っては何だが溶岩はないな。それってもう災害でしかないし。

「言ってしまえばそれだけの事なんだが、これによるメリットと言えば、パートナーモンスターの信頼度が若干だが上がりやすくなる事が上げられる。デメリットは特に無し……いや、景観が少し変わってしまう事かな?」

 成程、連動は単に景観を変えるだけでなく信頼度が上がりやすくもなるのか。

 となると、俺個人としてはサモレンジャーの拠点と連動しても問題ないように思える。何せ、向こうはイベント三位で入手した森の中の拠点だ。連動させてもこちらの景観が損なわれるような事にはならないと思う。精々木が一本生えてくる程度で、それが逆に青く光る洞窟を仕立てあげるのに一役買ってくれそうだしな。

「どうだい? 俺達の拠点とオウカ君達の拠点を連動してみないかい?」

 タケシは僅かに身を乗り出して俺に再度訊いてくる。

 が、直ぐに返事をする事は出来ない。何せ、拠点は俺だけのものではないからな。サクラとアケビの二人が嫌だと言ったらそちらを優先させる。

「俺一人だけだと決められないから、パーティーメンバーに訊いてからでもいいか?」

「あぁ」

 俺はその場でメニューを開いてサクラとアケビにサモレンジャーの拠点と連動するかどうかの質問をメッセージで送る為に文字を入力する。

「で、一応訊きたいんだが」

「何だい?」

 文字を打ち込みながら、フォークで刺したガトーショコラを口に持っていこうとしていたタケシに質問をする。

「何で俺に声を掛けたんだ? 他にも拠点を持ってるプレイヤーもいるだろ?」

「あぁ。それな」

 タケシは頷いた後、ガトーショコラを口の中に入れてフォークを静かに皿に乗せ、一言。

「……オウカ君だけなんだよ。…………フレンド」

 一瞬、木枯らしが吹いたような気がした。

「は?」

「あ、いや。正確には俺達サモレンジャー同士でもフレンド登録をしてる。だが、身内以外だとオウカ君しかいないんだよ。フレンド」

「…………」

「で、拠点を持ってるプレイヤーで連絡がつけられたのがオウカ君だった、って事だ」

 遠くを見ながらコーヒーを啜るタケシ。何処か哀愁が漂っている。

 何だろう。それは特撮めいた恰好の所為なのか、それとも演技演技しい数々の挙動が原因なのか。人助けしているが故に他人とフレンド登録するような機会に恵まれていないだけか。はたまたそれら全てかそれにプラスアルファがあるのか。

 ただ、一つ言える事があるとすれば、お前達はリースかよ。

 リースも俺達パーティーとしかフレンド登録してないからな。フレンドの少なさを競えるんじゃないか? それは俺達にも言える事なんだが、特に気にしてない。

「取り敢えず、俺のパーティーはログインしてないから今日中に返事は出来そうにない。後日こちらから連絡って事でいいか?」

「………ん? あ、あぁ。分かった」

 遠くを見て黄昏ていたタケシは我に戻って頷く


『メッセージを受信しました』


『メッセージを受信しました』


 ほぼ同時にメッセージが二つ送られてきた。

 このタイミングで受信か。

「ちょっと失礼」

 タケシに一言言ってからメッセージを確認する。サクラとアケビからだった。

「早いな」

 今日もログインしてないが、どうやらDGは近くにあるみたいで、直ぐに返信が出来たようだ。

 で、二人の本文を要約すれば、サクラは連動してもOK。アケビは是非ともやって欲しいと懇願してた。

 まぁ、サモレンジャーは先日のイベントで三位だったからな。アケビが欲しかった拠点を手に入れた訳だから、そこから連動の誘いが来たとなれば断る理由なんてないんだろうな。

 因みに、サクラとアケビは連動の事を知っていた。だったら教えてくれてもいいじゃないかと思ったが、拠点を持っている知り合いがいなかったら話題に上げていなかっただけなのかもな。

「……えっとだな。もう俺のとこのメンバーから返事が来たんだ」

「今日ログインしてないって言ってなかったか?」

「ログインはしてないが、DGの近くにいたから直ぐに返信出来たんだと」

「成程。で、何て返って来たんだい?」

「連動してもいい。あと、是非とも連動してくれ、だ。」

 俺の仲間の返事を訊くと、タケシは顔を明るくさせる。

「そうか。じゃあ、早速連動しようか」

「どうやるんだ?」

「拠点に移動するアイテムあるだろ? パーティーリーダー同士のを重ねればいいんだ」

 そう言うとタケシは服の下に隠していた首飾り――【緑木の首飾り】を取り出す。俺の方は外す事が出来ないから、腕に嵌めたままの【青土の腕輪】とタケシの【緑木の首飾り】を接触させる。


『拠点を連動しますか?

 はい

 いいえ       』


 ウィンドウが現れたので、俺は『はい』をタップする。


『連動がなされました』


「これで、連動完了。ありがとな、オウカ君」

「いや、こちらこそありがとう」

 互いに礼を言う俺とタケシ。

 これで、俺達の拠点が連動して何かしらが変わった。

 はてさて、一体何が変わったのだろうか?


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