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Second-5
一瞬見えた男の人の顔に、私は驚いた。
悲しそうな、顔だった…。
「名前」
「は…?」
「名前、教えてください」
私は、男の人の目を見て言った。
私が質問したのが意外だったのか、しばらく呆けていたけど、やがて我に返ったように言った。
「上杉…冬哉」
「トウヤさん、ですね。
私に何か言いたいことがありますか?」
この人は、前のストーカーとは違う気がした。
少なくとも、話は通じるだろうと思った。
「言いたいことっつーか…、話がしたいな、と…」
「じゃあ、日曜日」
キッパリと言った私に、トウヤさんはキョトンとする。
「日曜は朝しかシフト入ってないので。
それからなら話は聞けます」
違う気がしたから、話せる人だと思ったから。
だから、会ってやってもいいかなって思った。
……ちょっと偉そうかな。
でも…
「…さんきゅ」
そう言って嬉しそうに笑ったトウヤさんを見て、まぁいっか、って思った。
ま、この時の約束を、私は後々後悔することになるんだけど。