第124話 リックが仲間に加わった!
「あー……そやつは大丈夫。
ハーシュレイの胸糞の悪くなる気配を感じないから」
呼び出したアルマは大層面倒臭そうに、リックがバカ王子の術に掛かっていないと太鼓判を押してくれた。
「伊織ちゃんが攫われてるのに嫌そうな顔をするな!シャキッとしろ!」
時夫は腕を組んで、勝手に座ってやる気の無さをアピールする女神を叱咤する。
「齋藤伊織のことは私には関係なかろう」
「お前が呼び出したんだから関係ある!」
「こ……これが女神アルマ様………………?」
リックが慄いている。
畏れ多くて……的なやつでは無く、思ってた感じと違って俗物感溢れる様子に戸惑っているようだ。
跪いたルミィが神々しく光り輝いた時は、思わずと言った風に歓声を漏らして、目を見張っていたと言うのに。可哀想に。
「これがお前達の世界を牛耳る神だ。諦めろ。因みにハーシュレイは多分もっとヤバい。
こっちは少しだけマシな方」
「そ……そうですかぁ…………」
時夫の言葉を聞いて、リックはガックリと項垂れた。
体を拘束されたままなので非常に哀れっぽい。
時夫は心から同情した。
強く……強く生きて欲しい。
「あ、でもこうして女神様がいらっしゃるなら、もうこの件は解決するのでは!?
アレックスが邪教徒でも、女神には敵わないでしょう!」
リックが再び目を輝かせる。
ふふ……甘いなぁ。そんなんで解決するならとっくに邪教徒は殲滅してる。
時夫はニヤニヤと口元を歪ませた。
時夫は理不尽な世界に揉まれて適応した結果、大分性格が悪くなっていた。
いつの間にかソファに横たわっていたアルマがよっこいせーと体を起こす。
ルミィの体は若いんだから、そんなに年寄り臭い動作をしないで欲しい。
「うーん……愚かで底意地の悪いハーシュレイが邪魔しているせいで私はこの世界を掌握し切れていないの。
ハーシュレイは本当にヒトの邪魔をするのが好きなのね。
なのに自己評価は高いのよ。
昔から自分自分ってそればっかりで……」
「おい、話が逸れてるぞ」
「あ、そうそう。
で、ハーシュレイのせいで色々大変なのだけれど……それで、この体に入っているとあんまり力を出せないの。
持ち主のエルミナの方が上手く使えるくらいにね。
それに、時夫は私を呼び出すのを簡単に考えているようだけれど、この状態って結構危険だからやめて欲しいのよね」
はぁ……と、アルマはこれみよがしにため息を吐いた。
ムカつくけど、それより聞いたことのない話が出てきた。
「危険なの?」
時夫が首を傾げると、アルマは足を組んで腕まで組んで偉っそうに語り出した。
「そうよ!そなたらは勝手な事をしてくれているけど、この状態でエルミナが死ぬ様な事になったら、この世界と私との繋がりも切断されるの!
また繋げる前にハーシュレイの女狐に世界を盗られてしまうわ!
だから早くデコピンしなさい!」
偉そうなまま前髪を上げてオデコを突き出してきた。
「ふーん……そら悪かったよ。
と言うか、そう言う大事なことは早よいってくれ。
今までも単にグータラで早く帰りたがるんだと思ってた」
ばちーん!
「いたた……どうでした?」
「リックは大丈夫だって」
時夫は手で丸を作ってリックの安全アピールした。
「他にも重要な事が聞けたわよ」
イーナがアルマのどうでも良い愚痴部分を除いて、簡潔にルミィに説明してくれた。
「なるほど…………」
ルミィは思案げな顔をする。
「アルマの事も……なんなら世界のこともどうでも良いけど、アルマが入っているせいでルミィの体が弱体化して敵に殺されるのは避けたい。
今後も安全そうな場所以外ではアルマの呼び出しは控えとこう」
時夫の言葉に、ルミィは直ぐには頷かなかった。
「まあ、適宜です」
ダメだこりゃ。
戦闘狂だから命の大切さとか分からないんだ。
せめて時夫が側にいられる間は守ってやらないとダメだ。
「そんでもって、伊織ちゃんはどこにいるんだ?
案内してもらうぞ」
時夫はリックの拘束を解いてやった。
「私も……出来るだけ力になります。
……アレックスの事は、命だけは助けるとかダメですよね?」
「ダメです。必ず殺します」
ルミィが断言した。
腹違いの弟を殺す事をハッキリと宣言したのだ。
「…………私がアレックスを止めるべきでした。
それをしなかったのだから、仕方がありません。
私も……アレックスを止めます。
これ以上の悪事を重ねさせない事だけが、乳兄弟として育った私の責務です」
やった!リックが仲間に加わった!
でも弱そうだね!




