私、フローラ・ロワール公爵夫人は、お義母様から「孫産め」アピールを喰らって困ってました。が、まさか夫が若い娘を家に連れ込んで、「この娘と子作りするから」と言うなんて!挙句、私は公爵家から追い出されて…
私、フローラ・ロワール公爵夫人は困っていた。
ダリア義母様から、跡継ぎを早くと責められ続けていたからだ。
どうしたら、落ち着いてくださるのか。
途方に暮れるばかり。
結婚当初、お義母様ダリア・ロワール元公爵夫人は、とても感じの良い方だった。
夫を亡くされたばかりの五十代前半の貴族夫人で、艶のある黒髪を後ろで束ね、褐色の瞳をクルクルと輝かせながら、私、フローラを、このドリヴァル王国きっての名門ロワール公爵家に迎え入れてくださった。
扇子で口許を上品に隠して微笑む、穏やかでお優しい性格に思えた。
実際に、食事の際などでも、私用のお肉を切り分けてくれるなどして、夫のダザイ公爵よりも気遣ってくれた。
それほど、歓待してくれたダリアお義母様が、今では、私をお屋敷から追い出さんばかりに、こめかみに青筋を立て、
「跡取りを早く!
孫の顔を見せて。
このままでは、死んでも死に切れない!」
と、別に余命宣告を受けたわけでもないのに、喚き散らすようになってしまった。
そもそも、私、フローラがロワール公爵家に嫁いできたのは、お義母様ダリアに請われてのことだった。
私の実家フェネオン家は、時折、当主が王宮に出仕して医官としてのお勤めを果たす一方で、街中でかなり大きめの診療所を営んでいた。
お祖父様の代には、多くの病人を癒した功績から、王家から特別に子爵位を賜った、成り上がりの名誉貴族だ。
でも、当然、建国以来の名門貴族と違って、実質平民階級同然だったので、名門貴族とはお近づきになることもなく、私は学園卒業と同時に家業の手伝いをしていた。
お父様に言わせれば、「筋が良い」そうで、特に薬草を煎じて薬湯を作り、患者の体調を整えていくことを得意としていた。
だから、このまま実家の診療所に勤めて、やがては医師のもとに嫁ぐのだろうと思っていた。
そんなある日、貴族の女性が診療所にやって来た。
彼女は、「お抱えの医師や薬師が役に立たないから、こんな診療所でも、我慢してやって来てやったのだ」という。
父によれば、馬車にある家紋から、名門ロワール公爵家のご婦人だろう、という。
「くれぐれも粗相のないように」と忠告されながらも、丸投げされた。
緊張したが、実際、その女性の症状は、イライラしたり、疲れやすかったり、突然泣き始めたり、手足が冷えたり、耳鳴りや頭痛、腹痛が度々起きて、夜に眠れない、朝に起きてもだるいーーといったもので、たしかに私が受け持つのに相応しい患者だった。
同じような症状に苦しむ中年女性にいつも渡す薬湯を、薬草を煎じて作って、飲んでもらった。
その薬湯を飲むこと一週間で、その女性は、みるみる症状が良くなった。
体質的に、ピタッと薬湯が症状に当てはまったのだ。
いたく感激したご婦人は、自らをダリア・ロワール元公爵夫人だと名乗り、「自分の息子の嫁に来てもらいたい」と言った。
「我がフェネオン家は形ばかりの子爵家です。
とても名門貴族家に嫁ぐのはーー」
と、父がやんわりと断った。
が、ダリアは納得してくれない。
「まさか、このロワール公爵家の頼みを断ると言うの!?」
と凄まれては、断ることができなかった。
こうして、ダリアお義母様に請われて、私、フローラは、ロワール公爵家の嫁になったのだった。
夫のダザイは、私と初対面のときも、無造作に黒髪を掻き分けながら、
「フローラって言うんだ?
医官の娘だってね。
だったら、母上の老後の面倒も見てもらえるし、良かったよ。
これでこのロワール家は安泰だ」
と喜んでいた。
王国きっての名門公爵家の当主なのに、随分、鷹揚な態度で、私の方が堅苦しい挨拶をしてしまったことを覚えている。
一ヶ月後に、ダリアお義母様に言わせれば、「こぢんまりとした形式だけ」の結婚式を挙げた。
それでも、参列者は百人を超え、始終、父も兄も縮こまっているしかなかったほど、私の実家フェネオン家にとっては、充分、盛大な結婚式だった。
ロワール公爵家一門の縁者のほか、他の大貴族の代表者、果て我がドリヴァル王国のアクロス王子までが参列する式典になっていた。
たしかに、結婚当初、私は歓迎されていたのだ。
ところが、式を挙げてから二年後の今では、お義母様から、「孫産め」アピールされるばかり。
お義母様が変わってしまったきっかけは、今年の春に行われた舞踏会で、多くの貴族家一門から焚き付けられたせいだった。
寄子貴族を集めた席では、決まって、「お世継ぎは?」「お孫さんは?」と問われてきたが、大半は、「まあまあ」「こればっかりは、授かりものだから」と抑えてくれていた。
ところが、その舞踏会では、まったくそうしたフォロー発言がなされず、しかも、より過激に、お義母様や夫に対して、「何も奥方様の腹を使わなくとも良いのです」とささやく者が現れたのだ。
その当時の私は、親戚縁者に向かって、引き攣った笑顔を振り撒いてばかりで、政治的策謀に対してまるで警戒せず、無策だった。
平民同然家から、ダリアお義母様の一存で、名門公爵家の奥方に収まった私、フローラを妬んで、追い落とそうと企む貴族がいるとは考えもしなかった。
私が跡継ぎを産んでいない隙を突いて、娘をロワール公爵家に送り込もうと狙う連中が、ダリアお義母様を陰日向なく扇動したのだ。
その結果、私はお義母様から、毎日のように孫を催促されるようになった。
ダリアお義母様は、二十代後半の私、フローラの全身を舐めるように眺め渡して、
「私が貴女の年齢ときは、もう息子のダザイを孕っていたわよ。
女として、恥ずかしくないの?」
と、小言を言う。
細かい嫌がらせをされる、地獄のような日々が始まった。
安産祈願のために教会へ行っただの、赤ちゃん用の衣服や小さい靴を買ってきただの、お馬さんの乗り物の玩具まで買っておいただの、と細かいプレッシャーをかけてくる。
孫を迎える準備は、万端、整っている、というわけだ。
初めのうちは、夫ダザイと二人で笑ったものだった。
「よほど孫の顔が見たいとみえる」
「ほんと、溜息が出ちゃうわ」
でも、次第に、笑っていられるレベルではなくなってきた。
同じ屋敷内で住んでいるから、お義母様とは、頻繁に顔を合わせる。
そして、会うたびに、「跡継ぎ、跡継ぎ、跡継ぎーー」。
このままでは、私が病んでしまう。
ちなみに、私、フローラは夫ダザイ・ロワールと結婚するまでは処女だった。
だから当然、妊娠したことはない。
が、妊婦の姿はよく見ていた。
実家フェネオン子爵家が診療所を営んでいる関係上、私もよく手伝いに駆り出されたから。
出産直後、妊婦だった人がお母さんになって、穏やかな表情になったのを見ると、私もホッとしたものだった。
言うまでもなく、私だって、子供が欲しい。
でも、都合良く妊娠できるかどうかは、わからない。
それに、お義母様や一門の人たちが望む男児が得られるとも限らない。
女の子が産まれるかもしれないし、そもそも妊娠できないかもしれない。
実際、夫ダザイは性行為について、結構、淡白で、私以上に、お義母様からの「孫産め」アピールにウンザリしていた。
「孫産め」アピールをされて、げんなりする私を、夫ダザイは笑い飛ばしたものだった。
「放っておけ。
母上は他にやることないから、騒いでいるだけだ」と。
ちなみに、私の身体は、出産するのに問題はない、健康な身体だとわかっている。
婚前にも、そして最近でも度々、医官の父ネリー・フェネオンが、調べてくれている。
もっとも、お父様が言うには、
「これほど望んで子宝が得られないというのは、夫ダザイの側に問題があるかもしれない」
とのことだった。
とはいえ、「子供が授からないのは、女のせい」と考えるのが、世間の常識だ。
実際、お父様はそうした「世間の常識」を嘆いておられた。
が、かといって、私の夫ダザイ公爵に、
「子作りできる健康な身体か、調べさせてください」
とは提案できないという。
「フローラ旦那様は、公爵の身分だ。
それゆえ、不敬に当たるから、私には調べられないよ」と。
私だって馬鹿じゃない。
名家であるロワール公爵家に嫁ぐからには、当然、跡継ぎの出産を期待されるとわかっていた。
そう。ダリアお義母様が、いくら「孫産め」アピールをしても、欲しいのは「孫」ではなく、「跡取り」なのだ。
お義母様は、男児の出産をのみを切望していた。
だから、義母様が勝手に買って寄越す衣服も靴も玩具も、すべて男の子用ばかり。
とはいえ、そんなお義母様を責めることはできない。
女の子よりも、男の子の出産を願うのは、我が王国では当然のことだったから。
実家が営む診療所で、産まれた子供が女の子だったとき、現場が、お通夜みたいに鎮まりかえってしまったことが、何度もあった。
赤ん坊の泣き声ばかりが、虚ろな空間に響き渡っていたのが、印象的だった。
下級貴族の家ですら、男児を待望するのだ。
まして名門公爵家ともなると、嫁いで来たからには、お世継ぎを産むのが使命ともいえる。
夫ダザイも同僚や親戚から色々言われているみたいだ。
周囲から孫催促ばかり受けて苛立ち、そのイライラを私にぶつけてくるようになった。
「母上に顔を合わせたくない」
と言って、夫が、お義母様が就寝する時刻まで帰って来なくなった。
聖日ですら、教会でお祈りを済ませた後、街中へと遊びに出かけるようになる。
結局、夫ダザイは、私とも顔を合わせなくなって、会話もなくなってしまった。
もちろん、その間は、私、フローラが、ダリアお義母様のお相手をするばかり。
この頃には、険悪な雰囲気が、二人の間に漂っていた。
「子供を産めないような嫁はハズレだわ」
とまで言って、手のひら返しをするお義母様に、正直、どういう言葉を返したら良いのか、わからない。
そうした冷戦状態(?)を一ヶ月ほど過ごした頃、ついに、お義母様までが街へと外出するようになってしまった。
結果、私、フローラ一人、お屋敷に取り残される格好になった。
なのに、正直、私はホッとしていた。
あんな緊張状態の中で生活していたら、ストレスが溜まる一方だ。
それでは、夫と健康な子作りすら望めない。
ダリアお義母様さえいなければ、夫の時間を取り戻すことができるーーそう信じた。
だが、お義母様が不在になっても、夫は帰ってこない。
王宮の仕事場には毎朝、向かってるようだけど(内務省の代表者という触れ込みだけど、ほんとは形ばかりの役職とのこと)家には帰ってこない。
朝帰りすらない。
このままでは家庭崩壊だ。
さすがにマズい。
他所から来た嫁だけが在宅し、名門公爵家を守るーーという不自然な状態が、いつまで続くか、懸念し始めた。
そんな矢先、ついに夫ダザイが定時に帰って来てくれた。
ただし、亜麻色の髪をなびかせた若い娘連れで。
夫は若い娘と腕を組みながら、にこやかに微笑んだ。
「ああ、フローラ。
今日から、この娘ーーアンも我が家に住まわせるから、よろしく。
でも、君は何も気にしなくて良いよ。
子作りは彼女とするんで、君は今まで通りで良いんだよ」
夫ダザイ・ロワール公爵は長きに渡って不在の間中、夜遊びついでに、第二夫人ーー側室探しをしていたのだ。
私、フローラ公爵夫人は、呆気に取られつつも、
「そんな。
ここ最近、私たちは顔も合わせず、寝床も別々で、子作りの努力をしてこなかった。
側室を設ける前に、夫婦二人で努力させて!」
と訴えたが、夫ダザイは首を横に振る。
「君は母上が連れて来た女性だから、公爵家の正室には相応しいといえる。
だけど、正直、僕の好みじゃないんだ。
僕はもっと肉付きが良い女が好きなんだ」
そして、ダリアお義母様は、若い娘ーーアン・トロワ男爵令嬢を、当たり前のように迎え入れる。
すでに執事や侍女に手配して、彼女用の部屋まで用意していた。
「ごめんなさいね。
もう何度も彼女とはお茶をご一緒してるのよ。
息子が引き合わせてくれてね」
だから、今朝から上機嫌で、執事や侍女を使い回していたのか。
アン・トロワは、我が物顔で、お屋敷を彷徨き回る。
亜麻色の髪をなびかせ、褐色の瞳をキラキラ輝かせて。
そして、私、フローラを階段の上から眺め下ろして扇子を開く。
「あら、奥方様。
随分とご不満なご様子ですけど、私、こう見えても、ダザイ公爵様とは古い顔馴染みですのよ。
ロワール公爵家一門トロワ男爵家の娘なんです。
でも、男爵家でしょ?
到底、名門ロワール公爵家には潜り込めないと思っていたの。
そしたら、子爵の爵号を持つとはいえ、実質平民出の貴女が、公爵夫人に収まったじゃない?
だったら、私、アンが、ダザイ公爵閣下と子作りに励むのも問題ない、と一門の方々が援助してくれたのよ」
アンと名乗る女性の隣で、ダリアお義母様が黒い扇子を広げて立っていた。
「ほんと、持つべきものは、真にロワール公爵家の繁栄を考えてくれる一門の方々よねえ。
これまで、私の一存で決めてきたことを、反省させられたわ」
その日から、ますます私、フローラは肩身が狭い思いをするようになってしまった。
アンという側室が、我が物顔でお屋敷を闊歩し始めたのだ
昼は食堂で、ダリアお義母様と、これ見よがしにお茶をする。
夜は帰宅後の夫ダザイと席を並べて食事を摂って、イチャイチャを見せつけてくる。
食後は、夫と腕を組んで寝室へと向かい、その様子をお義母様が目を細めて眺める。
一方で、私、フローラ・ロワール公爵夫人は、自室へと一人で戻るのみ。
そうした生活が何日も続くようになれば、さすがに落ち込む。
眠れない夜を過ごすようになった。
それから一年後ーー。
ついにロワール公爵家に跡継ぎが誕生する。
待望の男児が生まれ、ジャックと名付けられた。
母親は、もちろん、私ではなかった。
それから本格的な地獄が始まった。
側室アン・トロワに子供ができ、跡継ぎを産んだら、アンを正室にする約束を、夫とお義母様は交わしていたらしい。
ロワール公爵家一門を招いた〈跡継ぎ生誕祝賀パーティー〉の席上で、ついにアンが公然とロワール公爵夫人と名乗ったという(私、フローラは、そのパーティーに招かれなかったので、侍女たちの噂話によって知った)。
侍女も執事も皆、アンを持ち上げ始め、アンの個室として、私の部屋よりも陽当たりの良い部屋があてがわれた。
私の居場所はますますなくなり、皆と離れて個室で食事を摂るようになって半年ほどが経っていたが、その個室に、わざわざダリアお義母様が来訪してきて、扇子を広げて笑う。
「あら、フローラさん。
どうして、このお屋敷から出て行かないの?
石女が、いつまでこのお屋敷にいるのかしら?」
その日は、お義母様の後ろに、夫ダザイも立っていた。
顔が赤いので、酔っ払っているのだろう。
ダザイは腕を組んで、冷たく言い放つ。
「フローラは、子供を産まないからいけないのだ。
跡取りを産めない女は、世間が許さない」
私、フローラは、カッとなって叫んだ。
「世間じゃなくて、貴方が許さないんでしょ!?」
子供を産まなかった女は、そのお屋敷やお屋敷の人たちからは、不要でいらない人間と見做されるようだ。
少なくとも、それがロワール公爵家の流儀らしい。
何のための結婚だったのか、今となってはすっかりわからなくなってしまったが、もはやこの屋敷には居場所がないようだ。
幸い、私用の荷物は少ないので、まとめたらバック二つに収まった。
暑い夏の最中、そのバックを手にして、私は追い出されるようにしてお屋敷を出た。
私、フローラは酷い仕打ちをされて、ロワール公爵邸を後にした。
が、何の未練もない。
不思議なほど、気分がスッキリしていた。
私を要らない人間扱いした元家族や執事、侍女にも、何の未練もなかった。
私は、私だけの人生を新しく生きようと思った。
かといって、今更、実家フェネオン子爵家に帰れない。
最近、身体を壊しがちなお父様に代わって、お兄様が診療所を運営しているから、そのまま入り込んで、昔のように働き、兄夫婦にこき使われるのも悪くないと思った。
が、「外聞が悪い」と兄ソロー・フェネオンに申し訳なさそうに言われた。
「ロワール公爵家に遠慮して、お客が来なくなると困る」と。
名家に嫁いだ弊害が、ここでも見られるようだった。
私は首を振り、溜息をついた。
「仕方ない。修道院にでも入るしかないかぁ……」
私は子供の頃、通っていた地元教会に、久しぶりに顔を出すことにした。
そこで、思いもしなかった、出会いが待っているとも知らずにーー。
翌日、実家から向かった故郷の教会で、思わぬ出会いがあった。
司教様は不在だったが、お御堂は一般信徒に向けて常時、開放されている。
門を開けると、神像を前に跪いて、真剣に祈っていた人がいた。
敬虔な信者さんだなぁ、と思い、釣られて両手を合わせて祈った(自分は椅子に座っていたけど)。
これから先、どうなっていくのかわからない。
でも、修道院に行ったとしても、当然、そこには人間社会があるはずだ。
そうなると、きっと軋轢もあるはずだから、とりあえずは無難にやり過ごして、穏やかな日常生活を送れるようになりますように、と祈った。
ちょっと目をつむってから目を開けると、一人の若い男性が目の前に立っていて、ニコニコと笑みを浮かべていた。
服装からわかった。
先ほど、跪いて祈っていた人だ。
そんな人から、何を勘違いされたのか、
「熱心な信徒さんだね。
君もバルク地区について祈ってくれてたのかい?」
と問われた。
「バルク地区?」
私は反問しつつ、思い出した。
ああ、そういえば、最近、地震があって、住居が崩壊し、多くの作物が駄目になって、大変になっていると噂になっていた辺境の地だ。
男性は私に手を差し伸べた。
「神様に助け手を求めたら、君がお御堂に入ってきた。
失礼だが、君はそれなりの身分の女性ながら、暇を貰って、ここへとやって来た、違うかい?」
「ええ。そうね。
どうしてわかったのかしら?」
「そりゃあ、そんな大きなバックを二つも抱えてるんじゃね。
なんだか事情があるんだろうけど、バルクでは困ってる人たちがいるんだ。
助けたいと思わないかい?」
「いえ……私には人助けをするようなゆとりはありません。
今日の夜の寝床すら確保されてないのでーーあ、誤解しないでくださいね。
私、身体を売るような女じゃありませんから!」
「ははは、わかりますよ。
ーーそれより心外だなぁ。
僕、そんなふうに、女性を物色してるように見えます?」
「男性は皆、女性を性的に品定めするクセがおありなので」
「ははは。悪かったね。
でも、この教会で寝泊まりするってのも不用心だし、これから修道院を紹介してもらおうにも、司教さんはすでに出払ってる。
司教さんもバルクに赴いているんだ。
だからさ、君も行こうよ、災害の地へ。
慰問に行こう!
寝泊まりする簡易施設もあるっていうからさ、当座の生活基盤にできるだろ?」
「そうね。たしかに渡りに船かもしれないわね。
貴方、お名前は?」
「あ、失敬。僕の名はエミール」
家名を言わないところをみると、平民かも。
「君は?」
と問い返してきたから、私は「フローラ・フェネオン」と旧姓で名乗った。
すると、若者は手を叩いて、歓声をあげた。
「こいつは運が良い。
王宮付き医官のフェネオン子爵家のご令嬢か!
二日前、被災地に持っていく薬草を、貴女の家から、幾らか買い揃えたところなんだ。
だったら、君、医学や薬学の知識はあるよね?」
「ええ。学生の頃から診療所でお父様を手伝っていたわ」
「そいつは貴重な戦力になる。
ぜひ、バルクへ行こう!
地震や火災などの災害があったんだ。
怪我をした人も、体調を崩した人も大勢いる。
きっと、君は役に立つよ!」
名誉爵位とはいえ、子爵家の令嬢と知って、なお、このような気軽な口の利き方をするーーということは、彼はそれなりの身分の者なのだろう。
実際、服装などの身なりは良い。
裕福な商人の出なのか。
正直、そこまで信用できるのか、わからない。
身を預けて大丈夫かどうかも判然としない。
が、とにかく、今の私には夕ご飯の確保すら怪しい状況だ。
素直に若者の勧めに従い、彼のバルク地区行きに同行することにした。
それから一週間ーー。
馬車に揺られて、私はこの若者と、彼に従う人たちとともに、被災地に辿り着いた。
バルクの街は悲惨な有様だった。
建物のほとんどが倒壊し、生き残った人々は皆、テント暮らしをしていた。
それでもバルクを治める領主家がご立派で、私財をも投げ打って、領民に食糧の手配をしていた。
だが、物資の流通などは混乱しており、掻き集めた食糧の出来がバラバラだった。
それだけではない。
毒キノコをはじめとした、毒を持つ食べ物すら混在していた。
だから、私は慌てて食糧を詰め込んだザルや袋に手を突っ込んで、毒物の排除試みた。
それを見て、若者エミールは、
「君は毒物の目利きができるのか?」
と問うので、私は手を動かしながら、
「医官の娘ですから」
と素っ気なく応答する。
すると、またもや彼は両手を叩いて歓声をあげ、
「そいつは、ありがたい!
これから領主様にお願いして、被災者のための診療所を開いてもらうつもりなんだ。
そこで働いてくれよ。
もちろん、その食糧の選別も、その診療所でやるんだ」
「何処で?」
「領主家の別荘さ!」
海が見渡せる、小高い丘の上に、その別荘があった。
そんな建物を借りられるということは、バルク領主の一門に連なる者なんだろう。
実際、彼は精力的に救助活動をしていた。
領主の代わりになって大勢の領民を動員し、テントの手配、行方不明者の捜索、食糧の配布を行う。
私は、食糧の選別と、被災者の体調管理、怪我人や病人に簡単な治療を施した。
私は無我夢中で働いた。
基本的には薬草を採取し、煎じて薬湯をつくる。
それを飲んでもらって、寒がっている人たちを温める。
身体を暖めて落ち着かせるのだ。
被災者が長蛇の列を成した。
目が回るような忙しさだった。
あっという間に夜になった。
食事を摂って一息つき、診療所となった別荘の庭先で、ボーッと月を眺めていた。
すると、エミールが暖かいスープを持ってやって来た。
「ここは子供の頃、よく遊んだところなんだ。
ここから見える景色が、僕は好きだった」
「そうなんだ」
やはり領主家の縁者らしい。
地元愛豊かで、好感が持てる青年だ。
彼は赤い髪を掻き分けてから、私に手を差し伸べた。
「今現在、このバルクの領主様は、王都に出向いて金策をしている。
だから、領主不在なんだ。
でも、もともと領主夫人だったお祖母様がいる。
八十歳を超えるけど、矍鑠としておられる。
紹介するよ」
領主館は、より高い位置にある、砦のような建物だった。
青いとんがり帽子のような屋根。
周りを城壁が取り囲む。
高地にあったからか、地震の影響はほとんど見られなかった。
が、この領主館から海辺の方を見下ろせば、悲惨な災害状況が手に取るようにわかる。
お祖母さんが私を歓迎しながらも、海の方を窓から見下ろして吐息をついた。
「海岸線が随分と迫って来てねぇ。
長く生きてきたけど、こんな地震は初めてだよ。
本来、あの更地になってるところには、所狭しと家が建っていてね。
そこから投げ出された人々が皆、暮らせていけるようにするのが、これからの私の仕事さね」
現在、災害地でボランティアの指揮をしている元領主夫人は、赤い髪のおばあさんだった。
ガーネット・テンプルと紹介された。
私でも知っている名前だ。
「たしか、テンプル侯爵家といえば、娘さんが隣国の王家に嫁いだ……」
テンプル侯爵家のご令嬢は、隣国のフォション王のもとに嫁いでいる。
ということはーー。
私は改めて若者エミールを見る。
彼は照れたように赤髪を掻きむしる。
「なんだか、気恥ずかしいけど、僕はこれでもフォション王国の王子なんだ。
このドリヴァル王国の学園に留学中に、お祖母様の領地で地震が起こってね。
授業を放り出して救援に来た、というわけなんだ」
隣国の王子エミール・フォションは、我がドリヴァル王国の学園に留学していた。
その最中に、亡き母の故郷で地震が発生したと耳にした。
だから、ボランティアに乗り出した、ということらしい。
ガーネットお祖母さんは、孫を見て、目を細める。
「でも、もう一週間もすれば、エミールは王都の学園に帰らなければならないよ。
留学中の身なんですからね。
あとはおまえの叔父さんーー私の息子のバルク領主に頑張ってもらうさ」
ガーネット・テンプルは、私、フローラに顔を向けて、優しく微笑む。
「ということで、悪いけど、フローラのお嬢さん。
ちょうど、侍女の成り手がいなかったの。
お願いできるかしら」
「良いんですか、私で」
「ええ。貴女の煎じる薬湯は評判よ。
私も飲んでみたいの。
それに、孫のエミールが王都に行ってしまったうえに、貴女までいなくなったら、診療所は機能しなくなってしまうわ。
いろいろとやることだらけですけど、お願いできるかしら。
給金はそれなりに弾むわ。
もっとも、領主が上手く金策できれば、の話ですけど」
「喜んで。ぜひ、お願いします」
私が頭を下げると、横合いから、
「良かったじゃないか。
あとは頼むよ、フローラ」
と、若い男性の声が響いてくる。
私は、声の主、エミール王子の方に向き直った。
「お祖母様のお屋敷と診療所を見守る傍ら、出来れば、定期的に、炊き出しもやっておくわ。
それに、私、正式な医師免状は持ってないけど、簡単な治療もさせてもらう。
怪我人や病人が随分、多いんですもの」
王子は肩をすくめて苦笑いする。
「構うものか。
平民相手の診療所に、免状持ちがどれだけいることやら」
こうして、私、フローラは、ガーネット元領主夫人のお屋敷で奉公することになった。
同時に診療所で診察を行い、被災者に向けての炊き出しに精を出した。
また、そうした活動の傍ら、時間を取っては勉強し、医師免状の取得も果たした。
もとより薬草の知識が豊富だったために、筆記試験は楽にパスでき、あと医師になるのに必要とされたのは、実地経験のみだった。
が、それもバルク地区での診療活動実績によって条件を満たし、翌年、すぐに医師免状を取得できたのだった。
それから三年後ーー。
私、フローラは、留学期間を終えたエミール王子からプロポーズを受けた。
このままバルクの診療所で診察し続けて、一人の医師として働こうと思っていたから、思わぬ出来事だった。
エミール王子に本国フォションへの帰還命令が出ており、一緒に連れて行きたい、ということだった。
彼は王宮で、外交上重要な役職に就くことになっているそうだ。
ガーネット・テンプルから念を押される。
「私の大切な侍女を奪って行くのだから、幸せにしなきゃ、ダメよ」
エミール王子は、片膝立ちになって答えた。
「はい、お祖母様。誓って」
エミールは私に向かって、照れ笑い。
「僕は第三王子。
王位を継ぐつもりはないけど、一緒に来てくれるかい?」
「そっちの方が、嬉しいわ」
私、フローラは明るい声をあげる。
この三年の間、エミールは長期休暇の機会のたびにバルクに顔を出し、二人で親睦を深めた。
互いに目まぐるしく働いたうえで、夜を二人で静かに過ごす仲だった。
元夫ダザイ・ロワール公爵からは、ついぞ感じることができなかった安らぎと信頼を、エミールから得ていた。
いつの間にか、頬に涙が伝っていて、自分でも驚いた。
そして、隣国の第三王子エミール・フォションが、ドリヴァル王国での留学を終えて、母国に帰国するときがやって来た。
そのため、ドリヴァル王国の王宮で盛大な送別会が開かれた。
このパーティーは同時に、震災で被害にあったバルク地区の復興に力を注いだエミールを讃えつつ、復興資金を集めるイベントも兼ねていた。
そのパーティー会場で、私は、元夫ダザイと元義母ダリア、そして元側室アンに遭遇した。
あの時の赤ん坊ジャックはもう三歳になり、落ち着きなく周囲をキョロキョロと見回している。
元義母ダリアは、そんな「跡取り」の様子を目を細めて見て、私には見向きもしない。
一方で、元夫ダザイ公爵と、その妻アンが、私がパーティーの席上でゆったりとしたドレスを身にまとい、軽食を楽しんでいることに目敏く気がついた。
「これはこれは。久しぶりだな、フローラ。
無事息災のようで何より。
で、なんでおまえが、こんなめでたい席にいるんだ?」
元夫ダザイ・ロワール公爵は、わざとらしくアンを自らの胸元に寄せ、恋人手つなぎをしながら近寄ってきた。
私は、王子のお祖母様のお屋敷で、侍女勤めをしていたと答えたら、鼻で笑われた。
「どこに行ったのかと思ったら、隣国の王子の世話になってたとはな。
相変わらず、抜け目がない」
相変わらず、横柄な口の利き方をするものだ、と懐かしさすら感じる。
やはて、元夫の視線が、私のお腹に向けられた。
そして、
「なんだ。太ったのか?」
と言われたから、私、フローラは微笑みを浮かべた。
「妊娠三ヶ月です」
その答えを耳にして、元夫ダザイと妻のアンは驚く。
「ほんとうかよ!?」
「相手はどなた?」
不躾ともいえる問いかけに、私ではなく、カレが答えた。
「僕だよ」
と言って第三王子エミール・フォションが、私の腕に手を滑り込ませる。
「このパーティーは、僕だけじゃなく、フローラの送別会でもあるんだよ。
彼女を僕の国に招待するつもりだからね」
エミールが私と腕を絡ませながら、胸を張る。
そんな彼の姿を目にして、我がドリヴァル王国の王太子アクロス・ドリヴァルが、金色の瞳を輝かせて歓声をあげた。
「おお、それはめでたいな。
二重のサプライズだ!」
アクロス王太子が手を叩くと、釣られたかのように、周囲から拍手が湧き起こった。
私は頬を赤らめつつも、喜びに唇を咬む。
本来なら、私なんかには目も止めないような、王太子様をはじめとした貴人たちが、私に拍手を送ってくれるのだ。
会場の隅で縮こまっていた、私の実家フェネオン家の、ネリーお父様や、ソローお兄様も、目を丸くして驚いていた。
ようやく、皆に祝福される結婚、そして妊娠ができた、という実感があった。
我が国の王子アクロス・ドリヴァルは、私の新たな夫エミール・フォションと親友の間柄だそうだ。
夫エミールが、今やロワール公爵夫人となったアンに、声をかける。
「おや、君は?」
エミール王子の顔を見た途端、アンは扇子で顔を隠す。
でも、夫エミールは、視線を外さない。
「君はたしか、ホークの恋人のアン嬢じゃなかったかな?
ホークとは結婚しなかったのか?」
アンは口籠もって、モゴモゴしている。
「なに? エミール殿下、アンを知ってるの?」
意外な取り合わせに驚いて、私が尋ねると、エミールは顔を寄せてささやいた。
「ああ。僕の友人と付き合っていたはずなんだ。
酒場で何度も顔を合わせた」
エミールによると、じつは、アンは騎士ホーク・クリフトと付き合っていたそうだ。
騎士爵ながら、ホークは、留学生だった夫エミールと学友だった。
ホークのカノジョとして、アンも何度か酒場で一緒に飲んだーーということだ。
エミールは首をかしげた。
「でも、おかしいな。
フローラがロワール公爵家から追い出されたのは三年も前のこと。
なのに、つい先週にも、ホークと飲んだとき、彼女は酒の席にいた。
ホークと仲良く身を寄せ合って、エールを飲んでーー。
やっぱり、今でも、ホークと付き合ってるんじゃ……」
エミールの発言を聞いて、私は思った。
アンはロワール公爵夫人に収まった後も、以前から付き合っていた騎士の男と逢引きを重ねていたのだろう、と。
騎士爵のような下級貴族の生活空域は、ダザイ公爵のような上級貴族のそれとは、時間も場所も異なる。
だから、アンは、理由を設けて外出し、オトコと密会し続けても、夫のダザイにバレないと、たかを括ってたのだ。
ところが、我が国の身分差に頓着しない留学生王子エミールが、不倫相手の騎士と気安く痛飲する仲だとは思いもしなかった。
まさか、普段、騎士ホークと逢引きするときの酒飲み仲間が、王宮で送別会を開かれるほどの身分とは!
アンは背後から、夫ダザイの冷たい視線が向けられていることを感じた。
ダリアお義母様も、つい先程までは息子のジャックを見て目を細めていたけど、今ではこちらを睨み付けている。
アンは顔を真っ赤にして、
「ち、違います!
ホークとは、もうとっくに別れたんです!」
と、ヒステリックに声を上げた。
目の前の見知った女性ーーアンが、じつは愛するフローラを苦しめた、ロワール公爵家の後妻だと知って、エミールはさらに追い込むことにした。
「じゃあ、たしかめてみよう。
おーーい!」
エミールがスカーフを手にしてブンブン振り回す。
すると、会場の壁際から、軽い軍装を身にまとった、金髪、碧眼の偉丈夫が進み出てきた。
騎士ホーク・クリフトが姿を現したのだ。
彼の出現に、アン・ロワール公爵夫人が慌てる。
「ど、どうして、騎士爵の貴方がーー?
王宮でのパーティーは、上位貴族しか参加できないはず」
エミールが苦笑する。
「僕の送別会だからね。
同じ学科の友人ーー何より気兼ねない飲み仲間として、僕が招待していたんだよ」
ダザイ・ロワール公爵、そしてダリアお義母様、さらには大勢の高位貴族たちの注目が集まる中、アン・ロワール公爵夫人は、騎士ホーク・クリフトと正面から向かい合う。
アンはうわずった声を出す。
「あ、貴方とは、別れたはずよ。
ね、ホーク!」
「……」
騎士ホークは、碧色の瞳に哀しみの色を湛えたまま、答えない。
だがこのとき、アン公爵夫人のスカートの裾を握り締める男の子ジャックに目を止めた、その場にいたすべての人々が息を呑んだ。
ロワール公爵家の「跡取り」である三歳児ジャックが、騎士と同じ金髪の巻毛だった。
しかも、その顔立ちは、目の前にいる騎士ホーク・クリフトとそっくりだったのだ。
思わず、騎士ホークが、
「あの時の子かーー?」
と、口走ってしまうほどに。
それに比して、アンの夫、ジャックの「父親」であるはずの、ダザイ・ロワール公爵は黒髪に褐色の瞳をしていて、顔立ちも似ても似つかないーー。
アン・ロワール公爵夫人は声を荒らげて、
「違います!
この子は、ダザイ・ロワール公爵の子です。
貴方の子じゃありません!」
と大声を上げたものだから、場内にいた皆は、いっせいに三歳児と「父親」ダザイとを交互に見比べた。
たしかにダザイ・ロワール公爵の顔つきも髪の色も、何もかもが、三歳の男の子ジャックとは、まるで似ても似つかない。
その一方で、騎士の男ホーク・クリフトとそっくりだった。
私、フローラは最近、医師免状を取得するために勉強した際に仕入れた知識を口にした。
「黒髪と亜麻色の髪の両親から生まれた子供が金髪になることは、遺伝的にあり得ないそうですよ。
もっとも、何世代か前のご先祖に金髪の方がおられれば別ですけど……」
私、フローラは、ロワール公爵夫人だった折に、代々のロワール公爵家当主の肖像画を義母によって見せられたが、金髪碧眼の男性は一人もいなかった。
代々の奥方にも、いなかった気がする。
周囲から疑惑の目を向けられるアンから、ふと視線を外すと、彼女の背後で、元義母ダリア・ロワールがブルブルと震えて、膝から崩れ落ちていた。
元夫のダザイ公爵が、「母上、お気をたしかに!」と声をかける。
すると、元義母ダリアは、なぜか私、フローラの方を睨み付けて、
「早く帰りましょう。
こういったところには、一秒だって、いられないわ!」
と悲痛な声をあげた。
元夫ダザイ・ロワール公爵も状況を察して、アン公爵夫人に、
「帰るぞ。おい!」
と声をかけ、走り回ってた息子ジャックの首根っこを掴み取り、引きずるようにして、パーティー会場から外へと出て行った。
隣国王子エミール・フォションの送別会からの帰宅後ーー。
ドリヴァル王国きっての名門ロワール公爵家ーーその名家の血統維持をこそ、使命と思っていたダリア・ロワールは激発した。
即座にアンの両親、及び騎士ホークの両親を館に呼びつけた。
が、どちらも、体調不良や忌引きを理由に、呼び出しには応じなかった。
つい先程、パーティー会場で顔を合わせていたにも関わらず、である。
憤懣やる方ないダリアは、さらに一晩かけて、ロワール公爵家の一族郎党に向けて手紙を書きまくり、いったい誰が、トロワ男爵家の娘アンをロワール公爵夫人の後釜に据えようと画策したのかを究明するように命じた。
そして、その陰謀を働いたと明らかになった者を一族から破門する、必ず家を潰す、だから密告を奨励するなどと、物騒なことを書き殴った。
自らがフローラを追い出すために乗せられていながら、ダリアは、他者に責任を押し付けたくて仕方なかった。
致命的なミスを犯したがゆえに、それを認めたくはなかったのだ。
息子ダザイの子だと思っていた「跡継ぎ」が、誰が見ても他所の種で出来たと思われるーーしかもその種が、貴族の最下層である、騎士爵家のものだと、貴族社会で知れ渡ってしまった。
名門貴族家の元当主夫人にとって、これ以上の屈辱はなかった。
その日の夜から、ダリア・ロワールは扇子で、アンを打ち据えた。
「この恥知らずが!
それで栄光あるロワール公爵家の奥方といえるのか!」
毎晩、ダリアが疲れ切って扇子を振るえなくなるまで、打ち据えられていたが、三日目の晩になると、さすがに全身に生傷が絶えなくなったアンが反抗した。
アンはキッと義母を睨み返す。
「ふん、なにが栄光のロワール公爵家よ!
お義母様が、そんなくだらない見栄にこだわるから、私がこのロワール公爵家に来てやったんじゃない。
そうよ。私が夫ダザイから頼まれたのは、何が何でも子供を宿せってことだった。
でも、何度やっても、いつまで経っても、子供が出来ない。
こいつは、どう考えても、ダザイの側に問題があるとしか思えなかったわ。
でも、アンタたち母子が、どうしても子供が欲しいって言うから、他所の種を仕込んだのよ。
そうしたら、あっという間に妊娠したの。
あははは。
滑稽よね。
これでロワール公爵家の跡取りが出来たんだから、満足でしょ!
なによ。
パーティー会場で暴露されるまでは、あれほどデレデレになって、ジャックを可愛がってたくせに!」
ダリアは顔を真っ赤にして、全身を震わせる。
対して、肝心のロワール公爵家の当主ダザイの方は、顔を青くさせたまま、疲れ切った表情でソファーに沈み込んでいた。
例のパーティーが終わってから連日、彼は様々な部署に駆けずり回っていた。
形ばかりとはいえ、王宮の内務省で代表を務めていたので、部下を使って、ロワール公爵家にとって不名誉な噂の揉み消しを狙った。
だが、人の口に戸は立てられず、噂はあっという間に下級貴族ばかりか、街中の民衆にまで伝わるのを止めることはできなかった。
そればかりか、逆に、ドリヴァル王家から、前妻フローラを追い出し、後妻アンを迎えた経緯についての詳細な説明を要求され(隣国のフォション王家に、自国の筆頭貴族が行った醜聞が知れるのを止めたいらしい)、ダザイ公爵は何も答えずに、そのまま辞表を提出し、内務省から退いてしまった。
肝心の「跡取り」が、不義密通によって出来た子供だと露見してから、わずか三日後のことである。
ダザイは、眼前で、展開する嫁姑のバトルを見遣って、力無くつぶやいた。
「もう無駄だ。
王家から見限られたうえに、母上が要らぬ手紙を書いたから、もう一族郎党は皆バラバラになって、集まれなくなった。
こうなっては建国以来の名門ロワール公爵家もお終いだ。
はははは。
ほんと、何をやってるんだろうな。
こんなことなら、フローラを追い出すんじゃなかった……」
息子の発言を受けて、ダリアは唇を咬んで押し黙る。
ロワール公爵家の母子が、ジッと後妻のアンを睨み付ける。
アンはテーブルをバン! と叩いた。
「うるさいわね。
だったら、出て行くわよ。
こんな腐った家なんか、私の方から見捨ててやる。
最後に馬車だけ借りるわね。
それじゃ!」
アンは亜麻色の髪を掻き分けると、踵を返し、颯爽と出て行った。
三歳児のジャックを置き去りにして。
ジャックにとって、母親がヒステリーを起こして立ち去る姿など見慣れていたので、キョトンとしたまま、母親の後姿を見送るだけだった。
ロワール公爵邸から手ぶら同然で逃げ出したアンにとって、行くべき場所は一つだ。
騎士ホーク・クリフトの許である。
だが、あのパーティーでの騒動以来、ホークと逢引きすること自体が至難の業になっていた。
ホークは独身で、騎士爵を継いでいるが、家には騎士団を引退した父と、彼に連れ添ってきた母も同居している。
だから、アンもホークの許に突撃するわけにもいかず、とりあえずは手紙を送ってから、王都の裏町にある、深夜も営業している酒場兼宿泊所に身を潜めた。
アンの手紙を受け取ったのは、ホークの両親だった。
息子は自室で謹慎中だったから、代わりに手紙を受け取ったのだ。
手紙の文面は見ないで息子に手渡したが、どんな内容が書いてあるのか、気が気ではなかった。
両親にとって、息子が晒した醜態は許し難いものだった。
あろうことか、名門ロワール公爵家の奥方と不義密通を働き、子まで成したという。
ロワール家側が息子ホークを訴えていないので、今のところは罪とされていないが、噂によれば、その子は息子と同じ金髪の巻毛で、瓜二つとのこと。
となれば、息子ホークが不義密通で訴えられることがなくとも、そのジャックという子がこれから成長していくに従って、問題が大きくなるのは火を見るより明らかだ。
すでに、名門貴族家の奥方に手を出した不届者ということで、息子ホークは騎士団から謹慎を言い渡されている。
息子が自室から顔を出し、地味な外出着に着替えて、出て行こうとする。
父親が「何が書いてあった?」と問うと、息子ホークは、「酒場で待つってさ」と答えた。
「心配しないでよ、父さん、母さん。
しっかり別れを伝えておくから。
もとより無理だったんだよ。
騎士爵の僕が彼女と付き合うってのが」
と、ホークは力無く笑った。
それからしばらくして、アンとホークは、待ち合わせの酒場で抱き合った。
いつも通い慣れた酒場で、店主をはじめ、顔見知りばかりだ。
だが、あのパーティーでの醜聞は、この酒場に通う酔客にまで伝わっており、人目について仕方がない。
とりあえずアンとホークの二人は酒場を裏口から出て、さらに裏道へと入った。
かなり遅い時刻で、裏道は人もまばらになっている。
薄暗い裏道となると、なおさら人気がなかった。
抱き合った二人は、双方、まるで異なる内容を口にした。
男のホークは、
「もう別れよう。それが貴女のためなのだから」
と言い、女のアンは、
「お願い。私を何処か遠いところに連れて行って。
もう私には貴方しかいないの。
貴方となら、どんなところでも頑張っていけるから」
とホークに駆け落ちを持ちかけた。
驚いて目を丸くするホークを、アンはキッと見詰める。
彼女は彼が別れを切り出すことぐらい、予想していた。
が、そうはさせない。
させたくない。
今のアンにとって、帰る場所は何処にもないのだ。
愛するホークの胸元以外には。
酒場の裏口から、この裏道へと誘導したのにも意味がある。
この裏道は、治安が悪いスラム街へと通じているが、同時に、誰にも見られないで、壁を脱けて街の外へ出る唯一のルートに繋がっているのだ。
アンはギュッとホークを力強く抱き締めて、
「あとは勇気を出して、二人でこの道をまっすぐ進むだけよ」
と、彼の耳元でささやいた。
情にほだされた若いホークは、アンを強く抱き締めて、何か、言葉を告げようとした。
が、その言葉が発せられることはなかった。
「ぐっ!?」
と、くぐもった呻き声が漏れ出ただけ。
アンを抱き締める力が急速に弱まり、膝をついて倒れ込む。
呆然とするアンの衣服には、べっとりと赤い血糊が付いていた。
騎士ホークが、胸元から血を噴き出して、地に伏した。
背中から剣を突き刺されたのだ。
アンの目の前には、倒れた愛人ホークの代わりに、夫のダザイ・ロワール公爵が立っていた。
ダザイ公爵は無表情なままに語った。
「嫌な予感がしたから、馬車の御者に、おまえの行先を訊いてきたんだ。
でも、その必要はなかった。
部下に調べさせて、この酒場で、おまえと金髪騎士が飲み過ごしてきたことは知っている。
そしたらどうだ。
やっぱり、金髪騎士と逢引きだよ。
そればかりか、駆け落ちまでーー。
案の定、俺を裏切っていたんだな」
アンは血溜まりの中で倒れ込む愛人に目を遣ってから、正面に立つ夫を睨み付けた。
「なによ。
貴方だって、元奥を裏切って、私と付き合ったくせに!」
そう叫んで殴りかかったが、あっさりと剣で胸を貫かれた。
「あ、あ……」
アンは胸元から鮮血を噴き出し、愛人の身体に折り重なるようにして倒れた。
そんな妻を見下ろしながら、ダザイはつぶやいた。
「俺が裏切るのは良いんだ。
でも、俺が裏切られるのは、我慢ならん」
血濡れた剣を布巾で拭いて、ダザイはヨロヨロとした足取りで、裏道を徘徊し始める。
以来、ダザイ・ロワール公爵は、裏町の売春宿に泊まりまくって、転々とするようになった。
ちなみに、妻が不義密通を働いた現場を押さえた場合、妻とその愛人もろともを、夫が殺しても、「無礼討ち」として、罪に問われない規定になっている。
とはいえ、妻が騎士ごときと駆け落ちしようとしていたこと、そして、肝心の「跡取り」が、その無礼討ちをした妻と愛人の子だと噂される不名誉に、ダザイは耐えられそうにない。
これ以上、ロワール公爵家の家名を貶めたくなかったので、進退に窮し、結局、酒浸りの日々を過ごすことになってしまったのだ。
賭け事や用心棒まがいの仕事を請け負いながら生活し、大勢の娼婦の許で寝泊まりしては、
「俺に子種がないなんて、信じられん。
おい、女ども、俺の子を孕め!」
と叫び続けた。
が、抱いた女たちの腹が膨らむことは、一向になかった。
結局、ダザイは、娼婦や酒場の男どもからしこたまお金を巻き上げられては酒に浸るばかりで、半月もすれば、すっかり貴族の風貌ではなくなってしまった。
一方、ロワール公爵邸では、当主のダザイ公爵が帰って来なくなっても、騒がしい日々が続いていた。
屋敷では、ジャックがキャアキャアと甲高い声を張り上げては、走り回っていた。
躾をする者がいないので、好き勝手に暴れていたのだ。
ジャックは家宝の陶器や銀食器を壊し、歴代の先祖が描かれた絵画を破り捨てる。
「祖母」のダリアは、最初のうちは「うるさい、静かにしな!」と「孫」のジャックを叱責していたが、昼寝していたとき、口の中に、泥を詰め込まれるという悪戯をされて、危うく死にかけて以降、叱りつける気力を無くした。
名門の地位から失墜し、当主も奥方も居なくなったロワール公爵家に寄り付く者はいなくなり、給金も十分に払えないので、碌でもない執事や侍女が数人居残るだけだった。
子供のジャックが、金髪を振り乱しながら、
「僕はここの跡取りだから、何をしても良いんだ!」
と喚いて、カーテンを引き裂いたり、壁に落書きをする。
だが、その行為を止める者は誰もいなかった。
そして、アンとダザイの、ロワール公爵夫妻が失踪してから、およそ二年後ーー。
今や隣国の王族となったフローラ・フォションが、いきなりロワール公爵邸を訪ねてきた。
普段は、項垂れてばかりの老婆ダリアは、発狂したかの如く、
「なんで、貴女が!?」
と、甲高い声をあげた。
私、フローラは大勢の護衛と付人を従えて、ニッコリと微笑んだ。
「近頃、お義母様が眠れない、と執事の方から伺いまして。
里帰りのついでに、お寄りしました。
これは、私が薬草から煎じた薬湯です。
これを飲むと、リラックスできると思いますよ」
夫のエミールと一緒にバルド地区の復興状況の視察と、義祖母ガーネット・テンプルにご挨拶、それが終わってから、自分の実家に帰省するついでに、お見舞いに来てあげた。
お父様ネリー・フェネオンから、ロワール公爵家の衰亡ぶりを聞かされたうえに、公爵邸の執事が訪れ、ダリア用の頭痛薬を何度も購入していたから、立ち寄ることにしたのだ。
すると、私、フローラの目の前を、挨拶ひとつすることもなく、男の子が金髪をなびかせて横切って奇声をあげていた。
目を細める。
「元気な跡取りさんで、良かったじゃないですか。
これでロワール公爵家も安泰ですわね。
あのお嫁さんだったアンに、随分、似ていますこと」
五歳になったジャックの暴れっぷりは止まるところを知らない。
珍しく客が来たから、興奮しているのだろう。
窓ガラスを何枚も破り、止めに入った侍女の髪の毛を引っ張って悦に入っていた。
末恐ろしい子供である。
私、フローラは周囲を見渡して、元義母のダリアに尋ねた。
「ダザイ公爵閣下は?
相変わらず、顔を出さないんですの?」
ロワール公爵家の当主が帰宅しなくなって、もうすでに二年ほど経過している。
同時に、妻であったアンも、密通相手の騎士ホークも行方不明になっているため、アンとホークが愛する者同士、駆け落ちして異国に逃げ延びたか、あるいは彼ら二人をダザイ公爵が無礼討ちしたか、そのいずれかだろう、と人々は噂していた。
ダザイ公爵の辞表は受理されているので、王宮に出仕しなくとも問題ないし、今のところは領地からの収入で、ダリアとジャックの生活を維持することはできている。
が、今後、名門ロワール公爵家がどうなるかは、不透明だった。
ダリアは、侍女に命じて、フローラに茶を用意させる。
そして、喉を震わせた。
「庭をご覧になりました?
驚いたでしょう?
すっかり荒れ果ててしまって。
館の中も、壁は汚れ、カーテンは破かれ、壊されるので貴重品や芸術品は飾れず、ご覧のようなありさまでーー。
さぞ、愉快でしょうね、貴女は。
このロワール家を見捨てて、今では隣国の王族に連なって。
そうそう、お子さんは、お元気?
男の子なんですってね。
まだ幼いから、本国で面倒を見てもらってるのかしら。
私があやしてあげたかった。
かつてプレゼントした衣服や靴、玩具を渡してあげて。
ほんとうに、あの頃は、悪気はなかったのよ。
貴女もダザイと仲良しでーー一緒になって、孫を切望する私を笑ってた……。
私をーー息子を怨まないでちょうだい。
私たちも、あのアンに騙されたんですから」
私、フローラは一口紅茶を含んでから、居住まいを正した。
「いえ、衣服も玩具も結構です。
でも、私は感謝しておりますのよ、ロワール公爵家の方々には。
ダザイは酷い夫でしたけど、おかげで、私はエミール殿下と出逢うことができました。
それに、ダリアお義母様ーー貴女にも感謝しております。
貴女が私を、この屋敷から追い出してくださって、ありがとうございました」
私の返答を耳にして、ダリアはテーブルでうつむいて、ううう、と呻き声をあげた。
「どうして、こんなことにーー。
なんで、こんな他所の種の子を!」
ダリアお義母様は、さぞ悔しかろう。
それでも、家がお取り潰しになりたくないなら、この子を育て、「跡継ぎ」にするしかない。
誰もが騎士ホークの種だと思う人物を、ロワール公爵家の当主に据えるしかない。
ダリア自身の血も、息子のダザイの血も、まったく受け継いでいないジャックが、建国以来の名門貴族家の跡継ぎとなるのだ。
もっとも、それをドリヴァル王家や、他の高位貴族が認めるかどうかは未知数だが。
とりあえず、ロワール公爵家が貴族筆頭の家柄から没落するのは確実だろう。
老婆ダリアは、これからもジャックの成長を見守りつつ、怨みながら、生きていくしかない。
悲惨な人生といえるだろう。
その夜、私、フローラは、滞在先のドリヴァル王宮に戻って、エミール王子と食事を摂った。
乳母から息子のアースを受け取り、抱きかかえてあやした。
ほっぺを指で押すと、ぷにぷにして柔らかい。
小さな指が、私の銀色の髪に触れて、あーー、あーーと声を出し、笑っている。
夫譲りの赤い髪をしたアースは、まるで天使のようだ。
長旅だったけど、連れて来てよかった。
ガーネットお祖母様も、お父様も喜んでいた。
でもーー。
私、フローラは溜息をついた。
夫エミールが問いかける。
「やっぱり、ロワール公爵家を訪れるのは無理があったのかい?
嫌がらせされた、とかーー」
「いえ。そんなこと、なかったわ。
それよりも、あれほど綺麗だった庭もお屋敷も、すっかり荒れ果ててーー。
元夫の姿もなかったし、ほんとうに帰っていないみたい。
ほんと、子供が希望なのね。
ウチには、この子がいてくれて良かった。
乳母だけじゃなく、私にも貴方にも懐いてくれて。
でもーー。
やっぱり、女は子供を産んでこそ、価値がある、と男性は考えるのかしら……」
再度、吐息を漏らす。
すると、エミール王子は、アースの頭をクシャクシャと撫でてから、私の手を取る。
「そりゃアースが生まれて来てくれて、僕は嬉しいよ。
可愛いし、何より、この子は二人の愛の結晶なんだから。
だけどこの子がどうだろうと、子供を理由に、僕たちが幸せを手放す必要はない。
僕ら二人で人生を歩んで行こうと思ったから、夫婦なんだ。
子供が得られたのは、それはそれでありがたい。
でも、忘れちゃいけないのは、その子はーーアースは僕らの付属物じゃない。
アースは、アースの人生を歩んでいくんだ。
だから、結局、僕たちの幸せは、僕たち二人で一緒に築いていくものなんだ。
もちろん、僕たちが人生航路を進んでいく船に、アースが成人するまで、もう一つ、アースのための席を空けておくけどね」
「ええ。ひょっとしたら、一つじゃないかもだけど」
私が恥じらいつつ笑うと、夫も照れたように赤髪を掻く。
「そうだね。
子供用の席は、幾つになっても構わない。
旅は大勢の方が楽しいもんさ」
近寄って来た夫は、私と子供のアースを一緒に丸ごと抱きかかえる。
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【文芸 ヒューマンドラマ 連載完結】
『私、エミル公爵令嬢は、〈ニセモノ令嬢〉!?母が亡くなった途端、父の愛人と娘が家に乗り込み、「本当の父親」を名乗る男まで出現!王太子からも婚約破棄!でも、そんなことしたら王国ごと潰されちゃいますよ!?』
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【文芸 ホラー 短編】
『元伯爵夫人タリアの激烈なる復讐ーー優しい領主様に請われて結婚したのに、義母の陰謀によって暴漢に襲われ、娼館にまで売られてしまうだなんて、あんまりです! お義母様もろとも、伯爵家など滅び去るが良いわ!』
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【文芸 ホラー 連載完結】
『滅国の悪役令嬢チチェローネーー突然、王太子から婚約破棄を宣言され、断罪イベントを喰らいましたけど、納得できません。こうなったら大悪魔を召喚して、すべてをひっくり返し、国ごと滅ぼしてやります!』
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【文芸 ヒューマンドラマ 短編】
『私の婚約者フレッド伯爵子息は、明るくて仲間思いなんですけど、私にセクハラする騎士団長に文句の一つも言えません。だったら、ダサいですけど、私を守ってくれる男性に乗り換えます!私にとっての王子様に!』
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【文芸 ヒューマンドラマ 短編】
『リンゴ売りのお婆さん(たぶん絶対に義母)が、私に真っ赤なリンゴを売りつけに来たんですけど、これ、絶対に毒入ってますよね!?』
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【文芸 ヒューマンドラマ 短編】
『生まれつき口が利けず、下女にされたお姫様、じつは世界を浄化するために龍神様が遣わしたハープの名手でした!ーーなのに、演奏の成果を妹に横取りされ、実母の女王に指を切断されました。許せない!天罰を!』
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【文芸 ホラー 短編】
『伯爵令嬢シルビアは、英雄の兄と毒親に復讐します!ーー戦傷者の兄の介護要員とされた私は、若い騎士から求婚されると、家族によって奴隷にまで堕されました! 許せません。名誉も財産もすべて奪ってやる!』
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【文芸 ヒューマンドラマ 連載完結】
『芸術発表会に選ばれた私、伯爵令嬢パトリシアと、才気溢れる令嬢たちは、王子様の婚約者候補と告げられました。ところが、王妃の弟のクズオヤジの生贄にされただけでした。許せません!企んだ王妃たちに復讐を!』
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【文芸 ヒューマンドラマ 短編】
『同じ境遇で育ったのに、あの女は貴族に引き取られ、私はまさかの下女堕ち!?しかも、老人介護を押し付けられた挙句、恋人まで奪われ、私を裸に剥いて乱交パーティーに放り込むなんて許せない!地獄に堕ちろ!』
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【文芸 ヒューマンドラマ 短編】
『泥沼に沈められた聖女の復讐ーー私、聖女エリアはゲテモノを食わされ、殺虫剤をぶっかけられた挙句、婚約破棄され、泥沼に沈められた!が、まさかの大逆転!沼は宝の山だった。今更復縁?「覆水盆に帰らず」です!』
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【文芸 ホラー 短編】
『美しい姉妹と〈三つ眼の聖女〉ーー妹に王子を取られ、私は簀巻きにされて穴に捨てられました。いくら、病気になったからって酷くありません? 聖なる力を思い知れ!』
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【文芸 ヒューマンドラマ 短編】
『愚かな伯爵クルト・デニムの懺悔録ーー私は、優しい妻アメリをないがしろにして家から追い出した結果、お家がお取り潰しとなって、平民にまで転落してしまいました。』
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【文芸 ホラー 短編】
『公爵令嬢フラワーは弟嫁を許さないーー弟嫁の陰謀によって、私は虐待を受け、濡れ衣を着せられて王子様との結婚を乗っ取られ、ついには弟嫁の実家の養女にまで身分堕ち! 酷すぎます。家族諸共、許せません!』
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【文芸 ホラー 短編】
『イケメン王子の許嫁(候補)が、ことごとく悪役令嬢と噂されるようになってしまう件』
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