Fourth-4
冬哉の姿を見ると安心して、涙が出そうになった。
「だ、だって……冬哉…、先に行くしっ…」
泣きそうになっている私を見て、冬哉はガシガシと頭を掻く。
「……っ、悪かったよ。
先を歩いてた方がお前が安心すると思って……」
冬哉は近づいて、私に手を差し伸べた。
「…もう少しで出口だから。
ほら、一緒に行こう」
「…うん」
私はその手を取って、そのまま冬哉の腕にしがみつく。
冬哉の言う通り、本当にあと少しの距離で出口だった。
もうちょっと頑張れば良かったかも…なんて思った。
─────……………
「じゃあ、ここで待ってろよ。
すぐ帰るから」
私を気遣って、冬哉は飲み物を買いに行く。
私は、ボーッと景色を眺めていた。
すると、目の端に、1人の女の子が木の前に立ち尽くしている姿が映った。
5歳くらいの、小さな女の子。
「どうしたの?」
近づいて聞いてみると、女の子は木を指差した。
「まゆのフウセンが…」
見上げると、確かに木の枝に風船が引っかかっている。
…あ、あれなら私でも取れるかも!
「…っ、えい!」
かなり低いジャンプだったけど、何とか紐に手が届いた。
「はい」
「ありがとう!おねえちゃん」
まゆちゃんは嬉しそうにして、トイレの方へ向かった。
すると、ちょうど女性が中から出てきて、まゆちゃんと手を繋いで歩いていった。
なるほど…お母さんを待ってたのか…。
「未音っ」
「…あ、冬哉」
振り返ると、駆け寄ってくる冬哉がいた。
「ごめんね、冬哉…。今…」
「いや、いいよ。それよりも」
さっきの場所に居なかったことを謝ろうとしたけど遮られ、スポーツドリンクを渡される。
そして、頭を撫でられた。
「……?」
まるで、「えらい、えらい」って言われてるみたいだった。
「な、未音。
あれ乗りたくない?」
冬哉の目線の先には、観覧車。
私は黙ったままコクンと頷いた。