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MONSTER HUNTER LON : モンスターハンター ロン  作者: 小悠
第一章:ロン・グレイディ 旅立ち編
3/14

本屋と謎の剣導書

ロンは修練場を後にし自宅に向かおうとしていた。

「明日の為にも急がなきゃなあ!」

ロンは荷物を背負いながらも鍛えあげた脚力で

町の階段を駆け上がろうと、一段一段踏み入れていく。ロンはなぜか機嫌が良いのか、かすかに笑みを浮かべていた。

不思議と人が誰一人として見当たらず、ロンは走りながら首を少し傾ける。まあこんな事もたまにあるだろうと、自分に言い聞かせ先に進もうと家路を急いだ途中、

(あっそうだ!あれ買っておかないとな!)

ロンはふと"ある物"を思い出し、階段を登り切ってから、自分の家とは逆の左方向の通路に曲がり逸れて、そのまま直進していく。



(あの商店街も明日からしばらく見れないんだなぁ。

今のうちに恋しくならないようじっくり景観を見ながら買おっと…)


ロンは行き先である一番活況に満ち足りた人通りの多い中央商店街にたどり着き、ランプの光に照らされた街の景観を目に焼き付け、目的の品を販売している店まで街を巡回する。

(確かここを通れば...おお3ヶ月だなここ通るの)

商店街は右側にも軒並み広がっており、こちらの方は食材、食品が販売主体の中央の街並みとは様相が一変して、雑貨主体の店舗が展開されている。

「シキ国から取り寄せた陶磁器だよぉ!壺に皿に花瓶!どれも希少な品だよぉ〜!」


「現在ナイトセール中でェす!今ならお買い得ですよぉ!」

日用品を売る店、玩具(おもちゃ)屋、骨董品屋、

質屋、服屋、更には他の店では一癖、二癖も異彩を放つ、いかがわしい"ブツ"を売っている珍妙な店すらも佇むという客の目を色んな意味で飽きさせないバリエーション豊かな並びの商店街だ。

このようにウェントマの商店街は本当に多種多様な

店が一堂に会していて、この街には才色兼備という言葉がよく似合う。


(この商店街は久しぶりに来たけど、独特の雰囲気がいつになっても堪らないなぁ)

「おっ!ロン君じゃない!」


聞き覚えのある女性の声がロンの耳元に届いた。


「んっ?あっ!ネイナさん!」


ネイナ。彼女は右側商店街で本屋「フウリン書店」を経営する生粋の本愛好家で、偶然なことに彼女の苗字にもネイナ・"ブック"ルと本を意味するブックの言葉が付けられている。

「久しぶりに見たけどあなた、見違えてるわぁ」

ロンもこの本屋に訪れるのは実は約3年ぶり。

ハンター試験対策をしていて、右側まで行く暇が

無く、それ故ネイナに行き合わせることもしばらく

ロンは無かった。


「そうですかね、ありがとうございます」


ロンは面映ゆい態度を取りながら自分では思ってもないのに"ありがとう"と癖なのか口から漏らしてしまった。


「ところでロン君、あなたハンターになったらしいじゃない。しかも冒険課に所属なんて」


「え、知ってるんですか?」


「ええ、この前ウェルズから聞いたわ。あの人めちゃくちゃロン君の事を力説してたわよ、ほんとあなた

勇気あるわね、私がハンターだとしても冒険課に

入ろうとは思わないわ」

彼女も掲示板で試験合格者表を見ており、ロンが

ハンターになった事はその表を見て気付いたらしく、

冒険科に所属した事はウェルズ本人に直接聞かされていてたらしい。


「勇気あるなんてそれほどでもないですよ」

ロンは顔を赤からめ快よい顔でほくそ笑んだ。

「冒険科なんてよく入ろうとしたものねぇ

商店街のみんなも言ってたわよ?よく冒険課にって、()()かもしれないのに」


「死ぬかもしれない?」


「あらごめんなさい、不謹慎な事言っちゃったわ」


「あ、いえいえなんでもないです」

(よく入ろうと思った?死ぬかもしれない?俺の所属する冒険課ってそこまで危険な役職なのか?いやそんなのはどうでもよくて………)

自分では気にする必要のない事だがどうしても引っ掛かるものがあった。されど疑問の種なるものが何一つ思いつかない。思い出したいのに、思い出せない。ロンの頭が段々とモヤモヤしてきて、深く考えすぎかとロンは再度ネイナとの会話を続けようとしたその刹那、"ある言葉"がロンの思考の中で浮き上がってきた。



「ロン逃げて!!!早く!早く、死なな………………」


(うっ)

とても考えたくもない、思い出したくもない言葉が脳から突然飛び出してくる。

ロンはどこか背中に鉄鉱が張り付いたような重圧を感じ、少し前のめりに倒れそうになって、これでもかと足に力を入れ、体を硬直させる。踏ん張りを効かせ、なんとか体勢を崩さずにいるが、全身を震えが止まらない。呼吸も荒くなってきた。もう倒れる………と思った時、



「大丈夫?足震えてるわよ?」

ネイナが声をかけてくれたおかげで、霞んで鮮明に見えなかった景色が瞬きするといきなり彩りを取り戻していた。そして体の重みが徐々に軽減していく。

完全に目を覚ましたロンはなんなんだあれは?と自分自身に強く訴えかけた。


「い、いえ大丈夫です」


「いやいや、全然大丈夫じゃないでしょ。顔中汗だくよ。マジで大丈夫?」


「いやだから大丈夫ですって、ほらこの通り」

ロンはすぐに平気そうな顔つきでネイナをニコニコとした笑みで誤魔化す。あまり他人に気を揉ませるのは忍びない、ロンは試験中緊張などで体や心が強張ってしまう時口角を限界まで上げて、精神を保ってきた。

その時に見に着いた能力がこの「作り笑顔」である。

なんとも単純、独創性の一つもないネーミングだろうか。


「ならいいけど……ところで書店(うち)に何買いに来たの?閉店時間も近くなってるから早く買う物決めてね?」


(お!よくぞ聞いてくれたよネイナさん)

気が利くことに彼女はロンが聞こうとした事を

興味津々に目をパチパチと瞬きして、訊いてくれた。


「あ、それですみません。買う物は………えっとこれなんですが…………」

ロンは注文の品を小さな白紙に予めメモしていた。

その紙をネイナに見せつける。


「うーん……これね…ちょっと待ってて」


彼女は唇を噛んでから少し考え込んだ後、注文の品と言うなの"本"を探しに店のスタッフルームらしき部屋のドアを老朽化しているせいか、耳に響く程の高い音を立てて何も言わずに入って行ってしまった。

ネイナスタッフルームに入ってから、ドアをバタンと

勢いよく閉める。そして部屋の右隅に寂しく配置された純黒の縦幅一メートル程度の埃を纏う金庫のダイヤルを触る。

「0…0…1…1…2…3……と…お、開いた」

ダイヤルを指で回して、目盛りをツラツラ合わせる。

六つも目盛りがあるとは、かなり厳重に保管されているのだろう。そして心地よい音と共に解錠され、埃塗れのハンドルを掴み、重量のある蝶番を力を入れ込み

開いた。

「これこれぇ」

その中には何か赤く見える金庫よりも埃だらけな本らしき物体を軍手を一応嵌めてから丁寧に取り出した。





「まだかなぁ」

ロンは数十分ほど、店の前で手を膝に付かせて、目線を上に向けて待ち倦ねていると、

「おーいロン君ぅん」

彼女の溌剌とした元気の良い声が耳に届き、ロンは顔を前に上げる。


「はいコレ」

赤い縦幅30センチほどのボロボロで表面の金色の文字で【大剣:剣術】とだけ書かれた本を埃塗れな顔で軽く微笑みながらドンとロンに突き出すかのように差し出してくれた。



著者不明。大剣の剣術が黒い墨で綴られており、後は絵だけで構成されている謎多き本らしく、何より見てくれが気味悪く誰も欲しがらないため金庫に1年間保管していたという。

ロンがなぜこんな本を知っているのかというと

ロンは偶然ハンターたちが修練場で

「あの剣術書誰が買うんだろうなぁ?」「あんな気味悪い絵が描かれてるような本、だれも買わないだろ」歓談しているところを小耳に挟んだ事がきっかけなようだ。この時はまだ剣術書が店の中販売していた頃である。なぜロンはこの本に特別目を付けたのかハッキリとは分からない。きっと、これも"直感的"に買おうとしたのだろう。


「ありがとうございます!えっと……50Zですね」


ロンはそういいだすと、インナーのズボンのポケットから50Z硬貨を取り出し、ネイナに差し出す。

「いいよそんな大金、明日から町からでるんでしょ?

 ロン君の金なら尚更いらないわよ」


「いえいえ!こんな手数がかかるような作業をしてもらったんですから」


だが彼女は遠慮し、お代を願い下げたが、構わずロンは硬貨を渡そうとした。本を1つ1つ灰色の埃を払って綿密に探して、この本を見つけたに違いない。と

ロンは考え、ただでもらう訳にはいかないとロンはZを持った指を彼女へ少々じれったくなりながら、グイグイ差し出す。


「いいから!あなたが持っときなさい!なーに

若い子に金をせびるほど私は腐ってないわよ?

まずあなたはこの世界を旅して、ハンター生活を謳歌しなさい!」


ネイナは得意げにロンの要求を勢いある口調で断り、その拍子に、勝気な姿勢でこれからの生活への励ましの言葉をザッと述べてくれた。


「いいんですか?……分かりました。必ず良い狩人になり、冒険者として今より遥かに成長して参ります!ありがとうございました。時間もないのでそれでは!」


「じゃあね!帰ってくる時は土産もね!」


「もちろん!」

ロンは頭をぺこりと下げて別れを告げて、手に入れた本を懐で抱えて商店街に来訪する前よりも素早く足を連動させ、準備せねばと自宅へ向かい走り去って行った。














ネイナは本屋を開業する前、店の名前を何にするか

悩んでいた。その時、ご機嫌ような、風鈴を持った子供が彼女の前を通過した。

「あ、これだ」彼女は子供の持っていた風鈴に着想を

得て、「フウリン書店」と店に命名したらしい

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