First-3
桃の話を聞きながら、私はじーっと男の人を見ていた。
茶髪で、目が少し細くて…、髪はふわふわしてそう。
遠くだからそのくらいしかわからないけど、…うん、確かに目の保養にはなると思う。
「……で、…って、先輩聞いてます?」
「…あ、ごめん聞いてなかった!」
もー!と怒る桃をなだめていると、店長がやってきた。
「江藤に佐川!
喋る暇があるなら働け!」
「は、はーい…」
私と桃は、逃げるようにお客さまの所へ向かった。
─────……………
「お疲れさまでしたー!」
「未音!」
バイトが終わり、帰ろうとすると声を掛けられる。
彼は辻井和聡。
ここで知り合った、同じ大学の同級生。
「もう暗くなったし、家まで送ってやるよ」
「心配性だなぁ…。大丈夫だよ」
実は、私は二週間前までストーカー被害にあっていた。
ストーカーに気づいてからはみんなすごく気遣ってくれたんだけど、和聡は特に心配してて、ストーカーがいなくなってからもバイト帰りには家まで送ってくれていた。
和聡のアパートがたまたま近かったのもあって。
「心配するっつーの。
どうせお前ん家から俺ん家まで徒歩10分なんだから、送らせろ」
「…わかった。じゃあお願い」
昼間はもう平気だけど、時々…本当に時々、夜道は怖くなるから。
和聡の言葉に甘えることにした。