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12話:応えを求めて

僕達は自身に出来るだけの強化魔術を使い、アルシアに向かう準備を整えた。


「そんじゃ跳ぶぞ!」


 準備は万端だ。

 突っ込んだ後どうにか出来るかは分からないけど、不安なんてものは微塵も無い。

 ただ今は目の前の少女が助かること、それだけを望んで行けば良い。


「せーのッ!」


 僕達は一緒に飛び上がる。

 狙うは勿論ただ一人。

 正確には彼女本人ではなく魔術ではあるが、この際どっちだって良い。

 魔術を放ってもらい真っ向から打ち破ることが出来ればそれで良いのだから。


「二人して突っ込んでくるとか自殺行為だよ!?」


 非常に驚いた様子で声を出す。

 そりゃそうだろう、普通あんな魔力の塊に対して真っ向から行く奴なんて殆ど、いや、(ゼロ)と言っても良い。

 アルシアは一瞬悩むような顔を見せた後、仕方がないと言うような顔で魔力の塊を僕達に投げつける。

 よし!まずは第一関門突破だ。

 もう魔術を放つ事の出来る魔力は残っていないだろう。

 しかし一番難しいのがこの塊をどうやって突破するかなのだが、迷っているだけではただ死ぬだけだ。

 それでは意味がない。

 ならばやることはただ一つ、目の前の物を破壊するだけだ!


《"黒の囲い(クラウスーラ)"》


 僕は魔力の出力を半分だけにし囲うのではなく、目の前だけに魔術を発動させた。

 ビキビキと音を立て目の前の壁が割れていく。

 僕達は今すぐにでも行動に移せるため、魔術を発動しようとする。


バキンッッ!!!


 壁が割れた。

 今からだ、今から起こす行動こそがこの作戦が成功となるか、失敗となるかの決め手になる。


《"限界突破(スパーゾンタス)"!!》


「出血大サービスだ、もういっちょ行くぞォ!」


《"切魔の剣(グラディオス)"!!!》


 アデラは二つの魔術を自身に付与する。

 彼自身は魔術を扱うのが得意な訳ではなく、生物・武器に付与する魔術しか使えない。

 だけどそれ故に、アデラは強い。


「いつかこの塊を真っ二つに出来るようになりたいもんだな」


 相手の頭を切るように剣を振るい、放たれた魔術を少しずつ削る。

 僕だって何もしない訳がない。

 アデラに続くように魔術を発動する。


《"無限の収納庫(アペイロス・レポノ)"!》


 この作戦は最初に行った通り真っ向から突き破ると言う無茶な作戦そのものだ。

 だがいくらなんでも魔術の塊そのものを消し飛ばす何て事は僕達では出来ない。

 ならばどうするか……その答えは目の前の魔術を切るのではなく吸収することだ。

 この"無限の収納庫(アペイロス・レポノ)"ならば魔術さえも吸収する事が出来るであろうと考え、この行動に至った。

 正直この辺は賭けだ。


バチバチッ


 腕に電流が走る。

 どうやら吸収は出来ているようだが、あまりの大きさにこちらの魔術が強制的に解除されてしまいそうだ。

 腕がはち切れそうだ。

 耐えろ、吸収しきれ。


「もっとだもっと削ってくれ!」

「全く、無茶しか言わねぇなお前はァ!!」


 剣を振りかざす速度が上がる。

 文句言いながらもしっかりと応えてくれる。

 こりゃ(おご)る額が相当な額になるのは確定だな。


 「何でそこまでするの…私は魔女の子なんだよ?今もこの国を壊そうとしてるんだよ?」


 アルシアは困惑の声を出す。

 何度言わせるんだろう、アルシアを助けるなんてこの答えしかないだろう。


「「お前が俺達/僕達の友達だからだ!!!」」


 他の人には理解はされないだろう…偽善だと、自分勝手だと言われるだろう。

 でも…それでも僕は僕が正しいと思ったことをする。

 この国の民が勝手に争ってアルシアの両親が死んだ…この言葉に嘘はないと思う。

 実際どうなのかは分からないが、アルシアが両親を殺すことだけは無いだろう。

 だってあの時言葉は、愛しているは嘘偽りを一切感じさせるものではなかったからだ。


「やっぱり変だよ二人とも…友達だからってそれだけで」


 涙が(こぼ)れそうな震えた声を発する。


「変で結構だ!だからって助けちゃならねェ理由になる訳ねェだろ!!」

「……ッ!」


 魔力が弱まるのを感じる。

 この塊を消すには今しかない!ここで畳み掛ける!!


「このまま押し切るぞ!!」

「言われなくても!!」


 塊が小さくなっていく。

 消せる、吸収出来る。

 僕は自分の中の魔力を全て"無限の収納庫(アペイロス・レポノ)"に移す。

 広げろもっと大きくするんだ。


「「うおおおおおおおおおお!!!!!」」


 塊が吸い込まれていく。

 アルシアがどんどんと近くなる。

 ゴウッと風の音がなり完全に塊が消えた。


「「アルシア!」」


 僕達は泣きじゃくる彼女の手を取る。

 やっとだ・・・あんなに近くにいたのに遠すぎた手をようやく繋げる事が出来た。


「僕達に教えてくれない?君の事を」

「うん!」


 そう答える彼女は涙ぐみ、ぐしゃぐしゃな表情(かお)をしていた。

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