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第一話 紅葉染まりしあの丘で

どうも、WAIWAI通信と申す者です。この小説は他作との平行執筆になり、また、もう一作品の方を優先して書き進めたいと思うので、かなり不定期な更新となる予定です。こちらの小説は当方が苦手なギャグに重きを置いて執筆して行きたいと思うので、どうか暖かい目で見守って下さい。よろしくお願いします。


 桜舞い散る季節は初夏。草木の間を颯爽と駆る昆虫共の勢いは増し始め、あたしの怠さも増加の一方にあった。

 ……ん、何? サブタイトルと中身が全然違うって? 大丈夫大丈夫、そんな物だよ副題なんてさ。要は気が引ければ良いらしいし。

「はぁ……こうも毎日学校があるっていうのはやっぱり辛いなあ」

 とあたしは校門の前で鞄片手一人呟いてみる。まあ実際は一週間に一度、日曜日という至福の日があるんだけど、それでも土日が休日だった頃と比べると感傷に浸らざる負へなかった。

「おっはー、双葉(ふたば)ちゃん。今日も早朝から憂鬱(ゆううつ)そうだねー」

 そして背後からはタイミング良く声、全くその通りだ。何が悲しくてあたしは高校なんかに通っているのか、最近それすら偶に分からなくなるよ……。

「おはよ希実(のぞみ)。そっちはまた一段と気楽そうだな」

 我ながら花の女子高生ともあろう者がこの発言は無いだろう。しかしあたしの性格は幼少期以前から、いや正確に言うなら誕生前からこうなのである。汚れと同じでこびりついた物はそうそう取れず、加えて言うならこれは正真正銘の汚れ。だからあたしには仕様が無かった。今更否定する気にもなれないし。

「まあねー。んでも今日は日差しが強いから双葉ちゃんの髪の毛も元気――」

 拳が一閃。流石に当てはしないが、希実の頬スレスレの虚空をあたしは突いた。それはかなり本気の一撃であり、風を切る音が伴われる。

「……素晴らしい技だね」

 お気楽な雰囲気はどこへやら。口調は一瞬で淡泊になり、顔は笑いながら引きつっていた。まったく器用な奴だよ。

「適当な事言って誤魔化すな」

 して実のところ、あたしは髪についての話題が嫌いである。何故か、簡潔に言えばあたしの髪が淡い緑色だからだ。それはもう勢いづいた木の葉の如き緑黄色。

 ……恥ずかしいもんな、緑色なんてさ。

「そんなに嫌なら染めちゃえば良いのに。別に髪染めるなー、って校則がある訳でもないんだしね。ちなみに私は双葉ちゃんの髪の毛の色好きだから今のままでいて欲しいけどさ」

 確かに本来なら染めれば事は済む。しかしそれでは駄目なのだ。希実は知らないのだから仕方が無いけど、この髪はどうしても染められない。過去に何度も何度も試してはみたがそういう風に出来ているらしかった。

「ほら、金の問題とか色々あるじゃん?」

 家庭の事情って奴、そう言う事にしておこう。真実を他人に話すなんて事があってはならない。

「んーそっか。ならさならさ、ヨウ素液掛けるとかどう? きっと綺麗なむらさ――」

 刹那、スコーンっという軽快な音。未使用のスリッパが希実の頭を軽打する。

「あたしの髪に葉緑体はねーよ!!」

 今週に入ってまだ二日目だというのに入れたツッコミは数知れず、

「ひどいよ双葉ちゃん!! お父さんにも()たれた事無いのに!!」

 希実の悪乗りの数はその上を行っていた。

「いやお前に限ってそれは嘘だろ!」

 そして愛の無いパロディは止めておけ。

「てへっ、バレちゃった?」

「お前なあ……」

 こいつのてへっ、という発言には必ず動作がおまけで付いてくるのだが、それがまた妙に似合っているのがなんとなく腹立たしかった。

 なので再度スリッパが額に向かう。

「痛っ! ねえ今私何もしてないよね!? 一見平気そうだけどその凶悪な鈍器で殴られる度に私の脳細胞は大量に死んでるんだよ!!」

「悪い、なんかこう、むかっと来たんだ。ちなみにその脳細胞がどうのこうのって奴は迷信な」

 殴られたくないならやらなければ良いのに。もしかしてこいつは巷で噂の"マゾヒスト"という奴なのだろうか。良くは知らないけど。

「あ、今私の事マゾなんじゃね、って思ったでしょ! 違うよ! 唯私は双葉ちゃんの反応を楽しんでるだけなんだからっ!!」

 お前はエスパーか。

「おい、本音零れてるぞ」

 パコーン! ――バコーン!

 あれ、なんで今二回音が。

「こら双葉。人の頭を汚れたスリッパなんかで叩くな」

 この女声はうちの担任教師の物。名前は……なんだったっけ、叩かれたショックで忘れちゃった。

 ……決してまだ考えてないとかそう言うんじゃないからね?

「あ、先生。おはようございます。このスリッパ新品なんで汚くないですよ」

「ああ、そうなのか、ってなんでお前はそんな物持ち歩いているんだ? まあ綺麗なのならば構わない。突然叩いて悪かったな」

 そう言ってレディーススーツの似合う教師は何事もなかったかのように立ち去って行く。

「え、先生。それが教師のすることですかああああああああ!」

 やっぱり物分かりの良い大人は助かるな。

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