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第53話 大盛況!からの

「あの……よろしくお願いします……」


 コニーの妹、北狐族の血の濃く出たフォクシーは恥ずかしがり屋な様だった。

 姉の斜め後ろでモジモジとしている。


 顔立ちは姉にそっくりだが、白雪の様な綺麗な真っ白の髪と空色の瞳と気弱げな表情で明るい姉とイメージはだいぶ異なる。


「じゃあこの水を凍らせてくれる?」


 さて、実力を拝見。


「はい……『フローズン』」


 パキ……パキパキパキ……


「……おお!!」


 コップの水がすぐに表面から凍り始めた。

 時夫がひたすら水撒きと乾燥を繰り返すのよりも、直接的で無駄がない。


「しかし制服が無いんだよな……少しの間は普通のエプロン付けてて貰うか。

 接客よりも作る方と冷蔵庫の管理頼むぞ」


「はい。頑張ります」


 両手を顔の近くでギュッと握って頑張る気持ちを表現してる。

 可愛いな。コニーが可愛がってるのもわかる。


「でも、どうしてこっちに来ようと思ったんだ?

 こっちは結構……まだまだ差別あるのに」


 フォクシーは、なんて言おうかなと、迷う素振りをしたが、なんとか言葉を紡ぐ。


「家にいると早く結婚しろとか言われるので……」


「そっか……」


 時夫はそういうのは親から何も言われなかったな。

 マイペースな親だったから。

 ……それとも早い段階で諦められていたのか?


「まあ良いや。さらに忙しくなると思うから頑張るぞ」


「ふふん。まあお任せくださいよ」


 ルミィが謎にやる気を見せている。


「今日は午後から用事あるので申し訳ないです」


 伊織には聖女の仕事を押し付けてすまないと思っている。


「優しい言葉を掛けてくれるお客さんも沢山いて、家の外に出るのが怖く無くなってきました。

 フォクシーと一緒に頑張りますね!」


 コニーも一段とやる気をみせる。


 体制が強化されて益々繁盛するアイスクリーム屋さん。

 因みに、フォクシー加入数日後に、また時夫の枕元に新しい制服が置かれていた。

 ルミィちゃんマジで妖精さんだな。こんな演出しなくても良いのに。

 意外と照れ屋なのか?それともそういう遊びか?

 まあ良い。今度何か良いもん買ってプレゼントでも枕元に置いといてやるか。


 美人が4人も揃っていると言うことで、

『トッキーのアイスクリームファクトリー』は連日大盛況だった。

 

 黙っていれば神秘的美人のルミィも、国民的アイドルの伊織も、仲良し狐獣人姉妹も、それぞれにファンが付いて引きも切らさぬ大盛況だった。


 季節はちょうど暑さを更に増していく頃だったので、アイスクリームは飛ぶ様に売れる。

 

 フォクシーの加入により生成能力が大幅にアップし、夜には冒険者ギルドの2階にアイスクリームを卸したり、個人だけではなく、喫茶店のような店舗にも売れる様になってきて、時夫の笑いは止まらなかった。


 ……のだが、ある時を境に少しずつ売り上げが下がってきてしまった。


「何故だ!なぜ売り上げがぁ!!」


 時夫は頭を抱えつつ仰け反り絶叫する。


「トキオ、落ち着いてください」


 ルミィがマルンの実フレーバーのアイスばっかり食いながら宥めてくる。

 アイスクリーム屋さんを始めてから、こいつは隙あらば食ってる。

 太らないのか?


 客は別にゼロになった訳でも無いが、外にまで列ができることは無くなってしまった。


「トッキーさん……私もっと頑張りますから!!」


 伊織ちゃんやさスィー。


「でも、正直これだけ急に客が来なくなるのはおかしい。

 うちの悪評をばら撒いているのがいるか、あるいは……」


 その時、外に買い出しに出ていたフォクシーが慌てた様子でバタバタと店に戻ってきた。


「た、たたた、たたたたたいへんです!」


「たたた?」

「たたた?」


 時夫とルミィが聞き返す。

 手をバタつかせつつ、フォクシーの頬が赤くなる。


「ちが、ちがうくて……」


「ちがちが?」

「ちがちが?」


 時夫とルミィが聞き返す。

 フォクシーは耳まで真っ赤だ。


「うー……違うぅ……」


「うー?」

「うー?」


 フォクシーはもう涙目だ。


「もう!二人とも妹を揶揄わないでください!」


 コニーに怒られた。


「悪い。なんか面白くて。で、何が大変なんだ?」


「あっちの通りにアイスクリーム屋さんが!

 ……ここの半額です!」


「な、なんだってー!」


 まさかのライバル出現である。

 

 

 

 

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