表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
郁人少年の恋愛奮闘記  作者: ラゼル
スタートライン到達まで
5/17

思春期の少年のたーにんぐぽいんと

 まぁ、時たまテレビや雑誌、ラジオに出ている俺もまっとうな中学生ではあるわけだ。


だから普通に国語や数学、英語や理科や社会も勉強しているし、まして紗雪と違って公立に通っているのだから、ごく一般的な中学生ライフを過ごしているわけだ。

ちなみにここは聡さんの母校である。


 それで小学校までは同じ学校だったのだが、そのまま一緒に公立に上がるのだろうなぁとぼんやり思っていた俺とは別に紗雪はというと、芸能活動を容認し、それに対応してくれる私立の学校を選んだのである。


色々便利だしということらしい。幸い中学3年間の学費くらいなら昔のCMのギャラでギリなんとかなるので別に通うことは可能だったのだ。


 しかし今になって少しではあるが、別々の中学に通うことを選んだ俺を恨んでいる。学費が公立よりも多少高めというのも気になったというのもあるが、聡さんの制服姿をカッコイイと幼い紗雪が言ったのにつられて公立に入った俺は馬鹿だと思う。


 小学生低学年なんだから仕方がないといえば仕方がないのかもしれないが。その時点で公立に進むという選択は刷り込まれたんだろうと思う。

 

 まぁ、学校離れても仕事で会うし、ご近所なんだからたまに道ですれ違うこともある。それにそろそろ紗雪と一緒に過ごすのが少し気恥ずかしい気もするし、それは別にいいのだが。


 問題はというと別にあるのだ。


「あの、郁人くん。好きです、付き合ってください」

……これである。告白を断るのは決まっているのだが、だって仕事に差し支えあるかもしれないし、


それを置いてこの子と付き合おうと言う気が起きないのだ。時間もきっとこの子にたいして割けないと思うし……。

クラスメイトからは何で断るんだ?と詰め寄られるがなんだか心がそれについていかないのだ、多分。


 そしてそれを断る理由に毎回悩むのだ。一応紗雪とはペアで売り出されることも多いし”可愛いカップル”らしき扱いを受けることも多いが、実際には付き合っていない。


だから彼女と付き合ってるの? と聞かれても肯定もできない。


 とはいえあなたと付き合う気がさらさら起きないんです。なんていうことをペロリと正直に言っちゃっていいんだろうか、とも思うわけだ。



 それを聡さんに言えば、「試しに付き合ってみれば? 演技の幅が広がるかもよ」なんて冗談交じりに言われ、それもそうかも、と思ってしまう俺は職業病だろう。

 

 小学校の時でも俺たちはちょっと、いやけっこう学校で目立っていた。それでやっかまれたりもあったし、紗雪にちょっかいかける輩を追い払ったりもしたりして何とか2人で頑張っていたのだが。


 まぁ理解のある子もいたが大半はまだ感情を上手くセーブできない小学生だ。けっこう面倒だったな……まぁ紗雪も芸能界で揉まれて逞しく育ったので、自分で対処もしていたし。とりあえず小学校生活は概ねは平和だった。


 それに告白とは言っても好きだから付き合ってとなることもなく、好きです。でも紗雪ちゃんいるしダメだよね、となるわけで。断るのはけっこう気が楽だった。


それに小学生だし彼氏欲しいとか彼女欲しいとか思うヤツもいま思えば少ない少ない。せいぜい可愛い子とかかっこいい子と仲良くなりたい……みたいな感じだったんだよなぁ。


「あの、それで返事は」

とか細く勇気を振り絞った様子で訊ねてくる女子A。この子は誰だったか。


 ヒドイと言う無かれ、俺が知らなくても相手は俺のことを知っていることが多いのだ。うぬぼれではなく。はぁ、憂鬱だ。


 この子の勇気をそして俺に向けてくれる好意を軽んじているつもりはない、と思いたい。だけど受け入れられない。断るのも気持ちを踏みにじっているような気がしてしんどい。

 こういうとき無性に紗雪とか聡さんに会いたくなる。そういえば紗雪はこういう事態どう対応しているんだろ。あっちは芸能人が多いからと言って色恋沙汰ゼロとはいかないよなぁ、多分。


「……うーんと、今は仕事に集中したいんだ。だから付き合えない、御免ね」


「でも、付き合ってる人いないんだよね……?」

結構頑張るなこの子、おとなしそうな外見なのに。


「いないよ、だけど……」


「仕事で忙しくても、我慢するから郁人くんの彼女になりたいんですっ」

……勘弁してくれ。なんでそんなに彼女になりたいんだろ。俺の気持ちは彼女にはないし、きっと将来もないだろうとぼんやりと思うのに。それでもいいなんてきっと最後には思えないのに。


いや、むしろこっちが愛想つかされるかもなぁ、なんて自嘲する。


「ごめんな、本当に無理だ。ごめん」

と言って、彼女に背を向けて向かうは紗雪の学校。


 ウチは公立の学校だからなのか色々と面倒で、芸能活動に対しても先生はいい顔をしない。それに芸能人は俺一人、ミーハーな子が周りをキャアキャアと何も考えずにうろうろするのも疲れる。

……高校は紗雪みたいに芸能活動を許容してくれるとこ行こうかな、騒がれることも少しは少なくなるだろうし。減るのかなぁ……、まぁ少なくとも学校内はかなり減るだろうって言ってたし聡さん。


 芸能人なんだし、騒がれないのはマズイというか(イコール)人気がないということだからありがたいのだが、

一般人としての郁人を好きと言われても困ってしまう。ファンなら応援してくれてありがとうで済むのになぁ。


 電車に乗って四条駅を降りて歩くこと数分。関係者のカードを提示し、校内へ入る。ケータイで連絡した方がよかったのだろうが、そんな気持ちになれずだらだらと足を進めてたどり着いた図書館裏の庭。


「あのっ 紗雪さん。俺と付き合ってくれないかな。ずっと可愛いと思ってて……」

こっちもか……と衝撃を受けるも悪いとは思うものの紗雪がどう答えるのかが気になって、木陰に隠れ様子を窺おうとしていると、


「無理です。今は誰とも付き合う気はありません。はっきりいうと面倒です」

と無表情で言い放つ。

うわぁ……。いっそのこと清々しいな! つーか気持ちは嬉しいけど……すら言わないんかいっ!!

ある意味男前。しっかし容赦ねぇな。


「なっ! お前何様だよ。この俺が告白してやってるのに」

と顔を赤くして手を紗雪に挙げようとする。


うわぁ、こいつも大概だったよ……と思いながらも助けようと近づくもパーンといい音がする。


「おい、紗雪大丈夫か……?」と分かっていながら訊ねるも


「ええ、回し蹴りであごを一発。落ちたわね」

 彼も恋愛的な意味ではなく気絶という意味で落ちるとは思わなかったろうに。まぁ同情はしない。

女に手を挙げるヤツはそんな価値なし。俺も何だか聡さんの思考に似てきた気がするな……。


 紗雪も俺も聡さんも護身術を習っていてそれなりに戦える。三人の中で一番強いのは聡さんだが、一番技が綺麗なのは紗雪だろう。力が弱い分色々と考えて丁寧に動くからだろうな。


「お前……言い方考えろよ、断るにしてももう少し穏便に…」

「たぶん大丈夫この人あんまり好かれてなくて信用ないから私の評判はそう悪くはならないと思うわ」

「いや、そうじゃなくてお前が危ないってことなんだが……」

「そうね、逆上されてうっかり顔でも傷ついたら事よね」

だからそうじゃないって、もうこいつ危なっかしくて恐いわ。彼女の身体を引いて腕の中に閉じ込めてふう、と大きく息をつく。


「はぁ……、コイツはないにしても誰かと付き合いたいとか思わないんだよな」


「うん」何を当たり前のことをという顔をされる。興味ゼロですか。俺以上だな……と内心ホッとする。


 でもいつかはそのうちコイツは誰かと付き合うこともあるんだろうな、なんて今まで考えなかったことが浮かんでくる。俺が告白されて、紗雪が告白されて付き合うということを想像しなかったのがむしろ不思議だ。その頃には俺はこいつから離れないと駄目、だよなぁ。


でも嫌だな。嫌だ。こいつの隣は俺じゃないと……。

じゃないと俺は。


”俺じゃないと…”???

俺はコイツを守れればいいん…だよな…?



「……いくと?」と頬に冷たく柔らかい感触がして意識が引き戻される。


「――っ!? !? うえぇぁ…?」


「え、ホントにどうしたの」

顔が近い。うっかり唇が触れそうだ。今までこんなに近づくことなんてザラだったよな…?

そうそう、昔は風呂も一緒に入ってたしね……ってアホか! 

そうじゃねぇ……。てか心臓の音が大きく聞こえる。


――ドク……ン、トクトクトクン


おかしくなっちまったのか、俺。


なんて言えるわけもなく、それなりに色んな事に興味のある年頃である俺には一つ心当たりがあるわけで……。


“恋”、”恋情”、”恋慕”

 

――好きで、会いたい、いつまでもずっと、ずっと……とそばにいたいと願う、満たされない気持ち


 もしかして、これって紗雪のこと好きだったり…?

いや、むしろ既にもう愛があるよな……。


ていうか”すき”って何だったっけ??? 


――喉の奥がジリジリする。頭もぼうっとして考えがまとまらない。あつい……。


「紗雪俺のことすき?」

……何聞いてるんだろ、俺。


「え、何いきなり。すきだよ……」

それは幼馴染として、おにーちゃんとして、それとも只の友だちか……。


「……好きってなんだろうな、紗雪」

……ホント人の心とは複雑怪奇だ。


「本当にどうしたの郁人。壊れちゃったの……?」

――それは思っても口にしてあげないでください。さらさらと紗雪の髪が風で靡く。


そしてその目は今は俺だけを見詰めてくれているのだがいかんせん、俺は目があわせられない。


……だけどそのお陰で一つだけ確信してしまったことがある。



――聡さん。俺、紗雪が好きみたいです。どうしろというんでしょうかーーーっ!? 



と自覚してすぐ俺に言いに来たコイツはある意味愛すべきバカだと思う俺である。By聡


 郁人さん自覚。もうここでキリもいいし、Endマーク押してもいいんじゃね?と考えちゃいました。まぁでもそれだと”奮闘”しねぇな……と思ったのでまだまだ続きますよ。

 できればもう少しお付き合いお願いします。


そして最新話に目を通してくださった方々ありがとうございます。

感想、ご意見、誤字報告気が向いたらよろしくお願いします。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ