Fifth-2
「未音ー」
名前を呼ばれ振り向くと、お店に来ていた冬哉が手を振っていた。
「…もう、名前で呼ばないでよっ」
「いいじゃん、別に」
冬哉は、特に悪びれることなくメニューを開く。
「今日のオススメは?」
「頼む気ないくせに何聞いてるのよ。
どうせいつものコーヒーでしょ」
「さすが未音」
冬哉は嬉しそうに笑うと「頼むわ」と言った。
私はそれを伝えに行こうとしたけど…
「…!?」
視線を感じて足を止めてしまった。
見ると、こちらをジッと見ている例の男性。
そして、気づいてしまった。
ドクンッ…
目の下の、泣きボクロに。
「未音…?」
「…ご、ごめん冬哉。
コーヒー…、他の人に頼むからっ…。
私、ちょっと…」
「あ!おい!」
私は冬哉の声にも振り返らず、スタッフルームに逃げた。
胸の動機を抑えて。
─────……………
「先輩大丈夫ですかー?
あの人…上杉さんでしたっけ?
心配してましたよー」
桃が、パタパタとうちわで扇いでくれるけど、
「……っ」
ドクンッ…ドクンッ…ドクンッ…と、胸の動機は治まらなかった。
「未音、あの気持ち悪い客帰ったけど……って、あんたどうしたの!?」
私の様子を見た茜が、慌てたように駆け寄ってきた。
「あっ…茜…、あの人…っ」
言おうとすることが伝えられない。
「誰!?」
茜は、上手く誘導してくれる。
「あのっ……帽子と…マスクの、人…」
「あの気持ち悪い客がどうかした!?」
「……、ストーカーの…っ、人…!」
「「…!!」」
茜と桃は、感づいたように顔を強ばらせた。
「泣きボクロが、あったの?」
茜の問いに、頷く。
あの人は、前も同じような格好をしていて、顔がよくわからなかった。
だけど、彼の特徴を、私は一つだけ知っていた。
それが…目の下の泣きボクロ。




