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第114話 囚われの時夫

「トキオが攫われた!?

 どういう事ですか!?」


 ルミィがリックの首根っこを掴んでガクガク揺らした。

 眉根に皺を寄せて悪鬼の表情である。


「す……すみません。エルミナ様……。

 学校内部に侵入者が居たか、或いはマルズの偽聖女の内通者がいた様でして。

 イオリ様と間違われてしまった様で」


「…………救出を優先する」


 ルミィがリックを解放する。


「ゲホゲホ……はい。なんなりと。何でもいたします」


 マルズ国から通達が来ている。

 偽聖女サリトゥがマルズ国に不法入国し、真の聖女ユスティアを殺害せしめようとしたのだと。


「どうしよう……」


 伊織が不安そうに呟いた。そう、真の伊織はここに居たりする。

 自体はややこしい事になっていた。


 聖女ユスティアは聖女じゃ無いし、そもそもユスティアじゃなくて双子のラスティアだし。

 伊織は聖女じゃ無いけど、向こうで伊織扱いされてる時夫は本物の聖女だ。


 伊織という名の時夫は裁判にかけられて、邪教徒の疑惑で死刑となる事が確実らしい。

 そうなる前に何としても助けなくてはならない。


「これっておそらく罠よね」


 イーナが気持ちが急くルミィを落ち着かせる様に、静かに言った。


 そんなことはルミィも分かっている。

 殺すつもりなら攫って隣国に連れていくよりも、その場で殺して逃げた方が早いし確実だ。


「おそらく狙いは本物の聖女である時夫くんなのよね……」


 全員が微妙な顔をする。

 その時夫が攫われていて、向こうは目標達成中だ。


「……時夫が攫われたのだということがバレない様にしなくてはいけませんね」


 ルミィも頭が冷えて来た。

 ……とも言えるし、状況が意味不明すぎて怒りの持って行き場を無くしたとも言える。

 

「仕方がありません。私がトキオになります」

 

 こうして状況の不可解さは更に悪化する。



 

 一方その頃の時夫。


「ねえねえ!このお茶美味しいねぇ。おかわりー!」


 時夫は楽しくやっていた。


 なかなか豪華な部屋が当てがわれていて、ベッドもいつも使ってるやつよりフカフカ。

 気分が良いのでいくらでも寝そべっていられる。

 

 見張られていて、攻撃魔法を使うとビリビリするらしい首輪を付けられたが、ネックレスは親の形見だって言ったり、体に触るのはセクハラだと主張したら取られずに済んだ。

 せーふ。

 花の女子高生じゃなくておじさんだってバレたら要らないから殺しとこうってなるかも知れないからな。

 この世界の奴らはすぐに殺そうとしてくるから良くない。

 おじさんにも人権があると教えてあげたいが、そもそも人権という概念が無さそうなのが、この異世界の特徴なので説明するだけ無駄な可能性が高い。


 今のところ無事なのは伊織に何かやって欲しい事があるからだな。

 そのうちルミィ達が助けに来てくれるだろうから、のんびり過ごそう。


 のんびり……か。

 今、働きもせずにこうしてお茶とお菓子を楽しんでいるのも、スローライフと言えたりするのかな。

 せっかくだからルミィ達も焦らずのんびりと来て欲しい。

 戦闘狂なところのあるウチの女子達はどうにも生き急いでいてダメだ。


 こういう時こそ落ち着いて行動すべきだ。

 そして、時夫はやる事が思い付かないから行動はしない。


「……はしたないぞ」


 おっと、足を広げてしまっていた。

 慎ましやかにお淑やかにしなくては。


 ――コンコン


 ノックの音だ。

 返答を待たずに女が部屋に入ってくる。

 見覚えしかない。

 ミルクティー色の髪に、金色の瞳。


「どうです?大人しくしていますか?」


 聖女ユスティアこと、邪教徒ラスティアが微笑んだ。


「うう……私をおうちに帰してくださーい。えーん」


 時夫の渾身の演技を喰らえ!


「泣き真似下手ですね……」


 ラスティアはちょっと困った顔をした。

 


 


 


 

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