14話:手にした応え
「これが私の体験したこと全てだよ」
僕達はアルシアの話を聞き終わり言葉に詰まる。
壮絶な過去を聞き何か言葉をかけるべきなのかも知れないが、その言葉が見つからない。
「そんな顔しないでよ、私の自業自得なんだからさ」
アルシアは"あはは"とひきつった笑顔でそう言う。
何もない、全員が黙っている無音の時間が続く。
そんな時間が過ぎる中アルシアが沈黙を破る。
「私は自分でパパとママを殺しておきながら他人のせいにして生きてきた卑怯者だからさ、そんな私の友達になってくれて嬉しかったよ」
彼女は淡々と話す。
まるで僕達に別れを告げるように。
「そんな二人だからちょっと我が儘を聞いて欲しいんだけど…」
瞬間隣の少年がアルシアの言葉を遮る。
「だからって殺してくれなんて言うわけじゃねぇよな?」
アデラは静かに問う。
アルシアは驚いたように目を見開き、少し笑みをこぼしながら答える。
「ありゃ、やっぱり分かっちゃうよね…」
ふぅ、と一息ついた後言葉を続ける。
「でもこのまま生かしておいたって私は処刑対象だよ?」
確かに魔力を使い果たしたアルシアは今、魔術を使うことは出来ない。
アルシアを処刑するにはこれ以上無い程に絶好のチャンスだろう。
「確かにお前は処刑対象だ、今ではなくても死ぬことになるかもしれないな」
アデラは拳を強く握り締めながら淡々と話す。
悔しいがその通りだ。
「だからって俺達がお前を殺す理由にはならねぇ、勿論殺す気にもな」
アデラはアルシアの目をみて答える。
「大体俺達は誰を生かすためにこんなに頑張ったと思ってんだよ、なぁ?」
少し笑みを浮かべながら僕の方を見る。
「そうだよ、僕達は君を守りたい…友達でいたいんだ!」
僕は強く答える。
この言葉は上っ面だけの言葉なんかじゃない、心の底から出ている本心なんだ。
「何度も言わせないでよ私は犯罪者なんだよ!?そんな私といたら二人まで…」
「だったらなってやるよ!お前と同じに!!」
アデラはアルシアの言葉を遮る。
僕もディッシュと同じ気持ちだ。
僕は強く頷く。
「お前が俺達とまだ友達でいたいってんなら、その気持ちに全力で応えてやるよ!」
「アルシア、君の応えを僕達に聞かせてくれないか?」
アルシアは少しづつ涙を流しながらゆっくりと言葉を発し始める。
「私は…二人と一緒に生きたい、友達でいたい!!」
「「任せろ!/任せて!」」
アルシアは大粒の涙をこぼしながら「ありがとう…ありがとう……」と呟く。
僕達二人は顔を見合せ少し笑みをこぼす。
「いつまで泣いてんだよ、ほら顔を上げろって」
アルシアが凄く泣くもんだからか、アデラが少し焦り始める。
「ちょ、あの…泣き止んでくれよォ~~」
焦りすぎたのかアデラも泣き出してしまう。
あんだけカッコつけときながら最後はこれって…相変わらずだなアデラは。
「さて、応えも聞いたしアルシアの罪を無くそうか」
僕はパンッと手を叩き、場を仕切り直す。
二人がキョトンとした顔で僕の方をみる。
てかアデラは鼻水拭きなよ、汚いよ……
「罪を無くすってどうやんだよ!?」
少女が隣でウンウンと凄い勢いで首を縦に降る。
てかアルシアも涙拭きなよ。
「ごめんごめん。罪を完全に無くすってのは少し盛ったかもだけど、軽くは出来るかもしれないよ」
二人ともさっきまでの涙が消えキラキラした眼差しで僕の事を見つめる。
さっきの涙は一体どこへ……
アデラは物凄い勢いで僕に近づき、ガシッと肩を掴む。
「うおおおお!だとしてもスゲェよ、さすが俺の親友だー!!」
少女の首の振りがさっきのよりも激しくなる。
もう首がこのままふっ飛んでしまうんじゃないかと心配になるほどだ。
「分かった、分かったって二人とも恥ずかしいからやめて!」
ここまでされると流石に僕も照れる。
もう顔が熱くてりんごのように真っ赤になっていそうだ。
「それじゃ僕の考えを話すから、静かにしててね!」
「「はーーい!」」
二人は園児のように返事をする。
全く…返事だけは良いんだからさ。