甘くない出来事
昔からの幼馴染でもない。
私との接点が全くない…
そんな人たちと
ある日出会ってしまったら…?
…今でもあの日のことは思い出したくない。
私、北野菜美は桜紅高校の一年生だ。
あの出来事が起きたのは、私が入学してから
間もない頃だった。
私はちょうど部活を決めてる時だった。
「うーん…。バスケ部かテニス部どっちにしようか迷うなあ…。」
私は基本スポーツが好きだ。
小・中校と私はバスケクラブに入っていた。
だが、高校に上がり、テニスもやりたくなった。
人気は同じくらいかな?
ぼーっとしているとニ・三人の女の子たちに
ぶつかってしまった。
「ごめんなさいっ」
「気をつけなさいよっ!」
な…何であんなに怒られるの?
しかも手に持ってるやつ何?
うちわもあれば、看板のようなものもある。
「今日も柊様不機嫌かしら?」
「いやいや。蒼様よー!」
…誰?蒼?柊?
そんな時に女の子の泣き声混じりの声が聞こえた。
「酷いよ‼その子誰⁉」
見ると、叫んだ女の子の前には
男の子の隣には違う女の子が。
…まさかの浮気?
信じられない、
これだから男っていうのは…‼
私は拳を握りしめ、男の方に歩みを進めた。
「あの、あなた彼女いるのに浮気したんですか?」
「誰、あんた」
普通名前も知らない人にこんなことを言う人はいないだろう。
…でも、私にはそんなの関係ない。
「しかも何ですか?彼女にバレても知らん顔して!謝ってください、彼女に」
「お前今さっきから何なの⁉関係ねーじゃん!」
ついに男の方も怒り始めた。
…怒りたいのはこっちの方がなんだけど!
「女を泣かせるな!それで泣かせたらちゃんと謝れ!」
「今さっきからうぜえんだよ!黙れ、クソ女‼」
殴りかかろうとしてきた男。
…ったく、困ったらすぐ手を出すところが
「大っ嫌いなんだよっ」
男の制服の袖の部分を持って、背負い投げをしてやった私。
…ダーン‼
その音と同時に男は床に叩きつけられる。
…でも怪我されちゃ困るから、痛くないように投げた。
彼女も悲しむ可能性がゼロって訳じゃないし。
同時に静まり返る周り。
「あ…あの…」
後ろから泣いていた女の子に声をかけられる。
「あ…ありがとう…。あなたのおかげでスッキリした」
目尻にはまだ涙がある。
…本当に大丈夫かな?
「薄々分かってたんだよね。…彼に他の女がいること」
「…そうなんだ」
「うん…。でも恐くて聞けなかった。…私も弱い人間だから」
切なげに言う女の子。
…こんな思いさせるなんてあの男最低。
私なら一生許さない。
「本当にありがとう。私、次は良いオトコ見つける‼」
「うん。応援してるね」
そう言って私たちは別れた。
そういえば私はいつになったら
好きな人に出会えるんだろう。
告白なら何回かあるけど
恋愛対象として男の人を好きになったことはない。
…未だにキスも付き合ったこともない。
そろそろ彼氏いても良い年だよね。
周りにはカレカノいるし
私だっていちゃついてみたかったりするんだけどな…。
「きゃあああっ」
「柊様ー‼」 「蒼様ー‼」
柊、蒼?
聞いたことあるな…。
…あー‼
あの時の女の子たちが言ってた二人⁉
ちょっとどんな顔か気になるなあ…。
女の子がたくさんいる列の中から頑張って顔を覗かせた。
う、わあ……
二人とも顔をはかっこいい…!
でもきっと外見だけよ。
顔が良い男は性格悪いんだから!
どっちもクールな雰囲気が
漂っている。
んー、私的には蒼、って人の方がまだ
良いかな?
って…何考えてるの、私‼
あんな男なんか眼中にないわよ!
世の中にはもっと良い人がいるわよ‼
「……っ…」
今、今一瞬だけ…
柊、って人と目が合った気がした…
[次の日]
私はいつもより早く学校に来ていた。
暇だったので中庭を散策していた。
「学校の中庭って綺麗なんだなあ…」
空気が美味しい気がするよ。
そんな気分が良い時に…
「ごめん、俺 君とは無理」
「何で⁉私のどこが悪いの⁉」
あらら、フられてるよ。
いくら女の子の味方の私でも
しつこい子はちょっと無理かな。
「俺 君誰か知らないんだけど」
「何で⁉一緒に実行委員したよね⁉
私のこと知らないの⁉」
「うん。
覚えてない。…そういうわけだから」
男の人酷いけど
女の子も女の子だしな…。
「しゅ、柊君のバカー‼」
その時女の子が最後の抵抗として
自分の靴を投げた。
何故か運悪くそれがわたしの頭に激突。
「あ…」
そのままわたしの意識は途切れた。
何で私がこんな目に?
神様、私は何かしたのでしょうか?
…むくっ。
いつの間にか目を覚ました私。
天井はいつもの保健室と違う…?
「あ、やっと目 覚ました」
声の主は私に靴を当てたも同然の柊、って人。
「大丈夫だった?頭に激突してたもんね」
「いや、大丈夫だったら今こうしてないですよね?」
私がそう言うと柊、って人は一瞬目を見開いてから笑い出した。
「あはは、うん…そうだね」
何がおかしいんだ、この人は。
「あの、私は帰るんで。ありがとうございました」
「あ、待ってよ。一人で帰れる?」
「子供扱いしないでください」
「いや、そういうことじゃなくて。帰り道分かるの?」
…分からない。
「わかんないでしょ?」
「…はい」
「送ろうか?」
「いや、それは結構です。他の女の子たちに恨まれるので」
「じゃあ良いの?…というか泊まる?」
はああー⁈
「無理ですっ!ここ柊、ってらしき人の家ですか⁉」
「うん。あと俺は柊、だから。らしき人じゃねえ」
「…すみません」
「で、どうするの。俺が送るけど」
…それだけは嫌だ。
「いや、なんとかして帰ります。では」
私はベッドから降りて部屋を出ようとした。
が、柊、って人に手を掴まれた。
「やっぱ送ってく」
「いや、…だからいいって、…えっ?」
柊、って人は私を抱き上げた。
「きゃー!何するんですか⁈下ろして下さい‼」
「下ろしたら逃げそうだから嫌だ。俺は菜美を送りたいの」
「というか、何で私の名前知ってるんですか⁈私、昨日まであなたの名前すら知らなかったのに」
「…それマジで言ってる?」
「…え、…はい」
「そっかあ…。蒼も?」
「はい…」
歩いているうちに地下っぽい所に来た。
…ここ、広すぎるでしょ。
柊、って人が、歩くたび靴音がする。
すると車を開けて私を抱き上げたまま車に乗った。
「お前ん家どこ?」
「…緑ヶ丘前ですけど」
「じゃあ近くになったら俺に教えて」
[十五分後]
「あ、この辺です」
「どれ?」
「あ、あれあれ!あの家です!」
私はわざわざ家の前まで送ってもらった。
「ありがとうございました。さようなら」
「明日、7時に迎えにいくから」
「いや、いいですよ。悪いです」
「全然悪くないから。準備しておくように。あと俺は柊」
「分かりました、柊先輩」
「だから柊先輩じゃなくて…」
その時に柊、って人…いや、柊先輩の携帯が鳴った。
「あー、もう!じゃあ明日迎えにいくから、絶対‼」
そして柊先輩は出て行った。
「何だったんだ…いったい…」
そして私は家の中に入った。
「ただいまー」
「おかえり。早かったわね」
今言ったのは私のお母さん。
「今日学校でえらい目に遭わされたんだよ」
「そうなの。だからこんな時間に帰って来たのね」
「…え、今何時?」
「2時だけど」
「2時⁈」
まだ学校終わってないじゃん!
「誰に送ってもらったの?」
「え?」
「今さっき車 停まってたから」
み…見てたのか…‼
「今日知り合った人」
「男?」
「…男」
「イケメンだった?」
「私の学校では人気だけど」
「あー、お母さんも見たかったな。きっとはっちゃんも見たかったろうに」
ついでにはっちゃんというのは私の姉だ。
本名、北野初音。
「初姉は彼氏いるじゃん」
「彼氏がいおうがいまいがイケメンは女の生き甲斐なのよ」
「私は違うけど」
「あんたは別」
実の娘への態度、冷たくない?
「あ、私明日は早めに出るから」
「何で?」
「いわゆるイケメンが迎えに来るから」
「きゃー、本当⁉どうしましょっ」
いやいや、何故あなたが興奮している?
「じゃ、私自分の部屋に行くから。朝食よろしくね」
そして私は二階にある自分の部屋に行った。
…宿題しなきゃ。
鞄、鞄…。
え?…ない?ないんですけどっ!
「宿題できないじゃんっ」
でもよく考えれば朝倒れたから教室に鞄忘れたんだった…。
…バカだあ。
私ってバカだなあ。
宿題とか結構真面目にやってたんだけどな。
もういいや!
今日はゆっくりしよ‼
そう決めた私はいつもより早めに寝た。