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第126話 行こう

「本当にこれで大丈夫なんでしょうか。

 心配なので前に買った自白剤の余りでも飲ませておきましょうか?」


「平気でございます!大丈夫にございます!エルミナ様万歳!エルミナ様万歳!」


 ルミィがイーサンに神聖魔法を掛けて、邪教徒の魔法の影響を取り除いてみた……が、本当にバカ王子の洗脳が解けているのかわからない。


 イーサンも母方が王族の出身だったらしく、国王や王子や王女程では無くとも結構強めな洗脳をされていた模様。


 イーサンは時夫が武士の情けで貸してやったマントをしっかり身に纏って、縛られて床に座り込んだまま懸命にルミィを讃えている。

 自白剤のヤバさを知っている者の必死さだ。

 ……やっぱり拷問探偵に人道なんて無かったんだ!


「でもなぁ……コイツは赤毛で俺と一時期キャラ被りしてたし、今は名前がイーナとちょっと被ってるから邪魔と言えば邪魔なんだよなぁ」


「キャラ被りですか?」


 救出された伊織がキョトンとした顔で首を傾げた。

 イーナが仕方のない子供を諭す様に時夫の腕をポンポンと軽く叩く。


「時夫くん、よくわからないけど、どうで良い事を言ってる事はわかるわ。

 私は構わないから名前とかは許してあげましょう」


「イーナがそう言うなら……」


 イーナの心は広いな!時夫も今の倍くらい生きたら同じ様に寛大な精神を持つことが出来るのだろうか……。

 …………想像もつかないな!


 リックが膝をついて座っている友人と目線を合わせた。


「イーサン……あなたはアレックスを止める為に、アレックスを殺したり、殺すのを手助けしたりは出来ませんよね?」


「すまん…………多分無理だ。

 騎士団長の息子なのに情けないよなぁ。でも、アレックスはずっと昔からの友達だったんだ。

 間違った事をしてるのは重々分かっちゃいるんだが……」


 イーサンは項垂れている。

 厳しい世界とは言え、まだ10代の若者が友人同士で殺し合いなんて普通は出来るわけが無いもんな。

 リックも内心は辛いに決まっている。


「ならばイーサンは、捕えられている獣人達や迫害されている人達を助けに行って下さい」


「…………エルミナ姫は獣人がお嫌いなのだと思ってました」


 イーサンはルミィを見上げながら、戸惑う様にポツリと言った。


「……軍属として必要だから、国の為に、仲間の為に戦っていただけですよ。

 相手が獣人だろうが、普通の人間だろうが……神だろうが私はそれが自分に必要な事と判断したなら戦うだけです」


 ルミィは年嵩の行かぬ少年の無礼にも、凪いだ表情で優しさすら感じる声で答えた。 

 ルミィは優しい。

 ただ一人、何も分からない時夫に声を掛け、何も持たない時夫に手を差し伸べた人。

 そんなルミィが獣人から恐れられ、弟から嫉妬で恨まれるような……この世界は間違っている。


 こんな時なのに時夫は立ち止まりたくなる。

 ルミィは多分、本当はアレックスを殺したくなんか無い。

 時夫はルミィの弟を殺し、ルミィを残して元の世界に戻ろうとしている。

 何もかも投げ出して、ルミィと二人で生きていけるだけの力を時夫は得たはずなのに、何で進まないといけないのか。


「トキオ、行きましょう。

 私はバカな弟に引導を下さないといけません。

 私は……生まれた時から王族であった他の兄弟と違って、自ら進んで王族となった馬鹿な女です。

 自分で馬鹿な選択をした分だけ、一層のこと王族としての務めを果たさないと」


 ルミィは内心の葛藤など無いように綺麗に笑う。

 年下の女の子が笑ってるのにメソメソする程には時夫は若造では無い。

 だから時夫も笑う。


「王族も大変だなぁ。

 でもどうしても嫌になったら一緒に逃げようぜ」


「………………今や私達の逃げ足は世界最速ですから、誰にも捕まえられないですね。

 …………ありがとう、トキオ」


「………………お熱いですね」

「そうなのよ。お婆ちゃんには毒だわ」


 時夫とルミィのやり取りを聞きながら、伊織とイーナがヒソヒソとやり取りする。

 聞こえてるぞ。


 時夫は顔も耳元で熱いのを自覚して余計に恥ずかしくなる。

 全くもう!


「伊織ちゃんは……イーサンとリックと一緒に街の方で避難の救助をした方が良いんじゃ無いかな。

 戦うの難しいでしょ?」


 時夫は伊織をリック達に任せようとする。

 伊織は戦闘能力だけじゃ無く、王子とも一時期親しかったし、王子が死ぬ……殺される所を見るべきでは無い。

 伊織は日本に帰って、元の普通の女子高生に戻るんだ。

 その日までなるべく平穏に過ごすべきだ。


「イオリ様はそうして下さい。でも、私は乳兄弟としての自分の責務を果たしたいです」


 リックは食い下がった。


「うーん……どうすっか」


「連れて行きましょう。何かの役に立つかも知れないし。邪魔になったら…………私が始末するわ」


 イーナが請け負ってくれた。


「はは……よろしくお願いします」


 リックが幼女の笑顔に気圧されている。

 王子の洗脳する魔法にさえ気を付けていれば大丈夫だろうな。


「行こう。馬鹿王子に引導を渡してやる」

 

 


 


 

 

長々とした話をいつも読んでいただきありがとうございます!


次回!馬鹿王子戦!の予定!

数話使って最終決戦まで行く予定!

予定だけどどうなるやら。まさか最終決戦のメンバーにリックが加わるとは!リックは適当に殺す予定のキャラだったのに!生きろリック!


あと、偶にいいねとか押してもらえると嬉しいです!

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