Second-1
─Second Time─
「いらっしゃいませー!」
カランカラン、と入り口のベルが鳴り、笑顔で挨拶をする。
そこには、昨日見たかっこいい男の人がいた。
今日は一人みたい。
「こんにちは。昨日ぶりだね」
「……っ」
昨日と同じ爽やかな笑顔で言われ、言葉に詰まる。
いけない、仕事しなきゃ。
「い、…1名様ですね。
こちらへどうぞ…」
あまり男の人の方を見ないようにして、席に案内した。
「コーヒーお願い」
「かしこまりました」
そして調理場に行こうとすると、また手を掴まれた。
「……何でしょうか?」
「ね、お姉さんの名前教えて」
「江藤ですが」
私は名札を指差しながら答えた。
「ちーがーう。下の名前」
思わず動きが止まってしまった。
えーっと、何て言うんだっけ?こういうの…。
…ナンパ?
「すみませんが、そう言った質問にはお答えできません」
そう言って去ろうとするも、男の人は手を離してくれない。
「じゃあ、いつ終わる?」
「は?」
「だから、バイトいつ終わるの?って」
あー…、これはあれだ…。例の…。
「お客さま、人を呼びますよ?」
私がそう言うと、男の人はパッと手を離して諦めたようだった。
そして私は、何でもないようなフリをして調理場に行った。
─────……………
「未音。さっきの客、やっぱアレ?」
茜はすぐに感づいたようだった。
「…うん。
名前聞かれて…バイト終わるのいつ?って」
「困るんだよねー…。
さすがの私も待ち伏せされた時はびっくりしたもん」
何がいいのかわからないけど、私は過去にあんな感じのナンパをされたことが2回ある。
似たようなことを、茜と桃もされてる。
二週間前までのストーカー被害も、それがエスカレートしたものだったから、出来るだけお客さまに関わらないようにしてるのに…。
「…ま、不安ならまた和聡に送ってもらえば?」
「うん…、そうする…」
私は、小さく溜め息をついた。