Seventh-5
次の日。
大丈夫、大丈夫、と呪文のように言い聞かせた言葉は、全く効果がなかった。
沈んだ顔でバイトに行くと、茜と桃にジッと顔を覗き込まれる。
「未音先輩ブルーですねぇ」
「…え、あ…大丈夫だよ…?」
「大丈夫じゃないでしょ」
茜に突っ込まれ、頭をグリングリンされた。
「気持ちはわかるけど、あんたそんな顔でお客さまの前に出る気?」
「うっ…」
茜に痛いところを突かれ、何も言えなくなる。
「先輩!『プロ意識』ですよ!」
桃に言われ、ハッとなった。
そうだ。
こんな事で悩んでいる場合じゃない。
そんなこと、お客さまには関係ないんだから。
「そう…だね…。
…うん、そう、プロ意識」
私は両頬をパンッと叩いて笑顔を作った。
「よし!仕事頑張ろう!」
スタッフルームを出ていく私を見て、 茜と桃は笑顔で見ていた。
─────……………
「雨…かぁ…」
今日は早めの閉店。
時間的には早いけど、雨だから足留めを食らっている。
「どうしよっかな…」
一番の問題は傘を持っていないこと。
「やっぱり、茜の傘に入れてもらえばよかった…」
5分ほど前。
弱い雨だからと断ってしまった自分に後悔。
「うーん…」
頭を悩ませていると、パシャ…パシャ…という、水溜まりを歩く音が聞こえてきた。
顔を上げると、傘を差したスーツの男の人。
「送っていこうか?未音」
「…冬哉」
優しく微笑む冬哉が、そこに立っていた。




