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郁人少年の恋愛奮闘記  作者: ラゼル
スタートライン到達まで
3/17

勤労少年に痛恨の一撃

 


 そして番組本番。ドラマ別のチーム対抗のゲーム大会では、最近の売れっ子さんが勢ぞろいのなんとも煌びやかな場面だなぁと思いつつも、俺らホントに着物で大丈夫か、と思うわけである。


 大掛かりなセットを使うものも多く、端の方には熱湯や氷水が入っている入れ物もあり、ボールやピンなども並んでいる。あー、こういうときこそうまく立ち回る能力がぐん、と向上するんだよな、無駄に。


 しかし勝ち負けによって出番が多いか少ないかが左右される。つまり負けたチームは控え室で駄弁ってる映像がたまに流されるだけということだ。左遷だ、左遷。

それは頂けない。しっかり宣伝しとかなきゃである。基本負けず嫌いである紗雪も気合十分。


 今は大まかなゲスト紹介中。後ろに控えてカメラが回ってくるのを警戒しつつも小声で紗雪(さゆき)と話す。

カメラが回ってきたらにっこり笑顔は鉄則だ。


「しかし相変わらず俺ら忙しいよな、年末」

「労働法だ、なんだとやいやい言われそうよね」

 ふぅとため息をつく。しかしホントにもう少し楽しい話題にしようぜ? 話題ミスったなぁ。


「まぁ、ある程度の芸能人はそれから除外されるわけだけど」


「そうね、こっちの両親は基本的に子どもは放し飼い主義だけど、そっちは心配してるんじゃない?」と首を傾げる紗雪の黒髪がさらりと揺れる。長い髪。手入れ大変だろうなぁ。俺男でよかった。


「あぁ……、まぁな。でもお前がいるから大丈夫みたいな感じだなぁ」

「私がいても関係ないと思うけど」

と不思議な顔をしてなんで? ということを顔に出す。こういうところは年相応の女の子だ、と思う。


「んー、似たような環境の人がいると安心するんじゃないか? ウチの子供は異質じゃないって思いたいんだろなぁ」まぁ、子どもの時から大人の社会に居るんだ。今の時代じゃ異質なんだろうな。


「私よりは普通じゃないの? ご飯も作れるし」

と彼女はズレた回答をよこす。それになんだかホッとしてしまう俺は単純だなぁ。


「お前が生活能力低いんだよ」

「……その原因の一端は郁人じゃない」

「……確かに、そうかも」

 昔からコイツの世話が生活に組み込まれていて、今ではそれが当たり前。もう反射的に世話をするようにまでなっているような気がして自分で自分が少し恐いのではあるが。


そのうち紗雪一人でやる! とかいって俺離れされたら……。うわ、悲しい。でもそれは遠い未来ではないんだろうなぁ、はぁ。


「え、ちょっと何落ち込んでるの。本番中、顔崩すんじゃないわよ」

 と軽くボディブローを食らわされる。……この容赦のなさは彼女の兄譲りだ。絶対。


 そして顔を整えなおし、俺らのドラマチームの紹介と短い番宣とが行われた。この受け答えも最初は焦って笑われてネタにされたもんだなぁ、と思いつつ。

それはそれで美味しいっちゃ美味しいな、とも考えつつ質問に紗雪と一緒に答えていく。


 振袖よく似合いますねーのお決まりの言葉から始まり、今年の抱負や去年はどんな年だったのか定番な質問をこなしていく。褒め事に恐縮し、そして去年、去年なぁ。


去年は一気に仕事が増えたんだよなぁ、それに慣れるの大変だったぜ。売れる時も落ちるときも一瞬だしなぁ、この世界。それで今年も頑張ります的なことをテレビ向きなコメントを少しいれて誇張し2人で一緒に笑顔をカメラに向けた。それに仲がいいねとコメントされて、面倒な質問がやっぱり来たわけだ。


「2人は本当に仲がいいけど、付き合ってるのかなー?」

俺らが中学生同士だから軽く言える質問だよな。チッ。面倒な。


「そんなことないですよ。まだ中学生ですし」

とサラッと紗雪(さゆき)が答えるもいやいや、最近の中学生は早熟だからあるんじゃないの? と茶化される。俺がこれ何とコメントしても無駄だろうなぁ、と思いつつも否定する。


「まぁ、昔から一緒に居ますから。そう聞かれることも多いですけど。今の所ないですよー」

とにこっと笑いながら言えば今の所ー? ほう……、それは先が楽しみだねぇと観客と司会が一体となって笑う。


「あはは、ないですよ。絶対。家族みたいなもんですし」


とズバッと否定。”絶対”ときたもんだ。

 自分で否定するのよりもずっと相手(さゆき)に否定されるのは堪えるな……。だから嫌だったんだこの質問 。

しかもこれめっちゃ本音だよ、紗雪。笑顔がヒクリと強張りそうになるも耐える。絶対落ち込んだ様は見せられねぇわ。だって男の子だもん。ハハハ。


 へぇー、そうなのかと後ろ髪を引かれそうな様子ではあるが、この話からは一旦退いてくれて。そういえば、今年は受験生だねぇと言われる。それに対して紗雪は

「ウチは私立なんでそのまま持ち上がりです。なので毎日の授業をちゃんとこなすだけなので気は楽ですよ」とコメントする。それに司会が反応し、同じ学校じゃないの?と訊ねられる。


「いや、俺は公立の中学通っているので、受験は必要ですよ。まだ進路は迷っている途中ですけど」そうなのだ。俺らは一緒の中学に通っていない。もちろん一緒の中学という選択肢もあったわけだが……。まぁ色々理由があるんだよ。単純で馬鹿げた理由が。


へぇー、びっくり意外だなぁ……と言われるが、そういつも一緒に居るわけではないのだ。それで離れて気づいたことも沢山あるわけではあるが。


 そして同じドラマのチームメイトと相談し、俺らは着物でも何とかなりそうな、クイズや巨大ボーリングなんかを2人で奮闘しながら善戦し結果2位というなかなか好成績を収め、きっちり今年最初のテレビにしっかりと出張ったのであった。


そして最後に番組の放送時刻とあらすじを説明し。見所をVTRで紹介してもらってまずは上場の出だしである。



最新話に目を通してくださった方々ありがとうございます。

感想・誤字報告も気が向いたらよろしくお願いします。

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