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プロローグ&第1話 季節外れの訪問者。

こんばんは。

雛仲 まひるです。


「ちょっと? 九尾」など他作品を楽しんで下さっている皆様アリガタウ。


「真夏のサンタ」は「ちょっと? 九尾」の作風に影響を与えた作品です。


大分以前に書いたものですが楽しんでいただければ嬉しいです。

 プロローグ


 あまねく星達の輝く夏の夜空。


 夏の大三角が輝き星の川が流れる。


 夜空を賑わす光のは夜空を駆けるサンタの道標。


 月は変わらず夜道を照らす田舎町の道標。


 星空に踊る星座の舞踏会。


 星は夜空を彩る宝石、夜空は星の宝石箱。


 宝石箱から飛ぶ出した宝石の降り注ぐ星のゲレンデを。


 あいつは夜空を滑ってやって来た。


 星の海を流れるほうき星の様に燐光残しやって来た。


 星降る夜空をサンタは走る。


 夏の夜空に燐光引き連れ、あいつはやって来た。



 

「流星群? 違う、なんだありゃ?」


 初夏の夜、余りの蒸し暑さに風を求め窓を開け、夜空を眺めたいた。


 星降る夜空に、二本の青い光跡が糸を引いたと思ったら、やがて消え去った。


「気のせいか? ただの流れ星か」


 その直後、あいつはやって来た。




 第1話 季節外れの訪問者。




 ピンポーン、ピンポーン。


 玄関のインターホンが鳴らされ、ドアの向こう側で疲れ切ったかすれた声が聞こえた。


「山田運送れーすぅ……、春日井誠さんにお届け物を――」


 ペンを持って玄関口へと向かう。


 覗き窓から外の様子を覗てみると赤一色の景色になっている。


 ――なんの悪戯だよ、こんな時間に。


「あのぅ……お、届け物、を」


 疲れ切った声で再び呼び掛けられる。


 ドアの鍵を開け、チェーンロックを外しドアを開けた。


「ご苦労様……って、おい大丈夫かよ」


 そいつはドアを開けた途端、ドアの隙間からなだれ込む様に倒れ込で来た。


 季節外れの赤い衣装を身に纏って、赤い三角帽子に白いふさふさしたぼんぼりと縁取りのある帽子から栗色の長い髪の毛が、さらりと顔を覗かせている。


 その髪の毛から漂う、ふわりと甘くてやわらかい香りが、俺の鼻先を通り過ぎて行った。


 女……の子? 俺は咄嗟に彼女を抱き止めた。


 かすれた声の所為か、それ程、男女の意識を持っていなかった所為か、改めて運送屋さんが女の人だと認識した。


 ……って

サンタクロースの衣装? 今は初夏じゃん! 


 俺は首を横に振る。


 そんな事を考えている場合じゃない。


「あの……大丈夫すか?」


 彼女からの返事は返って来ない。


 どうする? 俺、百十九番に連絡するか。


 突然の事態に慌てふためく。 


「おふくろ! 百十九番頼む」


 そう叫んで我に返る。


 そうだった。おやじもおふくろも、まだ仕事から帰っていなかったんだ。だから俺が荷物の受け取りに出たんじゃねぇか。


 取り合えず彼女をフロアに寝かせ、何度も呼び掛けてみるが、やはり返事は返って来ない。


「学校避難訓練の時に習ったよな? 確か救急救命の方法。……どうするんだっけ? そうそう意識確認の後、意識が無ければ気道確保だっけか、それから……えっと」


 俺は彼女の呼吸と脈拍を確かめてみた。


 虫の息程の呼吸しかしていない様に思えるし、脈拍も力無く打っていて、次第に弱まっていく様に思えた。


 胸元に耳を当て心音を確かめてみると、あてがった耳に感じるやわらかい感触が伝わってきた。


 彼女の心音が弱々しく鼓動を打っている。


 ほっと、すると同時に呼吸も心音も次第に弱まっていく事を感じ、俺は唾を飲み込んだ。


 こ、これは人工呼吸と心臓マッサージするしかねぇー。


 決して、やましい気持ちはない! 断じてない!


 血色の悪い彼女の顔と紫掛かったチアノーゼの唇に己の唇を近付け、再び唾を飲み込んだ。


 弱々しくても呼吸も鼓動も打っていし、やっぱり百十九番に電話するか。



 

 暫らくの間、躊躇している間に彼女の顔色に赤みが差して来た。


 ただの貧血だったのか?


「ぅん……」


 彼女の小振りな唇から吐息が漏れ、鳶色の瞳が薄っすらと開いていく。


「きゃぁぁっ! あなたなにしてるのよーっ」


 彼女の手の平が、俺の頬目掛け飛んで来た。


〝パシーン〟


 乾いた音が部屋に響いた。




「あのぅ……怒ってますぅー?」


 俺はぶたれた箇所を氷嚢で冷やしている。


 目蓋は腫れ上がり両頬も腫れている、とどのつまり平手打ちの後、ボッコボッコに殴られた。


「いや、別に……痛てて」


 ぶっきらぼうに答えた。


「あのぅ……ごめんなさい……でもでもでも! 君がいけないんだよ? 私に意識がない事をいい事に胸を触ったり、キスしようとするからだよぉー。……それに気を失ってる女の子を部屋に引き込んでいったいなにをするつもりだったのさ」


 眼を三角にして彼女は俺を睨んだ。


 彼女の頬も膨れ上がっているが、俺が報復に彼女を殴った訳ではない。


 頬、いっぱいに空気を頬張り膨れているのだ。


 目を見れば分かる聞きたい事が山ほどある、と彼女の眼が語っている。

 

 それは俺も同じだってぇーの! 

心の中でそう言いながら弁解してみた。


「いや、あれは君が急に倒れたから仕方なく……。それに触った訳じゃないしキスしようとした訳じゃぁねぇんだ。呼吸が弱々しかったから、その……人工呼吸と心臓マッサージをだな――」


 そう弁解しながらも彼女の衣装が無性に気になる。


「訊いていいか? 今、初夏だよな」


「君さぁ……この気温だよぉ? 冬だと思う?」

 

 いや。……それを俺が訊いているんだが。


 何故、初夏にサンタクロースの衣装なんだ? クリスマスシーズンの宅配ピザ屋でもあるまいし。


「君。本当に運送屋さんなのか? その衣装は季節外れのイベントかなんかなの」


「私は運送屋さんじゃないよぉ? サンタクロースだよぉー。君知らないの? 冬になるとクリスマスにプレゼントを配っているんだよ。でも……大雑把に分類すると運送屋さんになるのかなぁ? よく分かんないや、てへ」


「てへ。じゃねぇーよ。山田運送って言ってたじゃん自分でさ! それに今は初夏、もう直ぐ真夏になるのっ。冬でもクリスマスでもねぇし、ただのコスプレマニアじゃねぇの?」

 

俺は半ば呆れて言った。


 サンタクロースなんていない事くらい小学生でも知っている事だ。


「違うよぉー正真正銘サンタクロースだもん! ほらこれ見てよー」


 彼女が免許証サイズの証明証らしき物を俺の前に差し出した。


「サンタクロース証明証、第七千二十九号? ……って、なにこれ?」


「だーかーらぁー。サンタクロース証明証だよぉ! これ持って無いと民家に入る時、不法侵入で捕まるんだよぉ?」


 彼女は口を尖らせ頬を膨らませて俺を睨み付ける。


 何故にお前が、クエッション付けてんだよ!


「いや……それ持ってても捕まるしょ? 普通。それにそんな資格や証明証なんて聞いた事も見た事もねぇって」


「だぁーってホントだもん! 大体の人はサンタクロースて信じてくれないから、だから山田運送って言ってるんだよぉー」


 そりゃ、まぁそうだろうな。


「それにサンタクロースが民家に忍び込むのは真夜中だけだもん」


 それが当然とばかりに彼女は、にんまり顔をしている。


「何処からだよ。まさか煙突とか言わねぇよな?」


「あのね君って……もしかして馬鹿? 今時、煙突のあるお家なんかあると思う?」


「馬鹿じゃねぇーよ。これでも成績はいい方だっ」


「ふーん」


 疑惑の目が向けられている。


「じゃあいったい何処から入るってんだよ?」


「玄関か、窓だよぉ」


「どうやって?」


「ドアロックをこじ開けるか、硝子を切り取って鍵を開けて、寝ている人を起さない様に、そぉーっと」


「そぉーっとって、それ泥棒じゃねぇーかっ、まるきり!」


「失礼しちゃうわねぇー! 泥棒なんかじゃないよぉー。何度も言うけどサンタクロースだもん! この分からず屋っ」

 

 逆切れか? 逆切れですかっ。


 膨れ面の彼女の容姿をよくよく観察してみる。……運送屋と言うには、細い線の身体つきに童顔なのか幼く見える。


「君、いったい何歳なの? でもって俺ん家になんの用?」


 さりげなく彼女の歳を訊いてみる。


「十七歳だよぉ? それがどうしたのさ? ……あっ! 忘れてた。はい、これクリスマスプレゼントのお届けだよぉ」


 彼女が小さな手の平に乗る程のリボンが付いた綺麗に包装されている小箱を差し出された。


「クリスマスプレゼントって……。もうじき真夏じゃん! それに山田運送って……十七じゃ車の運転免許証取れないし、持ってねぇーんじゃねぇーの?」


「私サンタクロースだもん! 何回言えばわかるの! さっき見せたでしょ? サンタクロース証明証」


 そう言い張る彼女は不思議そうに俺を見ている。


 聞いた事も見た事もないサンタクロース証明証を運転免許証と勘違いしている頭の可哀相な奴なのか? こいつは。


「それ運転免許証じゃねぇーしっ」


「サンタクロース証明証とソリの免許証はちゃんと持ってるもん」


 頬に空気を孕み膨れ面で俺を睨んでいる。


「……ソリって、もしかして空飛ぶやつ? ソリの免許証って小型飛行機のライセンスかなにか?」


 そんな事はないだろうと思いつつ、訊いてみた。


「サンタクロースがソリに乗るて言えば、空飛ぶなんて常識でしょ? 君ってホントお馬鹿さんだよね」


 常識って……。どちらかと言えば非常識しょ? なにかのファンタジーでもあるまいし。このファンタジー頭め。


「……あっ! そうそう。おめでとうございまーすぅ! 君は厳選な抽選の結果、この度サンタクロースからプレゼントを貰らえるラッキーな人に選ばれたんだよぉ」


 彼女はなにかを思い出したのか、持って来た袋をあさり始めた。


 厳選な抽選結果の当選者が何故に俺? 怪しいにも程がある。


 それに……。

 

 何故に今頃? 怪しい厳選な抽選の結果って……個人情報の漏洩? 

俺は綺麗に包装された小箱を、じっと見詰めた。


 この包み破いたり、箱開けたらその場で金取られるんじゃね? クーリングオフとかあんのか? などと考えながら彼女の表情を窺った。


 彼女は、にこやかに微笑んでいる。


「さあっ早く開けなさいよぉー! 更にびっくりなプレゼントに当選してるかも!」


「待て待て待てぇー! まだあんのかよサプライズが! ……あのさ君がサンタクロースを名乗っているだけでも十分驚きなんだって! しかも初夏に」


 それだけでも、とんでもなサプライズなんだからな。


 俺は疑問をぶつけてみた。


「一つ訊いていいか? なんで今頃になってクリスマスプレゼントが届くんだよ? もう初夏だぜ」


 彼女はげんなりした表情を浮かべて「はっー」と大きく空気を吐き出し溜め息を吐いた。


「君さぁ……。サンタクロースがどれだけ大変か分かってる?」


「さぁ?」


「大体、クリスマスイブの一晩だけで世界中の当選者全部にプレゼント配れると思ってるの? 常識的に考えても時間的に考えても無理だと思わない? 常識が分からない人だね? 君ってさぁ。……まぁ最近は少子化の影響もあって、近年は荷物も少なくなってはいるらしいけどね」


 お前に常識云々を問われたくねぇーよ。


「で、今頃になったのか?」


「そうだよぉーそれより早く開いてみてよぉ。君が当選者じゃなければ次の当選者のところに行かなきゃなんないんだからさぁー」


 頭の弱い人の相手をするのに、精神的にも肉体的にも疲れて来て、仕方なく俺は恐る恐る小箱のリボンを解いた。


 

 第2話 いきなり同居生活につづく。

ご拝読ありがとうございました。


次回も楽しみにっ!><b


さて、本作品他を楽しんでくださる読者様本当に感謝です。

また作品に対するお気に入りや感想、評価など下さった方々、ありがとうございます。


大変励みになっております。


まだまだお待ちしておりますので、お気軽に感想、評価など頂けると嬉しいです。


さてさて、この場を借りてお知らせです。

「ちょっと? 九尾2nd」執筆(プロット作成中)の傍ら、「ちょっと? 九尾(裏)」を近々UPしたいと思います。


(裏)は本編の主人公視点に対し、ヒロインの美九音視点になっています。


 本編では主人公に暴言や暴力も? そんなツンツンしていた美九音の心情が分かる物語となっております。


 本編での美九音心情を想像、予想して楽んでおられる読者さまには、あれな使用となりますが、ご興味がございましたらUPの際に一読くださると嬉しいです。f^^


UPの日程は未定(恐らく真夏のサンタ(全9話)終了後、話数がそろい次第、ランダム更新となる予定です)


ではでは。

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