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閑話6-2 人魚との出会い

「お、引いてる引いてる!よし……いけるぞ!!フィーッシュ!!……ねえトニー、これは食べれそう?」


 時夫は調理担当トニーに釣り上げた大きな魚を見せつける。


「トキオさん……その釣り上げる時の掛け声なんですか?異世界人は皆んなそう言うんですか?」


「うーん……たぶん?」


「ええ……異世界人って変わってますね。

 まあ、それは食べられますよ」


 やったぁ!また食べられる魚ゲットだ。

 やはり俺は釣りの才能があるかも知れない疑惑だ。


「お?また引いてる!!俺マジで才能あるんじゃ無いの!?うおーー!!!いっけー!!!」


「煩いですね……」


 アイドル……じゃなかったメイドのレティシャが耳を抑えてこれ見よがしにため息を吐いてくる。

 

「くそっ!逃した!……邪魔すんなよな。お前の大事なお嬢様に秘密をばらしてやっても良いんだぞ!」


「はぁ?殺してバラして魚の餌にしてやる!!」


 このメイドブチギレすぎる。

 何で短気な女ばっかり俺の周りに集まるんだ。


「レティシャ、そんなにすぐに怒っちゃダメですよ。楽しい旅の思い出が台無しになってしまいます」


 ルミィがレティシャを嗜める。

 どうやらルミィ的にはお宝が手に入らなくても良いと言ったのは本気で、旅を楽しむのがメインの様だ。


 ……俺もなるべく楽しまないと。

 この世界の思い出をできるだけ沢山日本に持って帰るんだ。


 実はたまに携帯で写真を撮影したりしている。

 ルミィの隠し撮りもある。……エッチなやつでは無い。

 でも、電池が切れたらおしまいなので、収納から取り出して写真を撮っては直ぐにしまっておくので、こちらの世界にいる間は見返すこともしない。


 時夫は向こうに帰っても、ルミィやイーナの顔は写真を見て思い出せる。

 ……こちらの世界にも写真はある訳だし、タークが持ってるから貸してもらって記念撮影くらい皆んなで今度撮ろうかな。

 

 などと思っている間にまた竿がしなる。


「おお!今度はすごいぞ!うおー!!!」


 ――ザバン!!


 船が大きく揺れる。


「きゃあ!」


 看板で編み物をしていたイーナが海水の飛沫を浴びて悲鳴を上げた。


 目の前海の中から釣り上げられたのは巨大な…………巨大なこれは何だ?


「ま、まさかこれは!!」


 ルミィが驚愕している。

 トニーが言葉を引き継ぐ。


「あれは南方手足もげもげタコネズミ!?」


「え!?こいつが!?」


 顔が確かにネズミに見ようと頑張れば見えない事はなくも無い感じのタコっぽいけど、どちらかと言えばイカじゃ無いのかな的な足が沢山生えた巨大な生き物がそこにはいた。


 そして、その足の一本が持っている棒の様なものを持った人影。

 女の人だ!


「誰か捕まってるぞ!」


 時夫の言葉が終わるか否か。

 その瞬間には光線は光の速度でその足を切り飛ばしていた。

 編み物を海水で濡らされた怒れる勇者イーナが剣をタコネズミに向けていた。


 ルミィの風の刃がタコネズミをズタズタに引き裂く。


 時夫は急いで投げ出された女の人を助けるために海に飛び込んだ。

 時夫は小学生の頃水泳を習ってたのだ。


 そして、水中でばっちりと目が合った。


 長い紅茶色の髪の毛が水流に漂う。

 胸元はビキニの様な鎧みたいなので隠している。

 三つに分かれた槍、三叉槍を手にしているが、何よりも特徴的なのは……。


 下半身が魚の様だった。

 キラキラと鱗が煌めく。


「……!?ガボガボ……!!」


 びっくりして空気を吐き出しちゃった。

 やばい!

 やばい!!

 苦しい……!!


 目の前が暗くなる………………。


「…………ゲホゲホ!」


 時夫は水を吐き出しながら体を起こした。


 ――ごつん!


「きゃあ!」


 おでこをぶつけた。


「いってぇ……」


 目を開けるとルミィが時夫と同じくおでこを手で押さえていた。

 どうやらルミィが介抱してくれていて、起き上がった時夫がぶつけてしまったようだ。


「ルミィ悪い。助かった」


「いえ……別に」


 ルミィが唇を手で押さえつつそっぽを向く。緑の魔石のぶら下がった耳が赤い。

 ……んん?介抱ってまさか?時夫もちょっと恥ずかしくなる。


――海から引き上げて助けたのは私よ


 目の前に光の文字が浮かび上がった。


 イーナの方を見るとブンブンと首を振って、指でピッと指し示す。

 その先には紅茶色の髪の人魚が居た。

 


 人魚は手に金色の羽ペンみたいなものを持っていた。

 光の魔法の魔石が埋め込まれた繊細で美しい装飾が施されている。


 そして、それを空中に閃かせると、それだけで時夫達の目の前に光の文字列が映し出される。


 それによると、

 南方手足もげもげタコネズミの軍団に人魚の住む国が襲われてしまったそうだ。

 人魚達は人間の住む島と貿易をしながら暮らしていたそうだ。

 その島が時夫達が目指していた場所で、人魚自体は海底に住んでいるそうだ。


 タコネズミ達は普段はそんなに数がいないから適度に襲ってきたら返り討ちにしていたが、タコネズミ達に特別に強力な個体である女王が生まれてしまい、一気に数を増して人魚の国に襲いかかってきたそうだ。


 この人魚、アリエナは何とか逃げ延びれたものの、家族を殺されたショックで声を失ってしまったらしい。

 そこで代々家に伝わる魔道具のペンでこうして意思疎通を図って、人間達に助けを求めようと船のそばに来たところを、先ほどのタコネズミに捕まってしまったそうだ。


「あ!これが探そうと思っていた光魔法の魔道具です!」


 ルミィが説明を聞きながら、金の羽ペンをマジマジと見てから、収納から取り出した本のページを捲る。

 そして、時夫に見せてくれた本の挿絵は確かに目の前にあるペンと同一のものの様だった。


 この光の文字のペンは高速で脳内に思い描いた言葉や絵を瞬時に書き出す事ができるらしい。

 多少は複雑な絵であっても目の前に見本があれば書き出せるのだとか。

 実際にそれなりに複雑な絵柄を空中に描いてみせてくれた。


「そっか……大事なものだろうし、物々交換とか無理だよな?」


 時夫はダメ元で聞いてみる。

 一応今回の旅の目的だ。


――南方手足もげもげタコネズミの女王を倒す約束をしてくれるならあげてもいいわ。


 アリエナはジッと時夫を見つめる。

 その目はどこか縋るような必死さがあった。


「うーん……じゃあ倒すかぁ。それで良いよな?」


 ルミィに確認する。


「ミナゴロシです!」


 戦闘狂は良い笑顔で良い返事をした。

 



 

短編集な章のはずが

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