美少年には不幸が似合うらしいですよ。
スタジオ入りしてからその隅で休憩をしていた俺。
ドラマの脇役の撮影で、セリフもせいぜいほんとに数行。
案外こういう事は多くて、本当に台本要らないんじゃないかということもよくある。
ちなみに台本は全て取って置く派の俺は正直そろそろおき場所に困っている。
紗雪は捨てる派である。前の仕事がどうしても頭に残ってしまってうまくいかないような気がするらしい。
俺は逆に自分の積み上げてきた仕事の数を自分の自信としているので、その証が目に見えるほうがありがたかったりする。
紗雪への告白を決意してすぐにこんな事態に見舞われる俺は呪われているのだろうか。
少しぐらい関係のないことを考え込んで逃避することも許されるだろうか。
目の前に居るのはたまに仕事が一緒になる後輩。その面持ちといったら真剣で茶化すという選択肢は選べない。
目の前の光景はよく見る様子である。次に来る言葉といえば。
「俺、郁人さんが好きです。あの…えと」
「は?」
顔を赤らめた 男!?
キィ…パタン
「失礼しました」
そして逃げるな紗雪!
「俺は女が好きだー!」
「あら、酒池肉林がお好みか。大胆だね」
「それは一体なにキャラだ!?」
曲解にもほどがあるわ。
「ヒロインの友だちのあけすけ毒舌キャラクター。意外と普段使わないセリフばかりで楽しいことこの上なかった。ひどいアタシを弄んだのね…とか」
「普通にしててくれ。そして心臓に悪いからそのセリフもやめてくれ」
「……わかった。じゃあごゆっくり、あでぃおす」
「まてまてまてー! いいからそのキャラでいいからここに居てー!」
正直、予想外の事態すぎて何だか2人きりになるのが怖くて、告白の場に居るのは気まずすぎるし相手にも失礼だという紗雪をなんとか引き止めた。
俺は男の硬い体には興味はない。
「…それで、郁人さんがあのとき俺は助けてもらったから。何とかできるようになって、今仕事がとっても楽しくてですね」
「……うん」
そして俺は彼の思いのたけを聞いている。鳥肌がすごい。
紗雪は何かを言いたげな顔をしているものの空気をよんで口を噤んでいる。
「断られるのもわかってたんですけど、気持ちだけでも伝えたくて」
うん、俺HPが削られる。
「でも、紗雪さんには負けませんから。これは宣戦布告です!」
気持ちだけって言ってなかったっけ。やる気満々じゃねぇか。俺逃げたい。
「受けて立つ」
そして紗雪何言っちゃってんの!?
***
「よかったね、愛されてて」
ポン、と生暖かい目で肩を紗雪に叩かれた日には。
死にたくなっても無理はないと思う、な。
(好きな女の子の前でこんな……!)
「でも何で受けて立つとか、言ったんだ?」
「あぁ、正直郁人の隣に男の子が並ぶのは嫌だ。恋愛方面で。男同士でちゅーする絵図らなど見たくないなぁ、と」
「俺だってゴメンだ」
頭が痛い。