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第39話 魔女、今後を考える


 ルフトとスミラは獣人族なので、身体能力が高い。彼らの実力も育てていきたいので、ヴィルと同じように騎士団で鍛えてもらえないだろうか。そう思って、騎士団を訪れた。


「ライオネル団長、お久しぶりです」

「おお、ラーシェリア殿。会えて嬉しいぞ」


 団長室でライオネル団長に会い、彼にルフトとスミラについて事情を説明した。二人はヴィルとディアと一緒に訓練場で待っている。


「実は先日、フェロスで親に捨てられた獣人族の双子を救出したのです。彼らは狼族の血を引いていて、生まれ持った俊敏性と鋭い感覚を持っています。出過ぎたお願いだと思いますが、そうか彼らもヴィルと同じように騎士団の訓練に参加させていただけないでしょうか」


 私はまっすぐと団長を見つめる。彼はしばらく沈黙していたが、やがて豪快な笑みを浮かべて机を叩いた。


「ラーシェリア殿! それは素晴らしい提案だ。新たな希望となる若者を拒否するなどありえない。その二人を、是非とも受け入れさせてくれ!」


 私は頭を下げ、礼を言った。やはり、彼は人が良くて優しい。


 ライオネル団長と共に訓練場に行き、彼はルフトとスミラの前に立つ。ヴィルが二人の背中を押して、団長に軽く頭を下げた。


「少年達よ。君達は、今日から我が騎士団の一員だ。歓迎するぞ!」


 二人は顔を見合わせて、同時に頭を下げた。礼儀正しくていい子達だ。私達の様子を見守っていた騎士団の人達は、ルフトとスミラを温かく迎え入れてくれたので、安心して任せることができる。





「ラーシェ。何を考えているの?」


 ヴィルら子ども達が眠った後、リュビアがそう問いかけてきた。彼女はいつもなら一番に眠っているのだが、今夜はそうではないらしい。


「これからのことを、少しね。皆はまだ幼いから、すぐに旅に出ることはできない。いつ頃にここを発って王都に向かうかを考えていたんだ」

「メインは旅をすることだもんね」


 頷いて、そっと眠るヴィルの髪を撫でる。彼の両脇には所せましとルフトとスミラが入り込み、三人で仲良く寝息を立てている。この部屋は四人用なのでベッドも四つあるのだが、ルフトとスミラはいつもヴィルのベッドに潜り込むのだ。ディアとリュビアも同じベッドで眠っているので、ベッドが余ってしまっている。


「騎士団で稽古をつけてもらって、ある程度自衛ができるようになってから王都に行こうと思ったのだけど、国を移動するのは皆が成人してからじゃないといけないんだ」

「そうなの? どうして?」

「国境を渡ることができるのは、成人した者だけだから、らしい。私も最近初めて知ったのだけどね。親子関係であれば、子どもを連れて渡れるようだけど、私達は親子ではないから」


 ギルドで情報を集めていると、そう話を聞いたのだ。昔は何の縛りもなく国境を自由に移動できたのだが、安全性の問題等もあるのだろう。


「成人は何歳なの?」

「十五歳」

「わあ、若いんだね! ……というか、みんなの年齢ってはっきりと分からないよね。どうしたらいいんだろう」


 問題はそこだ。ヴィル、ディア、ルフトとスミラの正確な年齢が分からない。彼らは自分の誕生日も把握していないのだ。そのことを聞いたとき、とても悲しく思った。家族から一度も、誕生を祝われたことがないそうで、必ず私が祝ってあげようと思ったものだ。


 ディアだけは母親と親しくしていたようだが、それも訳ありで色々深い事情があったらしい。その色々の事情のせいで、彼女も誕生日を把握していない。彼らがいつ成人するのかが分からない。


「成人したら、何か証明するものがもらえるの?」

「成人の儀を受ける時に、何かもらえるらしい」


 私の時には、成人を証明するものなどなかった。そもそも成人と子どもの境界も曖昧で、このくらいの年になったら大人だろうと軽い感覚であった。学園を卒業したら立派な大人であるとされ、それが今でいう成人の証明というものになるのだろう。


「私は成人を証明するものは持っていなかったけど、冒険者にはなれた。本来冒険者は成人しないとなれないものだけど、判断は甘いのかもしれないね。でも、国境を渡る時はそうはいかないみたい」


 私の見た目年齢は、十九程度だろうか。実年齢よりも下で見られることが多いが、流石に成人を越えているとは判断してもらえる。ギルドカードが成人の証明になるので私はもう大丈夫だが、子ども達は正式な方法で成人の証明をもらっておきたい。


「十年、かな」

「十年? 成人までにかかる時間?」

「そう。その十年を、どこで過ごすべきだろう」


 このままフロンティアにいるのもいいのだが、子ども達を育てるには限界がある。今は私が彼らに社会に関することで様々なことを教えているとはいえ、私は教師ではないしそこまで教えるのが上手いというわけでもない。


「皆を学園に入れたいのだけど、この街には学園がないんだ。ここは、子ども向けの街とは言えないからね」


 この街に定住している人達は基本冒険者や商人だ。一般の人々は、危険なフェロスも近いのであまり多くは住んでいない。それと関連して、子ども達の数も少ない。


 ギルドで話を聞いていると、王都には学園がいくつかあるらしい。貴族が通う貴族学園(皆は貴族ではないので入学することはできない)、騎士志望者が通う騎士養成学園、魔術師を育てる魔法学園、そして多くの人々が通う一般的な学園など沢山の種類があるそうだ。そのどれも、お金はかなり必要になってくる。


 金貨一枚から十枚。通う学園によってかかる費用は当然変わってくる。一番高いものだと、金貨三十枚もかかってくるのだ。貴族や大商人の子どもが通うような学園である。


「学園に通うのは何年くらいなの? ヴィルとか、ラーシェと離れたくない! って言って学園に行くのも嫌がりそう」

「六年が基本。卒業してから専門的なことを学びたいと思ったら、高等学園に通うこともできるんだ」

「何歳から通うの?」

「十歳から通って、十五歳に卒業する。卒業式の日と同時に成人の儀も行われるらしいよ」


 リュビアに説明しているが、全て話を聞いたことによる受け売りである。私が学園に通っていた時は今とは違う制度だったように思う。


「十年かー。長いね。わたしは成人とか関係ないからいいんだけど、もし人の姿だったら何歳なんだろう。転生してから、この世界で何年過ごした……?」


 リュビアはそう呟いて、何やら考え込み始めた。彼女の精神年齢はヴィル達よりも上だと思っているが、それは前の世界での彼女の年齢を換算した場合のことである。ただそれでも、二十歳には届いていないように思う。


 ヴィルとディアとではディアの方が年は上で、ヴィルとルフト、スミラとではヴィルの方が年が上だと思うのだが……年齢の上下など考えても特に意味はない。一年や二年の差なんて、大したものではないのだから。


「しばらくは、お金集めを目標としよう。情報を集めて、機を見て王都に移動することにするよ」

「その間に、わたし達は強くなるために修行だね!」

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