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第118話 ラスティアの最期

 ラスティアの手足が飛び、そして地面に転がる。

 転がったところから腕からは黒ずんだ液体が溢れ始めた。


「な……ぜ?

 風の魔法……?ど……して攻撃魔法を使えるの?

 首輪……は?」


 地面に転がるラスティアの元へ、ラスティアの姿をしたルミィと少し遅れて時夫が側に向かった。


 イーナに牽制されている兵士たちがどよめいている。

 当たり前だ。

 同じ顔が三人並んでいる。

 しかも、そのうち一人は手足をもがれ、倒れて黒い液体を傷口から溢しているのだから。


 

 時夫とルミィが並べはその服の違いは分かりやすいが、ラスティアの着ていた白い法衣は、アーシュランの神官達の羽織っている服とデザインが割と似ている。

 色はどちらも白いし。

 だが、時夫の方には攻撃魔法を封じる首輪もあったり、杖もデザインが違うし細かいことを言えば結構な違いはあったのだ。

 しかし、そこまでの観察力を発揮する余裕がラスティアには無かったのだろう。


 ルミィはラスティアの姿が見なくなったタイミングで、ネックレスで変身し、三人目のラスティアの姿になっていた。


 ラスティアは変身する魔道具の存在は知っていただろうが、二つあるとは考えていなかったろうし、そもそも伊織を攫うタイミングで何故か中身がおっさんになっているというのは想定外だったに違いない。


「双子トリックで俺らを欺いて爺さんを殺したお前が、こうして似たような手口でやられるなんてな」


 時夫はニヤリとラスティアの顔のまま笑った。


「私のフリをするのをやめろ!」


 ラスティアは命乞いをするでも無く、憎悪の表情で時夫とルミィを睨みつける。


「皆さん!ご覧の通り聖女ユスティアは本当は邪教徒でした!

 黒い液体に変わってるのがその証拠です!」


「そんな!ユスティア様が!?」

「なんで三人いるんだ?」

「本物はどれなんだ?邪教徒というのは本当なのか!?」


 時夫とルミィは変身を解く。

 兵士たちは既に戦意を失っているようだ。


「ユスティア様!嘘だと言ってください!」


「ち……がう」


 ラスティアが口の端から黒いあぶくを溢しながら呟いた。


「ユスティア様!」


「違う!私……は!ユスティア……じゃ……無い、

 私は……ラ…………」


 ――――ゴホゴホ


 無理をして声を張り上げたせいか口から次々と黒い液体が溢れ出した。


「…………おい!ならば弱っている今のうちに殺した方が良いんじゃないか?」


 一人の兵士が言った。


「そ、そうか。そうだ!殺せ!」


 それに賛同するものが現れた。


「殺せ!邪教徒ユスティアを殺せ!!」


 急に夢から覚めたように、邪教徒に対する敵意を露わにする。


「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」


 あるいは場の興奮に包まれて熱狂するように。


「トキオ……行きますよ」


 ルミィが時夫の手を引く。

 イーナが駆け寄って来た。

 三人で杖に乗る。


「おい!アイツらもグルじゃないか?」

「逃すな!」


 杖に三人乗りではスピードは出ない。

 早く高度を上げないと下手をすれば攻撃が飛んでくる!


「任せて」


 イーナが人魚から貰った魔道具のペンと魔法陣が描かれた紙を取り出した。

 ペンを空中に閃かせる。


 すると、周囲に光で描かれた巨大な魔法陣が浮かび上がった。

 イーナが持っている紙に描かれたものと同じものだ。

 三人の魔力を魔法陣に注ぐ。


 緑色の光がルミィを包み込んだ。


「行けます!」


 杖は急激に速度と高度をを上げた。

 時夫は祖父の仇の最期を上空から見届ける。


 兵士たちが群がっている。

 瀕死の状態だったし、とても生きてはいないだろう。


「……意外と何の感慨も湧かないな」


「……カズオの亡くなったところに寄りますか?」


 ポツリと呟いた時夫にルミィが声を掛けてくれる。


「いや、それよりも温泉行かないか?」


 祖父との数少ない思い出の場所だ。

 それにゆっくり湯に浸かれる場所は意外と無い。

 普段は水や少量のお湯で体をキレイにしている。

『クリーンアップ』があるからそれで困らない。


「わかりました。速度上げるので、ちゃんと捕まっててくださいね」


 ルミィに掛かっている強化魔法陣の力のお陰か、いつもよりも快適な空の旅だ。

 ただし、かなり魔力量が多いはずなのにゴッソリ持って行かれた感じがする。

 効果の分はちゃんと支払わされている模様。


 今回は残念ながら他に客がいて貸切とは行かなかったが、夜遅くに他の人がいない事を確認して温泉に浸かった。


 ……邪教徒をまた討伐した。日本に帰る日が近づいてくる。


 あとどれくらいこの世界に居られるのだろう。

 今は仇を討ったことを喜ばないといけないのに。


「やっぱり帰らないとダメだよなぁ……」


 バシャバシャとお湯で顔を洗う。

 何度も洗ったけど、気分はイマイチ晴れなかった。

 

 

 

 


 

あっさりめに今回の章はおしまいです。

次を最終章に考えているのですが、よくよく考えて話を構築したいので、もしかすると更新がたまにおやすみが入るかも知れません。

何日も空けることはしないように頑張ります。

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