第2話 いきなり同居生活
こんばんは
雛仲 まひるです。
真夏のサンタ第二話
はいどうぞ><b
「誠っガッコ、遅れたちゃうよぉー! 何時まで寝てんのさぁ、早く起きなよぉ」
トーストを口に咥え制服に袖を通しながら俺の枕元で、がなり倒している奴がいる。
こいつは桜井真夏と名乗る十七歳の女の子。そして自称、サンタクロース。
こいつとの同居生活が始まったのは初夏のある夜だった。
こいつは夏休み目前のあの夜に突然やって来たんだ。
「あと五十分、寝かせてくれ」
何故、真夏が俺の家にいるのか……? てか俺の両親は赤の他人のこいつを住まわせているのか分からない。
真夏の奴がなにかしたのか? 記憶操作とか……。
なんでも真夏の両親が事故に遭い死亡したとかで、身を寄せる親戚も無い真夏を親友だった父親が突然、連れて来た事になっている。
親友との約束があるからだそうだ。
俺の通う学校にもそれを理由に編入して来た事になっていた。
しかも約束っていうのが、お互いの子供が大きくなったら結婚させるって言うことだったらしい。
今時、許婚って……どうよ?
いったいあの夜、一晩の内になにをしやがったんだこいつは? それとも俺がクリスマスプレゼントを開いた時に、なにかが起こったというのだろうか。
「誠、誠っ。早く起きなさい! 真夏ちゃんまで遅刻させるつもりなの?」
母親の怒鳴り声が聞こえて来る。
いや……あいつもギリギリまで寝てただろ。
「誠! 先に行くからねぇ」
真夏の声が聞こえたころに、俺もようやくブレザーの袖に腕を通した。
あいつには聞きたい事が山ほどある。
「おい! 真夏、待てって」
「誠を待ってたら遅刻しちゃうよぉー。……あっ! そうだ“あれ”で学校まで行けば早いよぉ?」
前を走っていた真夏が急に立ち止まり青空を見詰めている。
「お前……なにを一人で納得してんだ? それに“あれ”ってなんだ?」
「そんなの決まってるじゃない。私はサンタクロースだよぉ、“あれ”って言ったら、ソリに決まってるんだよぉ?」
満面の笑みで真夏が答える。
誰が決めたんだ! ……あながち間違いでもないかぁ? ……っておいっ!
「待て待て待てぇー! ソリってトナカイに引かれて空飛ぶやつだよな? そんなもんで通学できっかっ」
「誠って頭、石器時代の人? 科学は日々進歩してるんだよぉ? 何時までもトナカイに引かれて空飛ぶソリなんて時代遅れもいいとこだよぉー。そんなことしてたら動物愛護の人から苦情の山が来るよぉー」
真夏は呆れ顔で俺を見ている。
「じゃあ、どんな代物なんだよ。現代のソリってやつは」
にんまりと唇の端を吊り上げ、得意げな顔をして真夏が捲し立てる。
「私達、サンタクロースが乗るセール・ヴォランは、あっ! セール・ヴォランて言うのはソリの事なんだけどね。二つの名称に分かれているんだよぉ。一つ目はエスプリリアクター搭載の推進器、ソラフィムブースターと操縦席と荷台に当たる部分はエシュランて呼称してるんだよぉ。ソラフィムブースターでエシュランを牽いて空を飛ぶんだよぉ? そんな事も知らないの誠? ちなみに私のセール・ヴォランの名前はミルフィーユって言うんだよ。うふふ素敵な名前でしょ。ねぇー聞いてるのー誠ぉ?」
頭痛くなってきた。
「知るかっつーの! なんだその甘ったるい名前は! それにソリは兎も角だなぁ……なんなんだエスプリリアクター、っつーのはよ」
「精神力を注ぎ込んで、精神力を変換器でエネルギーに変換して推進力を得るんだよぉ? まぁブースターロケットみたいな物なんだけどね。サンタによって様々なソラフィムブースターの形をした物を使ってるよぉ。カスタマイズってやつ? 貸し出しされてる物や市販の物を使ってるサンタもいるけどエスプリ(精神)の量が多くて強いサンタは自分でエスプリリアクターを造れる様になるんだよぉ。エスプリリアクターは、それぞれサンタの心の形でもあるの。空を飛ぶ時には、いーっぱい精神力を注ぎ込むから、すんごっーく疲れんだよね」
なにがなんだか分かんねぇ……。
しかも、なんだかとっても嫌な予感がする。
「待ってくれ俺にはなにだかさっぱりだ。それにお前の話を聞いていると近未来的な香りがプンプンして来るんだが……。尚更そんなもんで学校に行けっか! 普通に通学すんぞ。いいな真夏」
「いいけど……完全に遅刻だよぉ? 誠」
「……しかたねぇよ。わけの分からん乗り物で行けるかっつーの」
そんな物が昼間から空を飛んでりゃ世界中の話題になる事間違いなしだ。
俺達は何時も通り電車を使って学校に向かった。
ふっ……分かってはいたさ。こうなる事くらい……。
当然と言うか案の定というか俺達は遅刻した。
「春日井誠、桜井真夏・……仲良く遅刻とはいい度胸だ。しかも同伴通学か」
こいつが家に来た翌日、朝起きてみれば、こいつは俺の学校の制服を着ていた。
更に学校に来てみれば、俺と真夏が許婚だという事まで周知の通りとなっているではないか。
いったい真夏は、あの夜なにをやらかしてくれたんだ? それとも真夏から受け取ったクリスマスプレゼントの小箱を開いた瞬間になにかが起こったのかは、俺にその時の記憶はない。
ただひとつだけ覚えていることがある真夏の言った言葉だけは覚えている。
「おめでとうー! 君が当選者だよぉ。今日から私が貴方の彼女でーすぅ。よろしくねダーリン♡ きゃはっ」
あの夜の出来事から俺と真夏の慌ただしい日々が始まったんだ。
第3話 買い物DEートにつづく
ご拝読アリガタウ。
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