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第115話 ラスティアの気持ち

「トキオさんの件……と言うか、偽イオリ様が囚われ身で、隣国で罪人となっていると言うことは、一応全力で情報規制を敷いていますが、マルズ国が宣伝している為に一般市民にも広がっています」


 リックの報告にルミィは頷く。


「イオリは隠れていた方が良いでしょう。

 本物のイオリがこちらにいる事がバレたら大変ですから。

 ……ネックレスやっぱり貸しましょうか?」


 ルミィがネックレスを差し出したが、伊織は首を振った。


「ルミィさんが持っていてください。

 いざという時に……時夫さんを助けるときに役立つかも知れませんし、マルズ国では何があるか分かりませんから」


 伊織は現在髪を染めて眼鏡をかけている。

 髪も結い上げてお団子にしていて、雰囲気はだいぶ変わっている。

 話し合った結果、薬屋で匿ってもらう事になった。

 あそこは貴族はまず来ない所だ。

 それに平民の中でも出入りする人間は限られているし、時夫もルミィも懇意にしている。


「本当は私も時夫さんの救出に行ければ良かったんですけど……」


 伊織は魔力は多いが戦闘には向かない。

 無理をすれば、それこそ本当に人質にでもされたら面倒だ。


 ルミィがネックレスを付け直す。

 中の登録は変更したが、使うかどうかはわからない。

 多少の撹乱でも出来れば良いと思う。


「密入国になりますから、イーナと二人で空を飛んで行きます。

 トキオは必ず取り戻して、ついでに邪教徒も討伐してきます。

 国内はリック、貴方に任せましたよ」


「頑張ります……なんとか」


 リックは頷くしか無かった。



 ♢♢♢♢♢



 ラスティアは他の邪教徒達が減っていく状況には、不満は無かった。


 自分以外の神の僕はなるべく少ない方が良い。

 唯一神ハーシュレイの考えはラスティアにはわからない。


 数多くの天使を生み出すよりも、今いるラスティアにその権能をより多く分けてくれれば良いものを。


 ラスティアのメインの能力は洗脳だ。身体能力はついでに付与してもらったものでしか無い。

 強いものでは無い。

 それに神聖魔法使いには効かない。

 それでも、国の中枢に入り込むには十分なほどの便利な能力だ。

 周囲の人々は、ラスティアの言葉を疑う事が無くなる。

 あるいは多少疑っても、まあ良いかと軽く考える様になる。

 だから、能力自体は気に入っているのだが……。

 

 死んだ双子の姉、ユスティアと同じ能力。

 それがずっと不満だった。いや、その前から不満はあった。

 生まれたその日からいつもユスティアとセットの自分。

 その上で、ラスティアは今、姉の名前を名乗って暮らしている。

 ユスティアとセットの妹の方。

 もう一人の方。


「ふふ……」


 でも今はラスティア一人だけ。

 本当は天使も一人きりで良いんじゃ無いかと思っている。

 天使はだいぶ数を減らした。

 唯一神は力を失い、焦っている。

 焦って天使を増やそうとしているが、やめて欲しい。


 唯一神……唯一神ね。


 でも、この世界は二柱の姉妹神が争っている。

 ラスティアは女神ハーシュレイが自らを唯一神と名乗り続けるのが好きだ。


 ハーシュレイはトキタトキオを狙っている。

 聖女を強力な天使にしたいらしい。

 そして、それが出来ればアルマの力を大きく削ぐ事が出来るし、世界中を瘴気で満たす事も出来るだろう。


 瘴気病の人間の数が増えればハーシュレイの力は増す。


 今は女神ハーシュレイがだいぶ劣勢だ。

 神は負けても天上の世界に帰るだけなのに、随分とこの世界に執着している。

 どうやら魔法を持つ人間が存在しうる世界は珍しいらしく、女神ハーシュレイでは創り上げることができないと言う。


 それにしても……偽聖女の伊織はどうにも頭がおかしい女だった。

 若い女なのに妙に堂々……とは違う。

 余裕があってこちらを小馬鹿にしてるような気がする。


 アレ食べたいコレ食べたいと煩いし。


 攻撃系の魔法を封じる様にしてあるが、そんな事をしなくても脅威にはならないかも知れない。

 魔法は水を使うし、量を出せるが人を傷つけることは出来ないらしい。

 いや、可能なのだろうが、模擬戦等の授業では下から数えた方が早い程に戦いに消極的だと聞いている。


 それを教えてくれた協力者は従順だが、そのうち殺すつもりでいる。

 なぜなら、ラスティアは裏切り者を許さない存在だからだ。

 裏切り者を殺すことが存在理由。


 今は余裕のある伊織だが、何日か後には公開処刑にするつもりだ。

 首を斬り落としてやる。

 救援が間に合い、トキタトキオが来たなら用済みだ。

 戦えない女なら殺さずにいた方が足手纏いになって良いだろう。


 トキタトキオを殺したいな。

 でも、それは神の御心に反する。


 ラスティアは時間をかけてこの国の国民達を少しずつ洗脳している。

 そんなに強い洗脳では無いが、ラスティアが一言トキタトキオに敵意を示せば、民衆はある程度従い、石を投げつけるだろう。


 それだけで良い。


 ニホンジンは民衆を殺すのを躊躇う。

 それは五十年近く昔に証明されている。


 魔法のない平和でつまらない世界に生まれた弊害だ。


 公開処刑にはきっと広場を埋め尽くす国民が集まるだろう。

 ラスティアの手勢だ。

 ……民衆の正義感を制御しきれずにトキタトキオは殺してしまうかも知れない。


 一応……殺さない様に言ってみるけどね。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 


 

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