草むらの影に隠れていた犯人は.....
「腕肉もうまいなぁ!あっそうだ」
骨付き肉を一旦、先程草むらで採った皿のように大きな葉っぱに乗せてから、ロンは「ハンターノートナンバー14」を真横に置いておいたハンターバッグの中から、筆箱と一緒に抜き取る。このノートは
ロンが"最高のハンター"になるために武器の使用方法や戦術、ハンターとしてある程度の知識を記録していたノートであり、これは14冊目にあたるノートである。
ロンはノートをペラペラとめくっていて一瞬しか見えないが、おおよそ知り初める事がある。
それはびっしりと黒字の文や何かしらの図がほぼ全てのページを覆い尽くすほど、綴られているという事。
これだけ見れば、ハンターになる事をひたすら夢見て頑張ってきたんだろう、普通の人ならそう思うだろうが、実際この少年が実技試験以外全て赤点というような事を知ってしまったら途端に驚く事だろう。
ページを親指で弾いていくと、何も記入されていない白紙よページが現れる。ロンは筆箱をガサゴソと探り、万年筆を手に取る。
「えっとこの部位はここだよな。そしてこの部位は
ここだっけな。確かえっと………」
ロンはその白紙に、いわゆる"部位図"と呼ばれる
動物の肉の部位を示すような図を書いていて、
ネックやバラ、モモ、カルビにテールなどなどの部位を独断と"妄想"で類分けして、我ながら丁寧に描いている気分でいる。
ガサッ.....
(あ?何か茂みから音がしたぞ?)
ロンは森の茂みから草木同士が摩り合う物音がする事に気づき、茂みの方に体ごと振り向く。そこには……
(何も…ないか)
なんにもいなかった。怪訝な顔で焚き火の方に振り向き直し、葉に乗せた骨付き肉を食べようと手を伸ばす。
「あれ、無い?それにあの本もない!」
なんと手を伸ばした先には、皿代わりの葉だけ
据えられていた。それだけじゃない。解体した肉の大半と岩の隣に置いた剣術書が忽然と消えてしまっていた。
「さては、誰か取りやがったなぁ?おい!
俺の肉と本盗った奴どこにいる!?」
気を立たせながら急に立ち上がって森全体に怒鳴りつけた。だが森からは何も音沙汰無し。なんだ気のせいか?と思いつつ、いかにもなにか潜んでそうな草の茂みをグッと見続けるが、
「やっぱ気のせいか?」
やはり何もいない。やっぱり気のせいかとハンターバッグにやっきになってノートをしまい、不満と疑問が詰まった顔付きで、予め採取し積んでおいた薪を焚き火に投げ入れる。その時
ガサガサッ
背後から草を掻き分けるような音が聞こえて、反射で、即座に首を後ろに振ると何かが見え隠れしてザワザワ、うごめきあっている。
「おい!もうバレてるぞ!それでもでてこないんなら………」
ロンは相手の動きを冷静に見極め、手元の薪をいつでも投げれるように、握り締め、投擲の構えを取る。
ゴゾッ
「そこだッ!」
ロンは狙うモノの身体がはみ出した時、反応良く薪を相手に向かって躊躇なく、だいぶ遠いというのに薪は
狙い定めた方向真っ直ぐにスクリューのように回転
して、茂みの方へと突っ込んでいく。
ドォゥンッ!!!
「ニャアアッ!」
「よしっ!」
ナイスヒット!何かが甲高い声を発しながら高く飛び上がり、それはよろめきながら茂みからグラグラ倒れ込む。
「ニャア、アァア……」
「ん?あっ!コイツは確か、ええっと…
あ、あれだ!お前はメラルーだな!って、え!?」
大量の肉を盗んだ犯人はメラルーであった。
食雑目、アイルー科に分類される。全長39メートルトル全高116メートル、頭脳も人並みに高く、人間社会でも人と遜色ない生活をする、獣人族と呼ばれる種族の代表とも言える種である。そんなメラルーが一匹、茂みから出てきたかと思ったらゾロゾロと2匹目、3匹目とドミノ倒しのように立ち続けにグダっと立ち絡んで、ぶっ倒れる。
「なんでこんないるんだぁ?」
ロンも感情が驚きで少し揺らぎながらも、すぐにこの
メラルー達が自分が焼いたケルビ肉を盗んだ犯人だと理解した。
「まぁ、起きたらしばらく事情聴取だな。フフッ、どんな目に遭うか覚えておけよ?」
気絶するメラルー達に対してニヤりとほくそ笑み、メラルー達には到底聞こえないであろう忠告をロンは告げるのだった。
アイルーめ