Fourth-5
「すごーっ…」
観覧車からの眺めは絶景だった。
広く感じていた敷地内も、全てが見通せるほど小さかった。
窓に張り付いていた私に、冬哉が静かな声で話しかける。
「なぁ、未音…。
俺、お前に聞きたいことが一つだけあるんだ…」
「…?なに?」
私は冬哉と向き合うように座り直した。
「未音って、まだ大学生になったばっかりだよな?
なのに…何で、あんなにバイト頑張ってんのかなって……」
冬哉の言いたいことが、何となくわかった。
冬哉はたくさん遊びに誘ってくれたけど、私は何度かその誘いを断っていた。
『バイトがあるから』と。
暇な時は、出来るだけシフトを入れるようにしてる。
たぶん、その理由が聞きたいんだと思う。
「…あのね、話…長くなると思うけど、聞いてくれる…?」
「あぁ…」
冬哉は、微笑んで頷いてくれた。
「私の両親ね、私が小さい頃に離婚したの…」
理由は、何だったか覚えてない。
ただ、お母さんとお父さんが言い争ってたことだけは覚えてる。
気がつけばお父さんはいなくなっていて、私とお母さんは、2人でアパートに移り住んだ。
学校の進学は養育費で何とかなってたみたいだけど、それでも生活は苦しかった。
お母さんは、私が生活に困らないよう一生懸命働いていた。
何度も、机に伏せたまま寝ている姿を見た。
だから、私もお母さんを心配させまいと一生懸命勉強した。
でも、大学への進学が決まった途端──
──お母さんは、倒れた。