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4話:獣人の少女

「はぁ、はぁ」


 魔力を辿り魔石を盗んだ犯人を追っているが、何処まで行ったんだこれ?

 僕達はガレア王国についてもずっと歩きっぱなしなのでもうヘトヘトだ。


「だぁー!いつになったら犯人の元に辿り着くってんだ!!」


 声が反響してかえってくる程の声量で文句を叫ぶ。

 気持ちは分かるけど道が続いてんだから仕方ないだろう。


「とにかく道を辿るしかないさ」

「辿るって言っても途中で"魔石が捨てられてりゃ"終わりじゃねぇか!」


 ごもっともだ。

 僕達は魔石の魔力を頼りにしているため、魔石が捨てられていれば犯人は捕まらない。

 その時は魔石は手元に戻ってくるだけ良しとしよう。


「あ"ー、あの犯人ぜってェ捕まえてボコしてやる」


 今にも怒りが爆発しそうな声で物騒なことを言う。

 だか気持ちとしては僕も同じ気持ちだ。

 辿っている道の光が強くなってきている、これは魔石がどんどん近くなってきたと言うことだ。


「魔力の反応が強くなってきた、アデラもうすぐだぞ」

「本当か!?ならさっさと取っ捕まえてやる!」


 はびゅーん!と音が聞こえてきそうな程全速力で前を走っていく。


「な!ちょ、待てよ!」


 僕もなんとか追い付くように全速力で走る。

 さっきまでダラダラ文句言ってた癖にあんだけ速く走れるって、アデラの恨みは買うものじゃないな。

 走っていると後ろ姿が目に映る。


「お前いきなり走るなよ、大体僕が居なけりゃ辿り着くことだって……」

「悪かったって、んな事より犯人が居るのはあの家だろ?」


 僕の説教をさえぎる。

 目の前には小さな家が一軒だけ建ってある。

 アデラの言う通り確かに魔力はあの家にある、どうやら本当に犯人はあの家に居るようだ。


「よしさっさと乗り込んじまおう」

「えぇ…まぁ大丈夫だろうけど」


 少し不安が残るが、実際こっちが被害者側なんだし多分罪には問われないだろう。


コンコンッ


 扉をノックする。


「どなたですか?」


 そう言いながら中から一人の女の子が扉を開けて顔を覗かせる。


「旅をしている者なんだけど、この辺にキラキラ光る玉はなかった?」

「知りませんそれでは」


 少女は少し驚いた顔をして冷たく答える。

 まずいこのままだと家の中に閉じ(こも)ってしまう。

 僕が少し焦っているとアデラが勢いよく身を乗り出す。


「お前がコイツの魔石を盗んだのは分かってんだよ!だから速く返しやがれ!!」


 まるでカツアゲをしているチンピラのように怒鳴る。

 えぇ!?そんなにぐいぐい行って大丈夫なのか?もし戦闘になったら。


「フッ…」


 少女は少し笑う。

 気をつけろアデラ、何か仕掛けて来るかも知れない。


「ごめんなさい!!」


 少女は勢いよく頭を下げる。

 僕達はポカーンとする。


「「え?」」

「私が魔石を盗みました。本当にごめんなさい!」


 まさかアデラが出るとこんなあっさり謝られるとは、やっぱり僕舐められやすいのかな……


「まぁいいや、とりあえずその魔石返してくれないかな?」

「いや、それがその…」


 少女は口ごもる。一体どんな理由で返せないのだろう?


「立ち話もなんですし、中に入りませんか?」

「中に入って大丈夫なやつか?」


 ささやくように問いかけてくる。


「うん大丈夫。彼女からの敵意は感じられないよ」


 でも少し妙だ、僕の魔石とは別に小さいが魔力を感じる。

 念のためだ、警戒しておくに越したことはないだろう。


「ではお言葉に甘えてお邪魔します」


 僕達は家の中に入る。

 中に入ると椅子に座らせてもらい、魔石を持ってきてもらった。


「さて、この魔石を返せない理由を話してもらえないかな?」

「はい、実は私の両親は心臓病で治すには多額のお金が必要なんです」


 なるほど確かに魔石は高く売れる、それに内包されている魔力が強いほど値段は上がるからね。


「今は別の国の病院に入院させてもらえてますが、その入院費用がいつ尽きるかも…」


 少女は少し俯きながら話す。


「でも何で別の国なんだ?この国には病院はねぇのか?」

「あるにはあります、でも獣人は魔術を使えない一族ですので外傷以外はあまり治せないんですよ」


 少女は真剣に答える。

 なるほど、だから別の国に入院させる必要があるのか。


「でもよぉトランは魔術師なんだから治癒魔術も使えんじゃねぇの?」

「そんなんですかトランさん!?」


 少女は勢いよく身を乗り出す。


「期待させたようで悪いけど、僕は使えないんだ」

「そうですか……」


 少女は顔を下げてしまう。

 ガッカリさせてしまった…昔使えるよう色々な本を読む事や、小さな動物の怪我を治そうとするなどの努力はしたのだが生命に関する事だ・・・傷を癒す魔術となるとそれなりに生物に対する知識は必要だった。

 結局動物も病院で治してもらったし。

 この辺は前の世界だろうと異世界だろうと変わらないんだな。


「えー何とか使えねぇのかよトラン~」

「無茶言うな、こっちだって努力はしたんだよ」


 と言っても実際この子の両親は助けたいし、こうなったらやはりこの手しかないな!


「ねぇ君はご両親を助けるためにその魔石が必要なんだよね?」

「はい勿論です!私は何としてでも両親を助けたいです!」


 少女は勢い良く答える。


「分かったじゃあ最後にもう一つだけ質問。君はご両親のことは好き?」


 少女は目を見開く。

 答えは分かりきっているものだけど、はっきりと彼女の口から答えを聞きたいのだ。


「勿論です。私は両親をこの世界の誰よりも愛しています」


 とても落ち着いた声で真剣に、ゆっくりと彼女は答える。

 少女の声色や目は嘘をついているとは到底思えない、安心して良いだろう。

 アデラは察したのか笑顔で僕の方を見ている。

 任せろお前が思っている事を口にしてやるから。


「よし、その魔石を君にあげるよ」

「いいんですか、本当にいいんですか!?」


 少女はバッと顔を上げキラキラした瞳で僕の顔を見る。


「だってよ、良かったな!」

「何でお前がドヤるんだよ!」


 隣でドヤ顔でいるアデラに突っ込む。

 あの魔石は元々僕のだっつーの!


「あははっそう言やそうだっな」


 笑いながら謝る。


「ありがとうございます!この借りは必ず返します!!」

「大丈夫だよ」


 僕は笑顔で答える。

 実際魔石一つで命が救えるのなら安すぎるのだから。


「でも、それじゃ私の気が収まりません!」


 そうは言われても借りを作る気何て、最初からなかったしな…


「あっそうだ。それならこの国を案内してくれよ!」


 確かに僕達はこの国に来たばかりで、しかも魔力を辿って進んでいただけのため戻り方も分からない。


「そんな事で良ければ、この"アルシア・ファリナセア"にお任せください!」


 どうやら少女の名前はアルシアと言うらしい。

 彼女は胸をドンと叩き自信満々に答える。

 そうして僕達は彼女に案内されながらガレア王国を回ることになる。

 ちなみに魔石は持ち歩いてて割ったり、盗まれたりしてはいけないため机に置いておく事にしておくことにした。

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