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MONSTER HUNTER LON : モンスターハンター ロン  作者: 小悠
第一章:ロン・グレイディ 旅立ち編
5/14

飛行船が駐機する空の港

荷物を整理し、ロンは就寝の準備を始めた。

「荷物いいな、武器、防具の手入れいいな。よし、

準備完了!さて明日のために寝るか」

ロンはすぐにベッドへ飛び乗り仰向けになって、

毛布「身を包ませる。

(明日が出発の日!楽しみだぜ)

そしてドキドキと心臓を高鳴らせていると、次第に眠気が襲ってきてピクピクと瞼を微動させていた。遂には目を閉じ、ランプの僅かな残り火に照らされロンは眠りに落ちてしまった。




(あ、朝か?……あれ?)

ロンは目を覚まし、光らしきものが視界に映ったので薄目になりながら光に目線をやる。その光が目を直撃、したのだが、思いの外それは決して眩しくもなく、しげしげと見ても平気だった。気取ったのか真っ先に上体を起こして周辺を見渡す。視界全体、真っ白で見通しの立たない空間が辺り一面に広がっていた。上を見上げても白、下を見ても白、正に夢の中にいるようだった。ロンは立ち上がり、出口を探そうとすぐにあちこち奔走するが、どこを走ってもやはり先が見出せない。

「ここはどこなんだ?なぜ俺がこんな所になってるんだ。まずはいち早くこの空間から逃げないと…」


片っ端から走り続けても、依然変わらず出口が見当たらない。それでも走り回り続けていると、

『ロン………ロン……ロン』

どこからか耳当たりのいい声が聞こえてきて、すぐに足を止める。人がいるのか?、とロンは考え周りをくまなく見ても、やはり誰もいない。

驚きで少し戸惑っていると、次はかすかな声だったものが耳元で女性のような声で()()に語りかけるように小声でボソボソ何か喋っていた。今一度周辺に目線を散らしていると、

「ねえ………………」


「!?」

鮮明に女性のような声を聞き取った。その声は妙に心地よく、耳にこびりつく、どうも聞き馴染みのある声色だった。


『ロン…あなた…ハンターになるのね…』


「ハッ!」

ロンは背後に気配を感じて振り向きざま、小さく声を上げた。その瞬間、視界が急に暗転していく。



「う、うーん?…………」

(アレ?あ、朝なのか?てか、俺の見てたのって)

早朝六時。どうやらロンが見ていたのは単なる夢のようだった。

「ヌアッ!え今何時?なぁんだ六時か………」

ロンは枕元に置いた時計を確認する。思いの外時間には余裕が充分にあり落ち着いたのか不意にあくびをしてしまう。ロンは時間に遅れがち、だからこそ時間には常に敏感で、一秒足りとも注意を惜しまない気でいる。


「ふああぁ」

緊張が解けたのか二度もあくびをする。

「にしても、あの声って……」

ロンは女性の声を思い出す。だが夢の中の記憶を思い返そうにも、その女性の姿が頭から出てこない。

(うーん……時間も近いし、考えるのは後にしよう)

ロンは声の件を一旦後回しにし、家を出る準備、身支度を始めた。

インナーシャツ、インナーズボンを着込み、その上には身を守るために肝心な鉄製の防具を纏わせる。随分と時間が余ったので、ベッドに座り身を沈めて昨日買った剣術書を読み耽っていた。だが時というのは早いものである。10時30分、瞬く間に家を出発する時刻になった。壁に掛けた時計を一瞥し、玄関に置いておいたハンターバッグを肩にかける。


「この家とも今日でお別れか。少し寂しい気もするなぁ。ま、仕方ないけど」

ロンは玄関の前でブツブツと独り言を呟いた。

町を出るのでマイハウスに帰ることは、ほぼ無いに等しい。なぜならこの家は賃貸物件であるため、これからロンが出た瞬間借り物として扱われ、購入者が現れた場合今後ロンがこの家再度購入する可能性は無いだろう。家具などもほぼ売りに出される予定で、家の中身はほぼ空になる。


「ありがとうな、理想郷(マイハウス)、マイホーム!」

と、別れを惜しむように玄関で言葉を残し、思いっ切りありふれた黒色のハンターシューズの紐を血が止まるんじゃないかと思うぐらいキツく結び、ロンの愛用武器である大剣を背中に背負い上げ、正面玄関を抜けて自宅から別れを告げた。



町の入り組む急な石階段をせっせと登り、飛行船搭乗口、及び空港を目指した。空港は飛行船と呼ばれる船型の移動用の大型飛行機械、単純に言えば気球の進化版のようなもの、そんな乗り物に乗るためのいわゆる空の港である。

なんの捻りのない「空港」と命名されているだけ

あってここ、ウェントマ空港では約数十機もの数の飛行船が総納されている。

「ゼェ、ハァ、遠すぎるって……」


ロンは息を切らしながら石造りの階段を登っていた。

ウェントマ自体、町の面積が大きく、空港に行くのにも一番高い崖を目指なければならない。しかもその距離約2キロメートル、だから必然的に徒歩で向かうにしても行くのに数十分程の長い時間を費やすという事だ。町からもだいぶ距離が離れている空港なのに、なぜウェントマ空港と命名されたのか?なんとも不思議である。

(もうすぐだ…もうすぐで…ん?アレは!…)

そうこうしている間にロンは高い崖の頂上に到達寸前という所まで差し掛かっていた。階段を上がっていると空港が薄っすらだが確かに視認できた。


「や、やっと来れた……」

ロンは激しく息遣いをし、足を早くも筋肉痛に追い込んでしまったがなんとか空港まで辿り着き、跛行するようにエントランスらしき場所に通ずる正面ゲートのような入り口を足を踏み入れる。


(おお、こんなにもハンターが空港にいるのか!)


「お前最近どうよ?狩りの方は」


「まあぼちぼちかな」


中に入り込むと、多くのハンターたちがフライト時刻まで仲間同士で談笑している者やナイフを砥石で研いだりして手入れをする者など、何十人ものハンターたちが一同に待機していた。

彼らはきっと空港に訪れているのはクエストが所以であろう。クエストの内容によっては遠方に赴かねばならない場合もあるからだ。


ロンは設置されたベンチの間を通るように直進し、チェックインカウンターまで歩いていく。

「これ、飛行船の方まで運んでもらえないでしょうか?」


「ええ、勿論。その前に荷物検査をさせていただきますね」


ロンはチェックイン自体は出発日以前から既に予約している。持ち運びの足枷となる嵩張った荷物や武器を飛行船に直送してもらうため、カウンターに預けようとした矢先、


「ハンターの皆様、搭乗時間に達しましたので、搭乗口への通過を許可致します。加えて、くれぐれも搭乗口まで走らず、ゆっくりと通過してくださぁい」

ギルドスタッフと思われる若々しい1人の女性がハンターたちに向かって大慌てな様子でそう言っていた。

女性の声を聞くとハンターたちは一斉にベンチから立ち上がり、同時に搭乗口に向かっていく。


(もう搭乗時間が迫ってたのか)

「後はよろしくお願いします!」

ロンは仕方なしに荷物をカウンターに置いていき、急いで群集へと飛び込んでいく。

「うぐっ!ぐ!」(なんで、こんなに!多いんだ!)

それもそのはず、我先へとハンターたちは搭乗口に向かうもんだから、ギルド職員の助言があってしても相当な混み合いが生じてしまうのだ。



「ぐふ!」(に、にしても冒険科用の搭乗口はどこだ、あ!あの人に聞いてみよう!)

ロンは一瞬、ギルド職員らしき女性が視界に映り、その女性目掛けて急き立てながらごった返す人混みを泳ぐように掻き分ける。

 

「ハンターの皆様!落ち着いて搭乗口を通過してください!」


「す、ぐおっ、す、いません!?」


「は、はいっ?」

ロンは人と人の間から頭を飛び出して、揉まれながらもなんとか耐え、職員に喋るのもままならないような状況の中辛うじて声を掛ける事ができた。



「あの!こ、ここってぇ!、ぐあっ!一般ハンターの搭乗口ですよね?冒険課専用の搭乗口ってどこありますかぁ!?」


実は冒険課と一般では通過するための搭乗口も異なっていて、ロンは冒険者が通る搭乗口がどこか知らなかったのである。


「ぼ、冒険課の方の搭乗口は左奥にございます、そちらの搭乗口までお越しください…」


女性スタッフは目の前の事象に戸惑ってるのにも関わらず至って冷静に、それでも息が混じったような口調で説明し、手をグイッと奥の方へと指し示す。 

「ありがとうございます!」


ロンは女性スタッフの都合を考え早めにお礼をし、案内された搭乗口へ向かう。もう一度搭乗口に向かって人混みの波を押し分けてから搭乗口の近くで荒れる人波を凌ぎようやく搭乗口付近まで歩いて行った。搭乗口の側では警備員らしき男が仁王立ちで待ち構えていた。その男を見るに、平静を装っているようだ。顔からは多大なる疲労が明らかに滲み出ているようで、眼窩の周りが黒ずんでいるから一目で疲れているのが分かる。


「あのう、ここの搭乗口を通りたいんですけど」


「ああ、冒険課のハンターさんですね?チケットの番号を今一度確認致しますので、恐れ入りますがチケットを拝借させていただきます」

警備員はおじぎをすると、チケットを差し出すようロンに恭しい態度で要求する。

「はい」

チケットを取り出しすぐさま警備員手元に渡すとチケットを見るやいなや訝しそうな表情で見つめる。

「うーん……………」


(もしかして、番号間違ってるとかないよな?まあある訳ないとは思うけど……)

もしかして番号が誤ってないかと不安を抱いたが、確認が終わったのか顔をこちらに向けてこう言った。


「チケットの最終確認は完了致しましたので、このまま搭乗口を通過してから飛行船駐機場まで向かってください。それでは、よりフライトを」


「あっ、ありがとうございます。それじゃあ」


さすがは空港職員といった所か、いくら疲弊しても客にはそれを気取らせたくないそういった強い心構えを持ち合わせているのだろうと、ロンは関心を憶えてから、搭乗口を大股で越え、飛行船駐機場のへと向かった。



「おおっ!スッゲェ!」


搭乗口を越えると真っ先に目を見張るような光景が広がっていた。それは何十台もの飛行船が面積五ヘクタールぐらいの広いアスファルトとコンクリートで舗装された敷地を覆い尽くす程、大小様々な飛行船が横十数メートル程度の等間隔で縦横に鎮座しており、誰もが震え上がって後退する程に圧倒的な存在感を解き放っている。初めて近くで見た飛行船にロンは周りの目も気にしない小さな子供のように興奮していた。



(俺が乗る飛行船はどれだろう?やっぱり冒険者が乗るような飛行船なら……)

ロンは脳内では様々な飛行船が飛び交っていた。針だらけの歪な形をした飛行船。とにかくデカい飛行船。とにかく色々な形状の飛行船を満遍なく思い浮かべていた。

(フフ、クフフ……ワクワクするゼェ!)

興奮と高揚で、なんとも見るに絶えない程にえらく鼻を伸ばしてしまった。その後息を静かに吐いて気分を一度落ち着かせ、思いを馳せながら自分の乗る飛行船を一機ずつ注視して探し歩く。けれどそれだと時間に間に合いそうにないので、

「このチケットによれば、俺の乗る飛行船の機体番号は0144、えっと……あれだな!」


手元にあるチケットで、飛行船一つ一つの機体番号を見比べていく。自分が乗る飛行船を早くも発見し、その機体向かって早急に駆け出していく。何機もの飛行船を横切り、ようやくその飛行船の真ん前まで着いた。


「コ、コレ…」


期待に満ち溢れた顔でロンは自分の搭乗する飛行船に

目を引く。この飛行船、どの機体よりも…………………




「小さくね?……」

(こんな小さい飛行船なんて町の中でも見た事ないぞ)

特別小さかったのだ!全長は12メートルといった所だろう。ロンは落胆した表情で立ち尽くしながら見つめ続ける。ちなみに小さいと言っても飛行船

の"なか"でなので、人が数人乗れる程の大きさ

ではある。だがしかし、

(あの飛行船見た後だとなぁ………)

ロンは既に全体で60メートルはあるであろう豪華客船の如く巨大な飛行船を目にしていたので、今日初めて近距離で飛行船を見た癖に並の小型船舶程度の大きさでは驚かない体質になってしまったのである。

ロンは隣の背格好が合致しない、巨躯を持つ飛行船と

それと対照的である自分の乗機する飛行船を知らぬ間に見比べていた。









モンハン世界の飛行船は気球に似ていますが、球皮が

膨らんでいるだけでの小回りの利く、長時間かつスピーディーな操縦は不可能です。それではどうやってうまく操縦を?その答えはプロペラやモーターなど使っているから!これらのおかげで方向転換など、小難しい操縦なども可能なのです。

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