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第五話 夜は馳走に遊戯にお風呂

「ちぃ……まさかあいつにダチがいたとはな。誤算だったぜ」

 時刻は22時。何だか良く分からない機材がゴロゴロ転がっている倉庫の中で、ランプを中心に五人が円形に座っている。

「すみません姉貴。俺達のせいで折角の作戦が……」

 ペコリと頭を下げるのは俗に言うマッチョの青年。

「いんや気にするな。わりいのはあたいだ。ケリは一人で付けなきゃなんねえのにお前らに頼っちまったあたいに落ち度がある」

「「「「あ、姉貴ぃ……!」」」」

 先の戦闘で格段に団結の強まった五人は、声を揃えて言った。

「おっしゃ野郎共!! あたいは明日もう一度、一人で出る!! 草葉の陰から見守っていてくれ!!」

「「「「分かりました姉貴! どこの茂みに潜ればいいんすか!?」」」」

「…………どこだろうな?」

 どうやら知能レベルも足並みが揃っているらしい……


  ♣


「あたしってストーカーから好かれるのかな……」

 それも女の。

「ストーカー被害にあってるの? 双葉ちゃん。私が取っちめてあげようか?」

「お前もそのストーカーの一人だけどな」

「なんとっ!」

 自覚あっただろうお前。さっきストーキングを正当化しようとしていたじゃないか。

「あ、でも満更(まんざら)でも無かったり……?」

「何を馬鹿な事言ってるんだ……まあ別に今更お前が何しようと怒らず叩くけどさ」

「それってやっぱり怒ってるんじゃないの!?」

 そうとも言うかも知れない。

「ところでさ希美。あのちょっとした画面には何て書いてある?」

 あの画面とは、あたしの自室の机上に置いてある時計の事である。ちょっとばかりデザインには(こだわ)っていて、外側は木製。文字盤はほとんど目立たず、時計の中央部分に緑色で時刻が表示される物だ。

「23時23分23秒って書いてあるけどそれがどうかしたの? あ、もしかして数字が揃ってるって言いたかったの……?」

「んな訳あるかよ! 帰れ!」

 非常識な奴め。何となくゲームが楽しかったからいい加減な調子で帰宅を促していたが、そろそろ冗談じゃない。

「残念、もう私が乗るべき終電は行ってしまったのです」

「お前の家そこだろ。いっつも徒歩で帰ってるの知ってるからな」

 あたしの家は希美がいつも通る道に面しており、窓からはたまにその姿も見る。

「はっ! まさか双葉ちゃん私のストーカーをし――」

「てねえよ!! んで、何か理由があるんじゃないのか?」

 ハリセンを一振り。そろそろこれも作り直さなければならない頃か。音にハリが無くなってきている。

「んー……実はね、ちょっとお母さんと喧嘩しててさ」

 珍しい事もある物だな。このお調子者で勉強もロクにしない奴が一体どんな理由で親と喧嘩したのか、少し気になる。

「ほうほう、してそれは何が原因で?」

 あたしは自分のベッドに腰掛けながら、座布団に座っている希美に問いかけた。希美はやけに深刻そうな顔をして返してくる。

「お母さんがあたしのプリン食べちゃったんだよ!!」

「どうせそんな事だと思ってたよ! 帰れ!!」

 ちょっと期待して損した気分。まあ薄々気付いてはいたんだけど……しかし仕様も無いな。

「双葉ちゃんが一緒にお風呂に入ってくれるなら帰るっ」

 何でこいつが上から目線なんだよ……

「やだよお前変なことするつもりだろ」

「へ、変なことなんてしないよ!! 私はただ昨日食べれなかったぷるんぷるんでぷりんぷりんな双葉ちゃんのパイオ――」

 ――ペシンッ

「お前はエロオヤジか! ……あたしのそんなにおっきくないし」

 この小説にあらぬ年齢制限が掛かっちゃうだろ。とりあえずそれは避けておきたい。

「揉めばきっと大きくなるよ!!」

 ――パシンッ

「お前そろそろいい加減にしないとつまみだすぞ」

 なんか叫んでばっかりだな、あたし。

「まあまあ落ち着いてよ双葉ちゃん。怒った顔も可愛いけどさ。ちなみにさっきのは冗談で、真実を言うと今家族皆出払っちゃってるって話なんだよねー」

「なんだ嘘か……そう言うことなら泊めても良いのかな」

 幸い親は希美の事を気に入ってるみたいだし、姉はあたしに対して絶対に反抗などしないから問題は無いだろう。

「ほんと!? 添い寝しても良いの!?」

 懲りないな。そろそろ眠いしツッコミをする気力も無くなってきた。

「お望みとあらば屋根の上に布団敷いてやるが」

「満点の夜空の下で添い寝!?」

 残念な事に今日は曇り、あるとしたらずぶ濡れイベントぐらいな物だ。

「んじゃお風呂行ってくるよ。寝間着と明日の分の制服はあたしが貸そう。もう夜も遅いし騒がないって誓うなら一緒に風呂に入っても良いけど……」

「誓います。誓って双葉ちゃんと組んずほぐれつします」

 握り拳を作って噛み締めるかの様に希美は言う。女子同士なのだからそういうのも良いのかも知れないが、何かちょっと嫌だ。具体的に何がどう嫌なのかは良く分からないけどとりあえず回避しておきたい。

「了解。一人でお風呂に入ってこよう」

「あ、待って双葉ちゃん! 誓うから! 誓って変なことしないから!!」

 ……始めからそう言えば良いのにな。

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