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Dear Heart  作者: 藍原未羽
32/57

Sixth-2




「嬉しいなぁ…。

君に知っていてもらえるなんて…」



一歩一歩、ゆっくりと歩いてくる。



「……君も知ってたでしょ…?

俺がずーっと、君を見守ってきたこと…」


「…!」



逃げたいのに、足が動かない…!



「それなのに……ちょっと用事で目を離してた隙に…」



男の人の雰囲気が変わっていく。


さっきまでとは違う…、暗く、歪んだような雰囲気。



「……君に…、変な虫がついてた…!!」


「…いっ…!?」



空いている右手を掴まれ、壁に叩きつけられる。


左手に持っていた袋は落ち、潰れた。



「ねぇ…アイツは誰…?

何で君のこと……名前で呼んでたわけ…?」


「……ゃ…」


「ねぇ…何で…?」



男の人に両腕を掴まれ、顔を逸らすことしかできない。


息が当たって気持ち悪い。



「……でも、仕方ないよね…。

そういう仕事なんだから…」



何を考えているのかわからないけど、男の人は私の腕を放した。



「仕方、ないよね…。

君は誰にでも平等に笑顔を振りまくから…。

勘違いするヤツがいたって…仕方ないんだ…」



そう言って男の人は、また懐に手を入れた。



「だからね、今日は…」



その手に握られているものが、ギラッと鋭く光る。



「君を、俺のものだけにする為にきたんだ…」


「…!!」



怖くて、声が出ない。


この人…私を殺す気で…。



「痛くないように、一瞬で終わらせるから…」


「……ぃ…ゃ…」



怖い…怖い怖い怖い…!!



その刃が目の前まで迫り目を瞑った時、ふと、彼の顔が頭に浮かんだ。


『未音っ』


私の名前を、いつも幸せそうに呼ぶ、彼の笑顔が。



「…冬哉ぁ!!!!」


「ガッ…!?」


「…?」



すぐそこで、バキッという音が聞こえた。






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