8話:答えを求めて
「さてとここがこの街で一番デカイ図書館みたいだね」
デカイと言っても学校の図書館くらいのサイズなんだけど、まぁ探しているものはきっと見つかるだろう。
「よし、とにかくそれっぽい本片っ端から持ってくるか」
僕達は手分けをして大災害について書いてある本、それに近しい内容の本をあるだけ持ってくることにした。
上の本を取ろうとしたらバランスを崩し、頭をぶつけてしまった、そうすると二冊の本が上から落ちてくる。
「あてっ」
「大丈夫か?」
心配そうに声をかけてくる。
恥ずかしいところを見られてしまった。
「うん大丈夫だよ」
僕は立ち上がり落ちてきた本を元の位置に戻そうとする。
しかし妙に落ちてきた本の事が気になり、少し読んでみることにする。
「なになに?"獣の魔術師"か」
このタイトルは恐らく獣人の事を指しているのだろう。
この本は古い童話のようで、内容は一人の獣人の女の子が魔術を使い皆を笑顔にして行く物語だ。
きっと魔術を使えない獣人の誰かがいつかの未来には魔術を使えていることを夢に見て描いたのだろう。
もう一冊は魔術書だ。
魔術関係として一緒に置かれていたのだろうが、いつかここに書いてある魔術は役立つかもしれない、少し読んでおこう。
「トラン~いつまで蹲ってんだ?」
少し遠くからが退屈そうな声で呼んでくる。
どうやら本を読むことに夢中になってしまっていたようだ。
一つのことに尋常じゃないほどの集中力をみせるのは、昔からの長所であり同時に悪い癖だな。
「ごめん、直ぐに行くよ」
そうして本を元の位置に戻した僕はお目当ての本を手に取り、出来るだけ集めた本を一冊ずつ読んでいくことにする。
その中で恐らく大災害の事を書いてあるであろう本を見つける。
「多分これじゃないか?」
「お!?あったか」
僕は見つけた本を一緒に読み進めていく。
内容はこう書いている、[事件が起きたのは約十年前の事であり、ある日突然国の中心部から大爆発が起こる事で、この大災害となったとされている。
しかし国を崩壊させる程の威力だったのにも関わらず負傷者は居れど、犠牲者は獣人の夫婦二名だったことが不幸中の幸いだろうか?
後に発生源には莫大な魔力が検知されたが、魔術を扱えない獣人の仕業ではない別の誰かが起こしたとされている。]
「これしかあの大災害に関する本は無かったね」
「何だよあんだけ探してこれだけかよぉ~」
小さくため息をつきながら椅子に座り込む。
正直僕も同じ気持ちだ。
だが少し気になる事はあるが、もしそれが正解なのだとしても信じたくはない。
「どうしたトラン?浮かない顔して」
つかれた顔で隣から顔を覗かせる。
どうやら僕が考え事をしているのを見て心配させてしまったようだ。
「ううん、ごめんなんでもないよ」
「そうか?なら良いが」
そうだ、考えていたって何かが変わるわけでもない、第一大災害の詳細だって分からなかったんだから、今はとにかくアルシアの心配をするべきだ。
「ねぇアデラ気晴らしに外を歩かない?」
僕は頭の整理をするため外に出ることを提案する。
こうでもしないと頭がパンクしてしまいそうだ。
「だな、俺もこんな文字だらけの所にずっといたら、頭がイカれちまうよ」
どうやら僕が思い詰めているのを察してくれたらしい。
こいつは口は悪いが相手の事を良く見ている奴だ。
僕達は全ての本を元の位置に戻し、図書館を出ることにした。
「はぁ、結局手懸かりはねぇし次は俺達どうしたら良いんだよ」
僕達は途方に暮れ、特に意味もなく街を見渡す。
他の図書館にも行こうと考えたが、正直これ以上の情報を得ることが出来るとは思えなかった。
「そこの御二人、一つ尋ねたいことがあるのですが」
右手の小指に指輪をつけている老婆が僕達に声をかけてくる。
正直次にすることも分かっていなかったので丁度良い。
「はい、良いですよ」
「ではお尋ねしますが、お二方は何故あの子と共に行動をしていたのでしょう?」
掠れた声でそう尋ねてくる。
あの子と言うのは恐らくアルシアの事であり、そう聞いてくるのは魔女の子と言われているからだろう。
「それはとある事情があり、アルシアにこの国を案内してもらっているからです」
「なるほどそれで一緒に居たわけですか」
老婆は納得したような仕草をする。
と言うか、一体何なのだ?こんなこと聞いてきて。
まぁ実際そんなのは些細な事だ、一番気になることはこれじゃない。
「なぁ、俺からも一つ質問していいか?」
「ええ勿論どうぞ」
質問をするべく口を開く。
恐らくアデラが聞こうとしているのは俺も一番気になっていることだが、もし僕の考えが合っているのなら僕は酷くショックを受けるだろう。
「アルシアは何で魔女の子って呼ばれてんだ?」
「あぁそんな事ですか、それならば簡単です」
僕は最悪の答えが返ってくるのを察して固唾を飲む。
「それはあの子があの大災害を起こした張本人だからですよ」
老婆は怪しげに微笑みながらそう答えてくる、だがそんな笑みなど気にならない程僕はショックを受けていた。
あぁ…当たっていて欲しくなかったな……しかしアルシアが魔女の子と呼ばれている理由と言う僕達が最も気になっていることの答えは得た。
こんな答えならば知らない方が良かったのかも知れないけど……