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3話:旅立ち

「よし、荷物はこれで全部だな」

「本当に大丈夫?一人で行ける?」


 お母さんが心配そうに俺に問いかける。


「大丈夫だよ!もう何歳だと思ってんの?」


 全く、心配をしてくれるのはありがたいけど、お母さんは心配しすぎなんだよ。


「それにしてもこんなにおっきくなって。お父さんちょっと感動だなぁ」

「えぇ本当に大きくなって」


 二人は少し涙ぐむ。

 別に二度と帰ってこない訳でもないんだから、そんなに感傷的になることもないだろうに。


「もう!僕は大丈夫だから」


 僕は家を出ようとする。

 そうするとお母さんに呼び止められる。


「今度は何!」


 僕は少し眉をひそめながら振り返る。

 そうすると二人は顔を少し見合わせる。


「「いってらっしゃい」」


 二人は口を会わせて言う。


「いってきます!」


 僕は精一杯元気よくそう答えると家を後にした。

 あの約束から八年が過ぎた。

 今思うとあんな暴君みたいな奴とよく旅に出ようと思ったなと思う。

 アデラの事を思い出しながら集合場所であるソルム王国に向かう。


「さて、この光景も久しぶりだな」


 ソルム王国につき辺りを見渡す。

 アデラから"十六歳に会ってお互いの成長度合いに驚こうぜ"とのことで、この八年間ここには訪れていない。

 なのでアデラがどんな風に成長したかは知らないのだ。

 とは言え暴れん坊な奴には変わりないんだろうけど。


「さてと、アデラの奴を迎えにいくかぁ」


 前に進もうとすると視線を感じる。

 それもただの視線じゃない、まるで針に刺されているかのような鋭い視線だ。

 視線を感じる方向に目を向ける。そうすると後ろから短剣が飛んでくる。

 僕は即座に魔術書を開く。


《"拘束する蔓(ヅルクハイト)"》


 地面から(つる)が生え、短剣を掴む。

 それにしても何処かで見たことのある短剣だ。

 その瞬間後ろから気配を感じ、僕はもう一度魔術を発動する。


《"燃え盛る短剣(フローガー・スティレント)"》


 炎の短剣を出現させ男が手に持つ短剣を弾く。

 男は笑う。


「はぁ、速くその被り物を取れアデラ」


 男は被り物を取り明るい表情で僕に話しかける。


「ちゃんと修行してたみたいだなトラン!」


 やはりあの飛んできた短剣は、子供の頃にアデラが持っていた短剣だったようだ。


「当たり前だろにしても何であんな真似した?」

「いや~ちゃんと修行してたかの確認ってやつだ」


 ニカッと笑顔でそう答える。


「確認って、あんな危ない確認方法があるか!」

「そこはお前を信用したんだよ」


 信用してくれるのは嬉しいが、だとしてもあの確認方法はないだろう。


「たく、お前は昔とあんまり変わってないな」

「ンだと!俺もちゃんと強くなったんだぞ!」


 違う、そう言うことじゃない。

 まぁ子供の頃にあんな動きはしなかったし、実際強くはなっているのだろう。

 暴れん坊なのは変わらないけど。


「さて確認も済んだことだし、早速行くぞ」

「はいはい」


 本当この先もコイツに振り回されるとなると、先が思いやられるよ。

 そうして僕達はソルム王国を後にした。


「なぁトラン最初は何処に向かうつもりなんだ?」

「ここからだと一番近いガレア王国に行こうと思う。」


 僕達はガレア王国に向かいながら話をする。

 "ガレア王国"それは獣人の住まう国。

 異世界って言ったら獣と人が混ざった獣人でしょ!ってどっかの誰かさんが言ってたっけ。

 でも初めて本で読んだ時から行ってみたかったのも事実なんだよな。


「ガレア王国ねぇ…あそこ崩壊してなかったか?」

「うん、でもどの本を読んでも大災害としか書かれてなくて、でも実際に災害が起きたガレア王国なら真相が分かるかも知れないし」


 そう、ガレア王国は一度国を崩壊させるほどの大災害が起きている。

 だが詳しい情報は世間で明かされていないのだ。

 本当に地震などの災害の可能性もあるが、一部が巨大な何かで掘られたかのように抉れていると言う記述があり、只の地震でそうなるとは考えづらい。


「まぁ俺は戦闘になっても大丈夫だろうが、お前は魔力とか尽きたりしないだろうな?」

「僕の事舐めすぎじゃない?そう簡単に尽きないよ」


 僕は魔術書を開く。


《"無限の収納庫(アペイロス・レポノ)"》


 収納庫から魔石を取り出す。


「デケェ魔石だな」

「まぁね。これは普通の石に僕の魔力を込めて作り上げた特注品の魔石でね!」


 僕は自慢気に答えていると、後ろから物凄い風と微かな魔力を感じると共に人影が目に入る。


「うわッ!?・・・あれ?」


 僕達は顔を見会わせる。

 ゆっくりと僕の手を見ると、そこにあったはずの魔石が失くなっていた。

 何処かに落とした形跡も無し、風で飛ばされる事も考えにくい、となると僕達から出た答えは一つだった。


「「盗られた!?」」


 僕達は掌を見つめ驚く。


「どうすんだよ!魔石盗られまったぞ!!」

「大丈夫、言ったろあの魔石は僕の魔力が込められてるって。だからあの石の魔力を辿ればいい」

「なるほどな」


 アデラはパチンッと指を鳴らす。


「なら早速追うとしよう」


 魔術書を開き呪文を唱える。


《"魔の追跡(ディアボリ・テラキング)"》


 魔石に宿る僕の魔力が光の道となって現れる。


「よし、早速行くぞ!」


 僕達は走って道を辿る。

 一秒でも速く取り返さねば、もし悪用されようもんならたまったもんじゃない。

 僕達は魔力を辿り森を抜けて行く。

 てかまだ続くのか・・・何処まで行ったんだあの盗人め!


「おい、何か見えてきたぞ」


 森を抜けるとそこには僕達が目的とした場所に辿り着く。

 そうガレア王国だ。


「ここがガレア王国…正に異世界ファンタジーの世界だ!」


 辺りを見渡すと獣の耳が生えている獣人ばかり。

 これだよこれ!僕がこの世界に求めていたものは!!


「どうしたお前?そんなに目輝かせて」


 少し引きながら僕に問いかける。

 しょうがないだろ本で読んでいても実物を見るのとは違うんだから。


「何でもない、それより速く魔石を盗んだヤツを捕まえよう」

「お、おう」


 僕達は気を取り直すとまた魔力を辿り始める事にした。

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