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第87話 出発準備

 前回の旅行の妖精の森のあった島国ティルナーグと違って、ノマ連邦は陸続きなので、馬車での移動になる。


 そして、その前に冒険者ギルドに来た。

 別に今回は外国旅行の自慢に来た訳では無い。そんな事したらギルド長の長話聞かされそうだし。

 

 時夫達はギルド依頼の受理の手続きに来たのだ。


 今回の大迷宮攻略はルミィの謎のコネ経由で、ノマ連邦冒険者ギルド本部からの依頼として受理する事になった。

 というより、その依頼は、ノマ連邦冒険者ギルドが創立した頃から設定していたらしい。

 

 でも、立ち込める瘴気の為に神聖魔法持ち以外は実質受けられない。

 それに、大量の見たことも無い魔物が現れる事から対策も取り辛く、クラス1の最上位冒険者すら手を出す者はこれまでほぼ居なかったそうだ。


 そんな殆ど手付かずの迷宮の攻略だ。

 せっかくなので成功した場合の報酬を頂こうという魂胆だ。


「では皆さんカードを出してくださいね」


 受付嬢の狐獣人コニーがにこやかに手早く登録してくれる。

 手続きを眺めながら、手持ち無沙汰の時夫は疑問を口にする。


「やっぱり何十年も放置されてるなんて、相当強いのか?」


 別に臆した訳では決して無いが、少し気を引き締めなくては。

 ルミィが答えてくれる。


「邪教徒の拠点を狙う場合の問題は、立ち込めてる瘴気にあります。

 そこに長く居付かれるとその分だけ瘴気は濃く、汚染範囲も広くなります。

 神聖魔法の適性が無い人は、瘴気の影響を低下させる薬などを利用する事もありますけど、大迷宮レベルの広大な拠点になりますと、いくら薬があっても足りませんよ」


「じゃあ、神聖魔法持ってる奴集めて行くとかは?」


 神聖魔法持ちが珍しくても、国をあげて集めればそれなりに居そうだが。


「能力の高い人は神官や民間医になって基本的に戦闘職には付きません。

 少しだけ回復を使えて戦える人は国が抱え込んで、軍属にして大事にしてますよ。

 軍事能力の要でもありますし。

 でも……多分なんですけど、ノマ連邦は我々が知らないだけで、それなりに国にいる神聖魔法持ちを迷宮に送り込んで失ってるんだと思います。

 失敗を積み重ねた上で共存を選んでいるんでしょう」


「でも、ギルドに討伐は依頼してるんだな」


「倒せるものなら倒したいのでしょう。

 ギルドにいる人は国と直接関わりたがらない変わり者がや、国への所属意識の低い人も多いです。

 神聖魔法を持ちながらギルドに所属する変わり者……国からすれば使い辛い人材は死んでも惜しく無いから、念のため依頼を出してるんでしょうね。

 それに、こうして他国の神聖魔法持ちがノコノコやる気を出してるんですから、ノマ連邦の目論見は達成間近ですよ」


 ふむふむと時夫は頷きながら説明を聞く。

 神聖魔法持ちのエリートでしかも戦えるのに冒険者やってるのは変人なのか……。

 ルミィはめちゃくちゃ変人だということは時夫にも理解できた。


「イーナさんも連れて行くんですか?」


 コニーが心配そうに狐尻尾をソワソワ動かしながら聞いてくる。

 イーナも冒険者登録して、初心者のクラス5での初仕事だ。

 初仕事で他国の国からの依頼をこなすとか大物感出てイーナ良いなぁ……なんちて。


「大丈夫!強いから!」


 時夫は自信を持ってお答えする。何と言っても勇者だ。聖女よりは強そう。


「でも、それよりも俺達そんな凄い依頼受けられるのか?」


 依頼の難易度によってはそもそも受けられなかったりがある。

 うちのパーティはクラス2のルミィがいるが、今回は特別中の特別だ。クラス2で足りるのかな?


「大丈夫です!国の特殊指定依頼ですから、今回のは排除規定無しで誰でも良いんです!」


 コニーが赤みがかった狐耳をぴこぴこ動かしながらにこやかに答える。

 ……弱くて無謀な冒険者の安全に配慮無しってことかな?


「まあ良いや。頑張ってくるよ」


「はい!ご武運を!!」


 これで冒険者カードを見せる事で国境を越えることが出来るようになったらしい。

 陸路での国境越えはいつもコソコソ忍び込んでいたから新鮮な気持ちだ。


 馬車はこの間見た忍者軍団の一人が御者をやってくれるそうだ。


「お久しぶりです。ジェイクです。覚えてますか?」


 中肉中背の焦茶の髪と瞳の特に特徴のない男だ。


「お……おお!なんか見覚えある!世話になるよ!よろしくな!?」


 見覚えは無くはない感じがする気がする。

 とりあえず元気いっぱいに勢いよく挨拶して友好的な表情を作る。

 挨拶は大事。元気に挨拶しておけば知り合い感がだせる。


 さて、準備も整ったし出発だ。


 日本にいた頃は、海外旅行なんてただの一度もしなかったのにな。

 必要な物品や、ちょっと使い勝手を試したいモノも『空間収納』にめいいっぱい詰めた。


 さて、勝ちに行きますか。

 

 

 

 

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